Photoactivated CRY1 and phyB Interact Directly with AUX/IAA Proteins to Inhibit Auxin Signaling in Arabidopsis
Xu et al. Molecular Plant (2018) 11:523-541.
doi:10.1016/j.molp.2017.12.003
シロイヌナズナ芽生えの胚軸伸長は、光シグナルによって抑制され、オーキシンシグナルによって促進される。中国 復旦大学のYang らは、胚軸伸長における光とオーキシンの相反する関係の分子機構について解析を行なった。オーキシンシグナルセンサーであるDR5::GUS を導入したシロイヌナズナプロトプラストの暗所下および青色光照射下でのオーキシンアナログの1-ナフタレン酢酸(NAA)に対する応答性を見たところ、両条件とも添加するNAA濃度に応じて応答性が高まるが、暗所下は青色光照射下よりも応答性が高くなっていた。また、青色光受容体クリプトクロム1(CRY1)の変異体cry1 は野生型よりもNAA添加によるDR5::GUS の活性化が高くなった。さらに、cry1 変異体でのオーキシン応答遺伝子(GH3.2 、IAA5 、SAUR63 、HAT2 )のオーキシン添加による発現誘導は野生型よりも高くなっていた。したがって、CRY1は青色光によるオーキシンシグナル伝達の阻害に関与していることが示唆される。暗所で育成した野生型芽生えは、青色光下で育成した芽生えよりも、オーキシンアナログのピクロラムに応答した胚軸伸長が促進された。また、照射する青色光量を強めるとピクロラムに対する感受性が低下した。cry1 変異体の青色光下でのピクロラム応答性は野生型よりも高く、CRY1 過剰発現個体は低くなっていた。したがって、CRY1は胚軸伸長制御におけるオーキシンシグナル伝達の青色光による阻害に関与していることが示唆される。暗所下では青色光下よりもIAA12タンパク質やIAA17タンパク質のオーキシンによる分解が速く、青色光はオーキシンによって誘導されるAUX/IAAの分解を阻害していることが示唆される。また、cry1 変異体は青色光下でのオーキシン処理後のIAA17タンパク質蓄積量が野生型よりも少なくなっていた。これらの結果から、CRY1はオーキシンによって誘導されるAUX/IAAタンパク質の分解の阻害に関与していることが示唆される。各種アッセイから、CRY1とAUX/IAAは生体内で相互作用をすることが確認された。そしてこの相互作用は青色光照射量を強めると高まった。IAA7およびIAA17の機能獲得変異体であるaxr2 およびaxr3 にcry1 変異を導入した二重変異体は、青色光下で胚軸が短くなり、各axr2 、axr3 単独変異体と同等であった。よって、AUX/IAAタンパク質は青色光下での胚軸伸長制御においてCRY1の下流で作用していることが示唆される。オーキシンはF-boxタンパク質のTIR1/AFBとAUX/IAAタンパク質との複合体形成を促進し、このことによってAUX/IAAタンパク質はユビキチン化され、分解される。CRY1とAUX/IAAは両者のN末端側領域で相互作用をし、TIR1/AFBとAUX/IAAとの相互作用もAUX/IAAのN末端側領域が関与しているが、CRY1とTIR1/AFBがAUX/IAAと相互作用をしているN末端側領域は異なっていた。CRY1は青色光照射下でAUX/IAAと相互作用をし、このことによってオーキシンによって誘導されるTIR1とAUX/IAAとの相互作用が阻害された。次に、赤色/遠赤色光受容体であるフィトクロムと胚軸伸長との関係について調査した。その結果、phyBは赤色光に依存してAUX/IAAタンパク質と相互作用をすることが確認された。オーキシンによる胚軸伸長は赤色光照射下では感受性が低下するが、phyA phyB 二重変異体やフィトクロムのクロモフォア生合成が欠損したhy1 変異体は感受性が高くなり、phyB過剰発現個体は殆ど応答しなかった。よって、phyBによる赤色光シグナル伝達はオーキシンによる胚軸伸長を阻害することが示唆される。DR5::GUS 活性による解析から、暗所下は赤色光照射下よりもオーキシン応答性が高く、phyB 変異体は野生型よりも赤色光下でのオーキシン感受性が高いことがわかった。したがって、phyBはオーキシンシグナル伝達の赤色光による抑制に関与していると考えられる。NAA処理によって誘導されるAUX/IAAタンパク質の分解は赤色光照射によって抑制され、phyB 変異体では促進された。したがって、phyBはオーキシンによって誘導されるAUX/IAAタンパク質の赤色光による阻害に関与していることが示唆される。以上の結果から、CRY1とphyBはAUX/IAAと直接相互作用をすることでオーキシンシグナル伝達を制御していることが明らかとなった。RNA-seq解析から、CRYとTIR1/AFBは、成長に関連したホルモンに応答する遺伝子や細胞伸長に直接関連する遺伝子に対して相反する制御をして細胞伸長を反対方向に制御していることが示された。フィトクロムによる赤色/遠赤色光シグナルについても同様の解析を行ったところ、フィトクロムによるオーキシンシグナル伝達の阻害もオーキシン応答遺伝子の発現の抑制を介してなされていることが示された。以上の結果から、AUX/IAAタンパク質は、光受容体とオーキシン受容体との間で共通な直接の下流コンポーネントとして作用しており、AUX/IAAタンパク質の安定性に対しての相反する制御が光シグナルとオーキシンシグナルのバランスを最適化して形態形成を制御していると考えられる。
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