Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

刑法Ⅱ(レポート課題)

2021-01-08 | 日記
 次の文章を読んで、Xの罪責を論じなさい。

(1)Xは、窃盗や詐欺を繰り返し行ったために裁判にかけられ実刑判決を受け、刑務所に収容され、ようやく先日出所してきたばかりであった。所持金も少なく、運転免許証も失効し、行くところもなかったため、公園で時間をつぶしていた。少し離れたベンチでAが小型のポシェットを脇においてBが会話を楽しんでいた。Xは、「Aが会話に夢中になり、ポシェットを置き忘れたら、取りに行こう」と考え、時機をうかがっていた。AはBと一緒に立ち上がってベンチから離れ、ポシェットを置いたまま、駅に向かうために南出口の方に歩き出した。Xは、AとBが公園の出口から道路に出て見えなくなった瞬間に、すぐさまベンチに駆け寄り、Aのポシェットを手に取り、公園の北出口に向かって走った。
 すると、公園の南出口から駅に向かって100メートルほど歩いた時点で、Aがポシェットをベンチに置いたままにしたことを思い出し、走って公園に戻ると、ポシェットがないことに気付き、さらに北出口から走っていく人の姿が見えたので、「ポシェットを盗んだに違いない」と疑い、全力で追いかけ、前方を歩いているCに対して、「そいつはオレのポシェットを盗んだドロボーだ、捕まえてくれ」と叫んだ。それを聞いたCは、Xがポシェットを持っているのを見て、Aの言うとおりだと確信し、Xを捕まえるために、その前に立ちはだかった。すると、XがCに跳び蹴りをしたため、Cはその場に仰向けに倒れ、後頭部を強打した。AがCに駆け寄り、「大丈夫ですか」と話しかけている間に、Xは走って逃げた。Cは、後頭部を強打したため、加療2週間の傷を負った。

(2)Xは、Aのポシェットを持ったまま移動し、百貨店のトイレに入り、ポシェットの中を見た。すると、現金2万円とAの運転免許証が入っていた。Xは、「この運転免許証に自分の顔写真を貼り付けてテープで固定すれば、有効な運転免許証として消費者金融の無人店舗で金を借りられるかもしれない」と考え、そのように運転免許証に細工した。そして、金融機関の無人店舗に入り、自動契約受付機のスキャナーにその運転免許証を読み取らせて、借入基本契約書を作成し、モニターを通じて金融機関の係員Dに書面を呈示した。係員Dは、モニターを通じて、Xの顔と運転免許証の顔写真の顔が同一であり、運転免許証も有効であることを確認し、Xに借入金申込カードを交付した。Xはそのカードを用いて、極度額の範囲内の30万円の借り入れを申込み、即座に30万円を受け取った。

(3)Xは、以前から保有していた銀行のクレジット機能付きのキャッシュカードがまだ使えるかどうかを確認するために銀行のATMに入り、カードを入れて暗証番号を押したところ、まだ利用できたので、口座に10万円を入金した。その足で不動産会社に向かい、応対した担当者Fに対して、「今日から入居できる部屋をお願いします」と、アパートの賃貸契約を申し出た。Fは、「こんなに慌てるところを見ると、何か訳がありそうだな」と思いつつ、部屋を紹介するために、Xと一緒にアパートに向かった。XはFから紹介された部屋を見て、「この部屋で十分です」と返事をし、不動産会社の事務所に戻って、契約書の氏名の欄にAの名前を記入して賃貸借契約書を作成し、家賃と敷金・礼金の合計15万円を支払った。Fは「部屋の鍵は、自分で取り付けて下さい。番号キーや錠前で十分です」と述べ、さらに「部屋の押入の下に小さな箱がありますが、中身を見ずにそのままにして保管してください」と言った。Xは、契約を断られるのを恐れて、言われた通りにした。

(4)Xは手元に5万円しかないので、このままでは生活できないと思い、アルバイトを探した。しかし、よいアルバイト先は見つからず、一日中、部屋にいる日が2。3日続いた。Xは、支払いができる自信がなかったが、クレジット機能付きのキャッシュカードを使って、加盟店で商品を購入して、それを転売することを考えた。Xは、JR京都駅の窓口に行き、クレジット会社に支払いできないだろうと思いながら、窓口の係員Gに対して、「京都・東京観の新幹線の回数券をお願いします。クレジットカードで払います」と購入を申し出て、その交付を受けた。その後、その回数券をチケットショップで換金した。それを数回繰り返し行い、合計で30万円の現金を手に入れた。

(5)Xは、多額の現金が手に入ったことから気分的に楽になり、缶ビールを買って部屋に帰った。そこでビールを飲みながら雑誌を読んでいると、Fが話した箱のことを思い出した。中を見てはいけないと言われたが、「ちょっとだけならいいだろう」と、箱のふたを開けた。すると、ロレックスの腕時計などニセのブランド品のような物が入っていた。Xは怖くなって、ふたを閉めて、そのままにした。1週間後、Xは不動産会社の事務所に行き、Fに「あの箱の中身は何ですか。密輸品ですか。それとも盗難品ですか」とたずねると、Fは「前の住人が置き忘れたもので、連絡しても返事をよこさないので、私が管理しています。今では私のものといってもよいでしょう。あれを売ってくれたら、謝礼をお支払いしますよ」と答えた。Xは、生活の見通しが立っていなかったので、それを引き受けた。
 Xは、窃盗や詐欺を繰り返していた時の相棒のYに電話して、「ニセブランド品だけど買わないか」と申し出たところ、「お前も懲りない男だな。オレはもう足を洗ったんだ。かまわないでくれ」とXの申し出を拒否した。Xは、売れそうになかったので、ニセブランド品が入った箱を部屋に置いたままにした。