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論文)概日時計による夜間の葉のデンプン分解制御

2010-05-25 06:18:17 | 読んだ論文備忘録

Circadian control of carbohydrate availability for growth in Arabidopsis plants at night
Graf et al.  PNAS (2010) 107:9458-9463.
doi:10.1073/pnas.0914299107

植物は日中に光合成によって炭酸固定を行ない、デンプンのかたちで葉に蓄える。そして、夜間に蓄えたデンプンを分解して代謝や成長に利用する。シロイヌナズナの葉は、夜間に一定の速度でデンプンを分解し、夜明けには殆どのデンプンが代謝される。この時、夜の長さを変えて植物体を育成すると、その長さに応じてデンプン分解速度が変化することが知られている。英国 ジョン・イネスセンターのSmith らは、葉のデンプン分解の調節機構を調査した。12-h昼/12-h夜で育成したシロイヌナズナを日没を4時間早めて8-h昼/16-h夜の環境に移行すると、夜間のデンプン分解速度が遅くなる。糖の減少によって発現が誘導される2つの遺伝子(At3g59940、At1g76410)を指標として、夜明け近くの葉におけるそれらの転写産物量を見たところ、夜の長さを長くしても夜明け頃の両遺伝子転写産物の増加のタイミングは対照とほぼ同じであった。よって、日没を早めたことによるデンプン分解速度の低下は、夜明けの葉の糖含量を一定に保つ作用がある。この作用は日没を4時間以上早めてしまうと失われた。デンプンの分解は概日時計によって制御されており、一日の周期を28時間(14-h昼/14-h夜)にすると夜明け前に葉のデンプンが枯渇し、17時間(8.5-h昼/8.5-h夜)にすると夜明けでも40%のデンプンが残った。また、概日時計の中心振動因子の変異体cca1 /lhy ではデンプンの分解速度が速くなった。28時間周期で育成した植物体はバイオマスが小さくなるが、これは夜明け前に葉のデンプンが枯渇してしまうためであり、ショ糖を添加することによって24時間周期で育成した植物体とのバイオマスの差は解消した。以上の結果から、夜間の葉でのデンプン分解は概日時計による制御を受けて夜明けまでにデンプンを消費するよう調節されており、これは植物の成長維持にとって重要であることが示唆される。

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1 コメント

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参考になりました (takabocchi)
2010-08-17 22:27:43
子の一研究につきあって光合成の研究をしています。
夜中に電球を当てて光合成をさせようとおもいましたが、前日の光合成でできたデンプンが夜のいつ頃消えるのか疑問に思い調べていました。
興味深い実験結果を分かりやすくまとめてくださりありがとうございました。
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