そーれりぽーと

映画、旅行、植物など気の向くまま

新作映画の満足度は最高★5つで表示

陽だまりハウスでマラソンを

2015-03-27 | 劇場映画れびゅー
老人ホームに入ったおじいちゃんがフルマラソンにチャレンジする『陽だまりハウスでマラソンを』を観てきました。
★★★★

メルボルンオリンピックのマラソンで金メダルを獲ったかつての英雄も、今は高齢になって夫婦で隠居生活。
妻の病気を期に、娘の薦めもあって家を売っぱらい、二人で老人ホームに来てはみたものの、まだまだ元気な気持ちでいたおじいちゃんは、ホームで人形を作ったり童謡を歌って毎日を過ごしている他の老人たちを見てがっくり。
「自分は違う」と一念発起して、数十年ぶりに走り始める…。

他人事じゃないですよね。
俺だって元気で居れば、いつかは老いてホームのご厄介になる日が来るのかもしれない。
その時に、みんなでお遊戯をしているような空気だったら馴染めるだろうか。
痴呆を患っていたりすれば、逆にあんな雰囲気の方が介護がしやすかったり、本人も落ち着いたりするのかな。
そうじゃ無い人が、「ここは自分の居場所じゃない」と感じた時はどうしているんだろう。
自己主張したら、このおじいちゃんのように、目の上のたんこぶのように思われることになるのかな。
と言うか、このおじいちゃんが現れるまで、あのホームの老人たちは本当に楽しんでいたのかな。
終の住処は、ただ時間を費やして枯れるまでの暇を潰す場所と割り切って、割り切られて良いわけが無いと思うのだけど。
なんて遠い先の不安がずっと頭の中をぐるぐる回りながらの鑑賞になりました。
遠い先っつったって、いざ老いてみたらあっという間にその時が来たような感覚なんだろうな…。

ホームの側だって規律を乱されると運営が難しくなるし、一定の規律が守れない人に居てもらっても困るだろうし。
どんなにキツイ事を言っても、やっても、運営側に心があるかどうかってのが大事なポイントなんだろう。

おっと、社会風刺的な側面に着目して脱線し過ぎました。
純粋な目でこの映画を観た場合、かつての栄光を自信に、老いてからでもチャレンジを始めるおじいちゃんのがむしゃらな様子と、それを支える献身的な妻の様子が凄くステキです。
こんな夫婦って良いなって、結婚って良いなぁって改めて感じます。
結婚する気の無いシングルマンですけれど。

本当にマラソンに出場するのか、ホームはどう対応するのか。
凄く心に響いて、いろんな登場人物の描写が深くて、今のお年寄りの事や、自分の将来を投影して考えられる良い映画でした。

ネタバレ
行き遅れたくない一心なのか、薄情な娘の態度やら掌を返す様子も、自分の生活やら恋人とのストレスやらで親に構ってられない、自己中で片付けられない心境は理解できて、老夫婦以外の部分にも凄く感情移入しながらの鑑賞でした。

確執のあった人が仲間になってくれた時の頼もしさって、感動ものを描く上でとてもありがちなシチュエーションで、でもそうなるとわかって観ていても絶対に面白いですが、この映画の場合は割を食ったミューラーさん以外はみんな良い人になっちゃった感じ。
偏った信念と、「良い事をしている私」の理想像にポーっとなっていて、相手の気持ちまでは考えずに親切を押し付けていたミューラーさんは、本心をむき出しにされてしまったような結果、最後はアフリカへ飛んでしまわれたけど、本当に偽善者だったのかは何とも言えないなぁ。
ミューラーさんが居なくなって、他人事のようにハッピーエンドを強調してた院長のしたたかさの方が鼻に付くんよね。



カルテット!人生のオペラハウス [Blu-ray]
マギー・スミス,トム・コートネイ,ビリー・コノリー
ポニーキャニオン

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ナイト ミュージアム エジプ... | トップ | ジュピター 3D »