懐かしのバレエ

バレエ、パフォーミングアーツ等の感想、及び、日々雑感。バレエは、少し以前の回顧も。他、政治、社会、競馬、少女マンガ。

グルジアバレエ、「特別プロ」演目

2012-07-18 01:39:19 | バレエ
また、与太話です。宣伝のつもりが、宣伝になってない文に。

以前の来日のインタビューで、アナニアシヴィリが、「次回は『椿姫』をお見せできると思うわ」と、話していたので、私は今回は、てっきり『マルグリットとアルマン(椿姫)』がメインかと思っていた。たった1日しか、この公演がないとは、意外だった。
それで、21日は、なんとしても~、いかなければ、と。

自分は、「椿姫」が入れば、他演目が愚作でも行ったとは思うけど、
このプログラム、それ以外の演目も、とても良い演目が並んでいて、感心することしきり。

ニーナの芸術監督としての功績には、ロシアのバレエ団にしては、ぬきんでて質の良いコンテのレパートリーを導入した点もあると思った。

(逆に、今回初めて地方でニーナ以外が主役に立ったが、そこでキエフのプリマを出し、自前の主役で固められなかったのは、致し方ないが、プリマを育て切れなかった残念さも。)
(私たちには、キエフでもどこの人でも、良いプリマが出演した方が嬉しいけど。)

私は、いわゆる「ガラ・コンサート」で寄せ集めの演目を見せられる事には、忸怩たる思いもあるので、今回の公演で良質な演目を揃えられた点には、バレエ公演かくあるべし、と思った。
(なかなか、なくならない、コンセプト不明の寄せ集めガラ・コン。日本でも他国でも。ダンサーの自己満足を見るよう。芸術家としての志の低さが悲しい。)

公演に先立ち、グルジア公演の宣伝の画像で、作品の一部も見てみた。

「Falling Angels」
キリアン振付。ガーナの伝統音楽に硬質な振付が映える。モノトーン世界。私には、万人が「良い」と言いそうなコンテに見えるんだけど。さて、本番はいかに。
私が特にキリアンのファンじゃないけど、やっぱ、今時のぬるいコンテが吹っ飛ぶ、硬派コンテ。動きはクール、打楽器系の音感で高揚感も添えて。ズルイ!振付すばらしい。

「デュオ・コンチェルタント」
グルジア人の踊るバランシンもい~わね、と思うけど。男女の白黒の衣装姿は、昔のニューヨークシティのダンサーたちと、さほど印象変わらず。グルジアのダンサーにしては、踊りは都会的に洗練されて、短い画像では普通のバランシンに見えたけど。さて、本番はいかに。

バランシンは多作とはいえ、キリアン、バランシンと、巨匠振付家作品が並ぶと、モスクワ派バレリーナの組織するバレエ団とも思えない充実度。ああ、ボリショイも、こうだったら良かったのに・・

「サガロベリ」
気鋭の中堅振付家:ポソホフが、グルジアバレエに振付けた、民族色ある作品みたいだから、期待したんだけどさ。・・・かわいい感じ。思ったとおりと申しましょうか。

これは、ポソホフからニーナ&グルジアバレエへの、ラヴレターみたいな作品、と思って見ました。

最初は褐色の背景にバレリーナのシルエットが浮かび、民族音楽っぽいので、私的にはアフリカのサバンナを連想。(って、違うと思うけど。)衣装が珍しいのがある。ゆるやかに流れる時間を思わせる女性たちのダンス。男性群舞のジャンプも民族舞踊の逞しさを連想させるもの。女は女らしく、男は男らしく、の世界、かな。
肩こらず、のんびり楽しむ系。

ポソホフの一生懸命さとグルジアダンサーの素朴さが、ほほえましい気分にさせてくれるけど、そもそも異国情趣がベースにあるので、そこらへんで珍しさも手伝って楽しめる感じ。振付や雰囲気の毛色が変わってて、その点でガラにはいいかも。演目選択に、異趣も大事。

★ポソホフ・メモ
ボリショイ出た後、サンフランシスコバレエに落ち着き、芸術監督トマッソンの元でダンサーしながら振付にも着手。バランシンの元で働いた経歴のあるトマッソンとの共同作業は、実り多いものだったに違いないと想像。
ボリショイに、「シンデレラ」を振付。斬新系で、一部アメリカのショービジネスの文化の影響を受けたような、現代的な部分もあった。口コミレベルでは、作品の評判は、おおむねラトマンスキーよりは、上っぽかった。

巨匠振付家級の切れ味までには至らずとも、ポソホフは真面目な芸術家肌だったから、後の世代の振付作品みたいな、いいかげんな作品は創らないだろうと、私的には信頼してる。振付の巧拙だけが全てでもなく、ちゃんと考えがあって創ってるのは、それを手繰り寄せながら見るのも楽しいから。音楽も、照明も、衣装も含めて。

(いいかげんってのは、以前ボリショイのコンテでマクベスを題材にした作品を作ろうとした欧州の若い振付家が、ツィスカリーゼに降板されてしまった時に、「僕も作品をよく分かってなかった」とか言ってた様なもの。あまり大した考えもなく、なんとなくつくってるのかしら?と思えるような、近年の一部コンテとか。100%悪いとは言わないけど、・・。)

《ビゼー・ヴァリエーション》ニーナ出演
バランシンもどきみたいな小品に見えるけど。(ラトマンスキー振付)
青い照明、青いシンプルな衣装のバレリーナたちと対の男性たち。バランシンの抽象バレエみたいに、表向きの筋はなくて、観てる人が男女のストーリー想像してもい~よ、というよ~な作品、らしい。

クラシック演目で見てるアナニアシヴィリが、こういう抽象系のコンテを踊るのを見るだけでも、思わず目が行ってしまって、たのしい。

ラトマンスキーは振付家としての水準は高くないみたいだけど(例えば、マリインスキーに振付けた、ラトマンスキー版「シンデレラ」の振付を誉めた人に、会った事がない)、小回りきいて、どうあっても新しい作品が欲しいダンサーたちには重宝なのかも。

そして、これだけでも見る価値ありそう(?)な、円熟期のニーナの物語バレエ「マルグリットとアルマン」あ~、やっぱり、アルマンはマトヴィエンコじゃないのか~。(ザハロワの椿姫と、比べたかったのに。。。)そそられる舞台写真が、何場面か披露されてて期待が高まりますです。

生命力に溢れたニーナというバレリーナを、こういう儚い薄幸の女性像で見るなんて、以前は、想像も付かなかった。彼女のキャリアの中では、今が一番、演技力上がってるように見える。その時期ごとに自分に合う演目をチョイスしてこれたのも、彼女の才覚なのでしょう。

(昔はニーナといったら、ドンキのキトリが18番と見られていたし、「海賊」での脚の付け根からざっくり動いてるような、爽快なイタリアンフェッテとか、忘れられない印象があるけれど。)

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