Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

2016年度刑法Ⅰ(第13週)共犯の諸問題(2)(練習問題)

2016-07-02 | 日記
 第13週 共犯の諸問題(2)(練習問題)

(1)基本問題
1 公務員の夫Xと非公務員の妻Yは、入札予定前に落札予定価格を業者Aに教えた見返りに、共同してワイロを受け取った。Xは公務員であるので、公務員のみを行為主体とする収賄罪が成立する。Yは公務員ではないので、収賄罪の行為主体にはなりえない。判例では、Yは収賄罪の幇助にしかならない。
( ○ か × )



2 身分者が行なった場合と、非身分者が行なった場合とで法定刑が加重・減軽される犯罪のことを「不真正身分犯」または「加減的身分犯」といい、例えば保護責任者遺棄罪や常習賭博罪がこれにあたる。(  )



3 賭博の非常習者Xが、常習者Yに対して賭博の資金を貸し与えて、賭博を幇助した場合、単純賭博罪の幇助犯が成立する。(     )



4 尊属殺人罪(旧200)によれば、子どもが親を殺害すれば、通常の殺人罪よりも刑が加重されました。それが設けられていた時代の判例によれば、加重的身分者である子どもXが、親Aを殺害するよう友人Yを教唆して実行させた場合、Yには通常の殺人罪が、Xには尊属殺人罪の教唆が成立する。(     )



5 7のような判例の考え方を一般化することができるならば、例えば賭博で大儲けをしたために、真面目に働いて金銭を得ることがバカらしくなったXが、賭博の経験のない友人Yに賭博の仕方を教え、賭博させた場合は、Xには単純賭博罪の教唆が成立することになる。(     )



6 「不作為犯の共犯」の例としては、X・YがAの家に立ち入った後、Aから退去するよう求められたにもかかわらず、退去しない「       罪」の共同正犯がある。(   )



7 「不作為による共犯」の例としては、実子Aを虐待する内縁の夫Yを静止せずに、見て見ぬふりをした実母Xの事案では、Aが虐待死した場合、「         罪」の幇助の成立が認められている。




(2)練習問題
1共犯と身分
・構成的身分犯の意義を説明し、その例を挙げなさい。



 非公務員Xは、公務員Yの職務に関連して、企業Aからのワイロを共同して受け取った。
 A 贈賄罪の正犯

 X・Y 収賄罪の共同正犯正犯?
     刑法65条1項




 非公務員AX、公務員Yに働きかけ、その職務に関連する企業Aからワイロを受け取らせた。
 A 贈賄罪の正犯

 Y 収賄罪の正犯

 X 収賄罪の教唆犯
   刑法65条1項




・加減的身分犯の意義を説明し、その例を挙げなさい。


 賭博常習者Xは未経験者Yと一緒に賭博を行なった。
 X・Y 刑法65条2項 身分者Xには、常習賭博罪の正犯
             非身分者Yには、単純賭博罪の正犯




 賭博の常習癖のないYは、常習者Xに資金を提供して賭博をさせた。
 Y 常習賭博罪の正犯

 X 刑法65条2項 「身分のない者には通常の刑を科する」
           Xは常習癖のない者(身分のない者)
           →(通常の刑の罪である)単純賭博罪の教唆




 賭博の常習者Yは、常習癖のないXに資金を提供して賭博をさせた。
 X 単純賭博罪の正犯

 Y 刑法65条2項 「身分のない者には(加減的身分犯ではない)通常の刑を科す」
           常習者Yは「身分のある者」であって「身分のない者」ではない。 
           →身分のある者には加減的身分犯の刑を科す→Yには単純賭博罪の教唆?




2不作為と共犯
・不作為犯の共同正犯
 X・Yは、正当な理由により、A宅に立ち入った後、Aからの退去要請に反して退去しなかった。

 X・Y 退去すべき共同義務→共同義務の共同違反+その認識(故意)=不退去罪の共同正犯




・不作為犯に対する教唆
 非身分者Xは、保護責任者Yを教唆して、Yの実子Aを遺棄させた。
 Y 保護責任者遺棄罪の正犯(これは加減的身分犯)

 X 刑法65条2項 通常の刑にあたる単純遺棄罪の教唆




 非身分者Xは、保護責任者Yを教唆して、Yの実子Aを保護させなかった。
 Y 保護責任者不保護罪の正犯(これは構成的身分犯)

 X 刑法65条1項 保護責任者不保護罪の教唆?
   刑法218条の前段は「加減的身分犯」、後段は「構成的身分犯」
   同一の罰条にある2つの罪は、規定形式が異なるが、実質的には同じ
   →保護責任者不保護罪の教唆に対して、「通常の刑」である単純遺棄罪の教唆の刑を科す





・犯罪に対する不作為の幇助
 実母Xは、実子Aに対する内縁の夫Yの虐待を止めなかった。Aは虐待死した。

 Y 傷害致死罪の正犯

 X 幇助は作為形式
 不作為による幇助は、Xの生命・身体の安全を確保すべき作為義務に反した不作為


 では、Xに作為義務はあるか? Xの保障者的地位 + 作為の可能性 + 作為の容易性
 XはAの実母であり、Yの内縁の妻である。XはY・Aと日常生活の営んでいる。従って、XにはAの生命・身体の安全を確保すべき義務がある。また、またそれを害するYの暴行を阻止すべき義務がある。Xは警察や近隣住民の援助を求めることを行ないうる状況にあり、さらにそれは困難なことではなかった(札幌高裁の事案の場合)。→Xの不作為は幇助類型に該当


 幇助の因果性 作為義務を尽くせば、十中八九、Yの暴行に影響を与え、それを弱めることができ、またYの虐待の意思を弱めることができた。→幇助の正犯行為への因果性




(3)応用問題
1 賭博の常習者Yは、初心者Xに賭博の方法を教えた。Xは賭博をして、大儲けした。
・事実関係の整理と問題の所在
 X
 Y

・前提的議論
 単純賭博罪と常習賭博罪の関係
 刑法65条2項の適用方法

・展開
 65条2項 「身分のない者には通常の刑を科す」の意義

・結論




2 Xは離婚後、実子Aを育てていたところ、Yと内縁関係に入り生活していた。YのAに対する虐待が日常化し、それを止めようとすると、自分にも暴力が向けられた。ある日、いつものようにYがAを虐待していたが、Xは「止めても無駄だろう」と思い、止めなかった。すると、Yはいい気になって虐待をエスカレートし、Aを死亡させた。

・事実関係と問題の所在
 Y
 X Yの罪に対する幇助?

・前提的議論
 幇助の意義  「物理的援助」または「心理的援助による正犯故意の強化」による正犯の促進
 幇助の規定形式 作為形式。不作為の場合は「作為義務に反した不作為」であることを要する。
 作為義務論 保障者的地位 作為の可能性と容易性
       加重結果との因果関係 作為義務の履行と結果回避の十中八九の可能性


・展開
 X 保障者的地位
   作為可能性
   作為容易性
   結果回避可能性

・結論