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論文)ヒストン脱アセチル化酵素による胚軸伸長制御

2019-08-21 22:01:13 | 読んだ論文備忘録

HY5 Interacts with the Histone Deacetylase HDA15 to Repress Hypocotyl Cell Elongation in Photomorphogenesis
Zhao et al. Plant Physiology (2019) 180:1450-1466.

doi:10.1104/pp.19.00055

ヒストンのアセチル化が光形態形成に関与する遺伝子の発現を制御していることが報告されている。中国科学院華南植物園Liu らは、シロイヌナズナのヒストン脱アセチル化酵素のうちHDA15に着目して光形態形成との関係を解析した。HDA15はbHLH型転写因子PHYTOCHROME INTERACTING FACTOR(PIF)のPIF3やPIF1と相互作用をすることが知られている。そこで、HDA15が光形態形成に関与する他の転写因子と相互作用をするかを探索した結果、ELONGATED HYPOCOTYL5(HY5)およびHY5 HOMOLOG(HYH)と相互作用をすることが確認された。hda15 変異体は、光条件に関係なく胚軸が野生型よりも長くなり、HDA15 を過剰発現させた形質転換体の胚軸は短くなった。よって、HDA15は光形態形成における胚軸伸長に対して負に作用することが示唆される。HDA15 をphyA 変異体やphyB 変異体で過剰発現させるとそれぞれの変異体よりも胚軸が短くなることから、HDA15は光形態形成においてPHYAおよびPHYBとは独立して作用するか下流で作用しているものと思われる。hda15 変異体の胚軸細胞は野生型よりも長いことから、HDA15は胚軸細胞の伸長を制御していることが示唆される。HDA15 過剰発現系統にhy5 変異を導入することで胚軸はhy5 変異体と同程度に伸長した。また、HY5 過剰発現系統は胚軸が短くなるが、hda15 変異を導入することで胚軸が伸長した。hda15 hy5 二重変異体は、それぞれの単独変異体よりもさらに胚軸が伸長した。これらの結果から、HDA15とHY5は光形態形成における胚軸伸長を相互依存しながら制御していると考えられる。赤色光下で育成したhda15 変異、hy5 変異体のRNA-seq解析から、HDA15とHY5は細胞壁形成やオーキシンシグナル伝達に関与する遺伝子の転写を抑制しており、胚軸伸長に負に作用することがわかった。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイの結果、HY5は光条件に依存して胚軸細胞の伸長に関与する遺伝子に直接結合すること、HDA15のターゲット遺伝子への結合にはHY5が必要であることがわかった。hda15 変異体、hy5 変異体ではターゲット遺伝子ヒストンH4のアセチル化量が増加していることから、HDA15とHY5はターゲット遺伝子のヒストンH4アセチル化量を減少させることで胚軸伸長に関与する遺伝子の発現を抑制しているものと思われる。

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