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論文)ジャスモン酸による花成制御

2015-12-13 16:32:08 | 読んだ論文備忘録

Transcriptional Mechanism of Jasmonate Receptor COI1-Mediated Delay of Flowering Time in Arabidopsis
Zhai et al.  Plant Cell (2015) 27:2814-2828.

doi:10.1105/tpc.15.00619

幾つかの植物種においてジャスモン酸が花成制御に関与していることが報告されているが、詳細な分子機構については明らかとなっていない。中国科学院 遺伝与発育生物学研究所Li らは、シロイヌナズナにおいてJA受容体として機能するF-boxタンパク質CORONATINE INSENSITIVE1(COI1)の変異体coi1-2 は、日長条件に関係なく花成が促進されることを見出した。したがって、COI1を介したJAシグナルは花成を遅延させていると考えられる。JA生合成遺伝子ALLENE OXIDASE SYNTHESISAOS )の発現が抑制されたaos 変異体の花成は野生型と同等であることから、AOSによるJA生合成は花成時期制御に関与していないことが示唆される。JA応答遺伝子の転写抑制因子の1つであるJAZ1のドミナントネガティブ型(JAZ1ΔJas)を過剰発現させた形質転換体は、coi1 変異体と同様に、花成が促進された。様々なJA応答を制御しているMYC2のT-DNA挿入変異体myc2-2 の花成時期は野生型と同等であり、MYC2はCOI1による花成時期制御には関与していないことが示唆される。coi1-2 変異体では長日条件の昼の時間のFLOWERING LOCUS TFT )の発現量が野生型よりも高くなっており、coi1-2 変異体の早期花成はFT の異所的な発現によるものと思われる。coi1-2 変異体にft-10 変異を導入すると早期花成の表現型が抑制さることから、COI1はFT の発現を抑制することで花成を遅延させていると考えられる。JAによる花成制御にMYC2が関与していないことから、JAZと相互作用をするMYC2以外の因子がCOI1による花成制御に関与していることが推測される。そこで、JAZ1タンパク質を相互作用をするタンパク質を酵母two-hybrid法で選抜し、選抜されたタンパク質のうち、花成制御に関与しているとされる2つのAP2ファミリータンパク質TARGET OF EAT1(TOE1)とTOE2に注目して解析を行なった。BiFCアッセイや共免疫沈降試験から、JAZ1、JAZ3、JAZ4、JAZ9がTOE1およびTOE2と相互作用をし、他のJAZタンパク質は相互作用を示さないことがわかった。toe1 変異体、toe2 変異体は早期花成の表現型を示し、toe1 toe2 二重変異体は単独変異体よりも花成が促進されることから、TOE1とTOE2は花成制御において機能重複していると考えられる。一方、TOE1 過剰発現個体は花成が遅延した。toe1 toe2 二重変異体でのFT 転写産物量は野生型よりも著しく高く、TOE1 過剰発現個体では低くなっていた。toe1 toe2 二重変異体の早期花成表現型はft-10 変異を導入することで抑制された。したがって、TOE1とTOE2はFT の転写を抑制することで花成を負に制御していると考えられる。TOE1はFT 遺伝子のプロモーター領域および下流領域に結合することが確認された。したがって、TOE1はFT 遺伝子に直接結合して遺伝子発現を制御していると考えられる。FT プロモーター制御下でLUC レポーターを発現するコンストラクトを導入した一過的発現アッセイ系において、TOE1 を過剰発現させるとLUC の発現量が減少するが、同時にJAZ1 を過剰発現させるとLUC 発現の減少が相殺された。しかし、TOE1との相互作用に関与しているNTドメインをを欠いたJAZ1ΔNT を過剰発現させた場合にはLUC 発現は減少したままであった。よって、JAZ1はTOE1と相互作用をすることでTOE1によるFT 遺伝子の発現抑制を解除していると考えられる。coi1-2 変異体でTOE1 を過剰発現させるとFT 転写産物量は野生型よりも少なくなり、花成遅延を起こした。TOE1 の過剰発現は、根の伸長阻害やJA応答遺伝子の発現に関してcoi1-2 変異体で観察されるJA非感受性については変化を示さなかった。また、toe1 toe2 二重変異体ではJAによる根の伸長阻害や防御遺伝子の発現に変化は見られなかった。したがって、TOE-JAZ複合体はCOI1を介した花成制御に対して特異的に関与していると考えられる。

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