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論文)ブラシノステロイドシグナル伝達とジベレリン生合成を制御するMYB型転写因子

2018-11-10 07:44:46 | 読んだ論文備忘録

A brassinosteroid responsive miRNA-target module regulates gibberellin biosynthesis and plant development
Gao et al. New Phytologist (2018) 220:488-501.

doi:10.1111/nph.15331

miRNAのmiR159はジベレリン(GA)シグナルに関与するMYB型転写因子をターゲットにしている。イネでは、OsmiR159dはOsGAMYB-like2OsGAMYBL2 )をターゲットとしているが、OsGAMYBL2の機能は明らかとなっていない。中国科学院 華南植物園のLi らは、OsmiR159dとOsGAMYBL2 の機能を解析するために、short tandem target mimic(STTM)法によるOsmiR159dの機能抑制形質転換体(STTM159d)、OsGAMYBL2 の過剰発現形質転換体(OE-L2)およびRNAi発現抑制形質転換体(RNAi-L2)を作出して表現型を観察した。その結果、野生型(ZH11)と比較して、STTM159dとOE-L2は矮化して葉が直立し、ブラシノステロイド(BR)変異体に類似した表現型を示した。一方、RNAi-L2は草丈が高くなった。RNAi-L2は最上位とその下の節間が野生型よりも長く、このことがRNAi-L2の高い草丈をもたらしていた。そして、STTM159dとOE-L2ではこれらの節間が野生型よりも短くなっていた。STTM159dとOE-L2の穂は葉鞘から完全には突出せず、GA応答が欠失したような表現型を示したが、RNAi-L2の穂は高く突出してGA応答性が高い表現型に類似していた。また、STTM159dとOE-L2は葉身の屈曲角度が小さく葉が立っているが、RNAi-L2は野生型よりも葉身屈曲角度が大きくなっていた。RNAi-L2の葉の形態は正常だが、STTM159dとOE-L2の葉は縮れており、BR非感受性変異体に類似していた。さらに、STTM159dとOE-L2の最上位の節間は波打っており、このような表現型はシロイヌナズナのBR欠損変異体においても報告されている。STTM159dとOE-L2の籾は野生型よりも小さく、RNAi-L2の籾は大きい。これらの結果から、STTM159dとOE-L2の表現型は類似しており、RNAi-L2とは逆の表現型となり、BRとGAの両方の特徴が現れていると言える。ラミナジョイント屈曲試験の結果、RNAi-L2はBR感受性が野生型よりも高く、STTM159dとOE-L2は低いことがわかった。BR処理をすることでOsmiR159d量は減少し、OsGAMYBL2 転写産物量は増加した。GA処理によってOsGAMYB は発現誘導されるが、OsGAMYBL2 の発現は誘導されなかった。よって、OsmiR159d-OsGAMYBL2 はBRシグナルのモジュールとして機能し、GAシグナル伝達には関与していないと考えられる。STTM159dではBRシグナル伝達に関与しているBRI1-ASSOCIATED RECEPTOR KINASEBAK1 )やBR生合成酵素遺伝子の発現量が増加していた。また、CYP734A2CYP734A4CYP734A6 といったBRを不活性化する遺伝子の発現量がSTTM159dやOE-L2で増加していることが確認された。BRシグナル伝達に関与しているBR UPREGULATED1BU1 )の発現はSTTM159dとOE-L2で抑制され、RNAi-L2では増加しており、OsGAMYBL2はBU1 のプロモーター領域に結合してBU1 の発現を抑制することが確認された。BRシグナル伝達の負の制御因子であるOsGSK2は、OsGAMYBL2をリン酸化することでBR存在下でOsGABYML2を安定化し、BRシグナル伝達を抑制していることがわかった。STTM159dとOE-L2ではGA生合成に関与しているCPS1GA3ox2 の発現量が減少しており、RNAi-L2では増加していた。さらに解析を行なったところ、STTM159dではKAOGA20ox1 といったGA生合成遺伝子の発現量が減少し、GA不活性化遺伝子のGA2ox1 やDELLA分解に関与しているF-boxをコードしているGID2 の発現量は増加していた。OsGAMYBL2はGA3ox2 遺伝子、CPS1 遺伝子のプロモーター領域に結合することが確認された。また、OsGAMYBL2はGAシグナル伝達の負の制御因子であるSLENDER RICE1(SLR1)と相互作用をすることが確認された。OsGAMYBL2はGA3ox2CPS1 のプロモーター領域に結合することで遺伝子発現を抑制し、SLR1はOsGAMYBL2のターゲット遺伝子への結合に対して拮抗的作用していた。SLR1はGA処理によって速やかに分解されるが、OsGAMYBL2もGA処理によって分解された。以上の結果から、OsmiR159dとOsGAMYBL2 はブラシノステロイドシグナル伝達とジベレリン生合成を制御することでイネの成長を調節していると考えられる。

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