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論文)超長鎖脂肪酸による側根・カルス形成の制御

2019-08-17 15:37:35 | 読んだ論文備忘録

PUCHI regulates very long chain fatty acid biosynthesis during lateral root and callus formation
Trinh et al. PNAS (2019) 116:14325-14330.

doi:10.1073/pnas.1906300116

AP2ファミリー転写因子のPUCHIは、シロイヌナズナの側根原基形成における細胞分裂に関与しているが、その作用機作については明らかとなっていない。フランス モンペリエ大学のGuyomarc'h らは、側根原基形成過程のトランスクリプトームデータからPUCHI と発現プロファイルが類似している遺伝子の探索を行ない、超長鎖脂肪酸(VLCFA)生合成カテゴリーの遺伝子が多く含まれていることを見出した。そして、VLCFA生合成遺伝子の発現は側根形成過程の際にPUCHIにより活性化されること、これらの遺伝子はPUCHIの直接のターゲットではないことがわかった。VLCFA生合成遺伝子は側根原基が発達する過程で発現しており、PUCHIはこれらの遺伝子の発現パターンに影響していた。puchi-1 機能喪失変異体の根は、側根原基の形成密度が野生型よりも高く、側根原基の発達が野生型よりも遅くなっていた。したがって、PUCHIは側根原基の誘導を抑制して側根原基形成の主根上での間隔を制御しており、正常な側根原基の発達と側根形成に必要である考えられる。VLCFA生合成遺伝子の機能喪失変異体は、puchi-1 変異体と類似した側根発達の表現型を示した。また、PUCHI はシロイヌナズナの根をカルス誘導培地(CIM)に置床することで発現が誘導され、PUCHIとVLCFAは根の内鞘細胞からのカルス誘導に対して抑制的に作用した。puchi-1 変異体は、C22脂肪アルコール(22:0-OH)やC24スフィンゴ脂質(h24:0)が減少し、前駆体(C16やC18)が増加していた。以上の結果から、PUCHIよって制御される超長鎖脂肪酸の生合成は、側根形成やカルス形成の際の細胞分裂の制御に関与していると考えられる。

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