goo blog サービス終了のお知らせ 

Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)ブラシノステロイドによる花成阻害

2018-11-03 16:46:28 | 読んだ論文備忘録

Brassinosteroid Signaling Recruits Histone 3 Lysine-27 Demethylation Activity to FLOWERING LOCUS C Chromatin to Inhibit the Floral Transition in Arabidopsis
Li et al. Molecular Plant (2018) 11:1135-1146.

doi:10.1016/j.molp.2018.06.007

ブラシノステロイド(BR)の欠損変異体や非感受性変異体は、成長が遅れて花成遅延を起こす。しかしながら、BR受容体BRASSINAZOLE-RESISTANT1(BZR1)の機能獲得変異体bzr1-1D は花成の抑制に関与しているFLOWERING LOCUS CFLC )の発現量が高いことが報告されている。よって、BRの花成に対する効果は不明である。中国科学院 上海生命科学研究院 分子植物科学研究センターのHe らは、シロイヌナズナBR非感受性bri 変異体の花成時期を開花までに形成された葉数で評価し、長日条件下でbri 変異体は野生型よりも花成が早まることを見出した。また、BR生合成経路の酵素DE-ETIOLATED2(DET2)、CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC DWARF(CPD)、DWARF4(DWF4)が機能喪失したBR欠損変異体も花成が促進された。さらに、cpd 変異体やdet2 変異体にBRを添加することで花成促進が抑制された。花成のマーカー遺伝子であるAPETALA1AP1 )、LEAFYLFY )の発現を見ると、bri1cpddwf4 の各変異体では野生型よりも早い発達過程でこれらの遺伝子の発現が誘導されていた。これらの結果から、BRシグナルは花成に対して抑制的に作用すると考えられる。bri1cpddwf4det2 の各変異体の芽生えではFLC の発現が抑制されており、FLC ホモログのFLOWERING LOCUS MFLM )、MADS AFFECTING FLOWERING4MAF4 )、MAF5 の発現量も低下していた。また、野生型植物にBRを添加するとFLCFLMMAF4MAF5 の発現量が増加し、花成遅延した。FLC はFLOWERING LOCUS TFT )の発現を直接抑制して花成遅延を引き起こしているが、bri1cpddwf4det2 の各変異体ではFT の発現量が増加していた。これらの結果から、BRシグナルはFLC 、FLM 、MAF4 、MAF5 の発現を促進することで花成を阻害していると考えられる。BZR1のホモログであるBR-INSENSITIVE1-EMS-SUPPRESSOR 1(BES1)の機能獲得変異bes1-D の花成は、bri1-1D 変異体とは異なり、野生型と同等であった。よって、BRシグナルによる花成制御はBZR1によって制御されていることが示唆される。BZR1はbHLH型転写因子のBES1-INTERACTING MYC-LIKE PROTEIN 1(BIM1)と物理的に相互作用をすることが確認され、bim1 bim2 bim3 三重変異体は花成が促進された。よって、BZR1はBIM転写因子と相互作用をして花成を阻害していると考えられる。FLCFLMMAF4MAF5 の発現は、bim1 bim2 bim3 三重変異体で抑制され、bzr1-1D 変異体では増加していた。したがって、BZR1とBIMsはFLCFLMMAF4MAF5 の発現を促進することで花成を阻害していると考えられる。FLC の発現はFRIGIDA(FRI)によって活性化されるが、BRシグナルはこの活性化に関与していることがわかった。FLC の発現は自律促進経路(AP)遺伝子のFLOWERING LOCUS DFLD )やLUMINIDEPENDENSLD )によって抑制される。bzr1-1D 変異体でFLDLD が機能喪失してもFLC の発現量の増加は見られないことから、BRシグナルはAP遺伝子を介してFLC の発現を抑制していると考えられる。クロマチン免疫沈降試験から、BIM1はFLC 遺伝子の第1イントロンに結合してFLC の発現を制御していることがわかった。また、BZR1はFLC 遺伝子第1イントロンのBRREシスエレメントに結合して遺伝子発現を活性化することが確認された。BZR1はヒストン3リシン27(H3K27)デメチラーゼのEARLY FLOWERING6(ELF6)と相互作用をしてFLC 遺伝子第1イントロンのH3K27me3量を低下させていた。以上の結果から、ブラシノステロイドは花成抑制因子FLC の発現を活性化することで花成を阻害していると考えられる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 論文)MADS-boxタンパク質に... | トップ | 論文)ブラシノステロイドシ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

読んだ論文備忘録」カテゴリの最新記事