Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)CONSTANSによる花成誘導に関与する因子

2018-04-20 20:12:55 | 読んだ論文備忘録

VASCULAR PLANT ONE-ZINC FINGER1 (VOZ1) and VOZ2 Interact with CONSTANS and Promote Photoperiodic Flowering Transition
Kumar et al. Plant Physiology (2018) 176:2917-2930.

DOI:10.1104/pp.17.01562

シロイヌナズナZnフィンガー転写因子のVASCULAR ONE-ZINC FINGER1(VOZ1)とVOZ2は、フィトクロムBの下流で機能し、FLOWERING LOCUS TFT )の発現を制御している。また、voz1 voz2 二重変異体はFLOWERING LOCUS CFLC )の発現量が増加して花成遅延を起こす。したがって、VOZ 遺伝子による花成制御は光シグナルを介した経路によるものなのかFLC を介した経路によるものなのかが明らかではなく、VOZ の下流でFT の発現を制御している因子も不明である。インド理科大学院Nath らは、変異体を用いた解析から、voz1 voz2 二重変異体は長日条件下でFT の発現量が野生型よりも低く、voz1 voz2 flc 三重変異体でのFT の発現量はvoz1 voz2 二重変異体と同程度であることを見出した。したがって、VOZ 遺伝子はFT の発現と花成をFLC とは独立して制御していると考えられる。FT の発現はB-box型Znフィンガー転写因子のCONSTANS(CO)によって制御されている。そこで、voz1 voz2 二重変異体でのCO の発現を見たが、野生型と同等であった。また、co-2 変異体やCO 過剰発現個体でのVOZ1VOZ2 の発現量は野生型と同等であった。よって、VOZCO はお互いの発現に関与していない。co-2 変異体は花成が非常に遅く、voz1 voz2 二重変異体よりも遅くなった。また、voz1 voz2 co-2 三重変異体の花成遅延はco-2 変異体と同等であった。したがって、VOZ1VOZ2 は日長による花成制御においてCO と共に作用しているものと思われる。in vitro プルダウンアッセイやBiFCアッセイから、VOZ1、VOZ2はCOと物理的に相互作用をすることが判った。マイクロアレイ解析の結果、voz1 voz2 二重変異体は、野生型と比較して、699遺伝子の発現量が増加し、1278遺伝子の発現量が減少していた。しかしながら、それらの遺伝子の中にはvoz1 voz2 二重変異体の花成遅延表現型をに関与しそうな花成時期を制御することが知られている遺伝子は見出されなかった。SELEX法によってVOZ1、VOZ2に結合する塩基配列情報を見出したが、FT 遺伝子のプロモーター領域にその配列は見られなかった。よって、VOZタンパク質は間接的にFT の発現を制御していると考えられる。CO 過剰発現個体は野生型よりも早く花成するが、CO を過剰発現させたvoz1 voz2 二重変異体は花成が遅延した。したがって、COがFT の発現を活性化させて花成を促進させるためにはVOZタンパク質が必要であることが示唆される。以上の結果から、VOZタンパク質はCOと物理的に相互作用をすることでCOのFT 遺伝子の発現を活性化する機能を調節していると考えられる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 論文)光シグナルとオーキシ... | トップ | 植物観察)箱根 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読んだ論文備忘録」カテゴリの最新記事