懐かしのバレエ

バレエ、パフォーミングアーツ等の感想、及び、日々雑感。バレエは、少し以前の回顧も。他、政治、社会、競馬、少女マンガ。

NHK視点論点「桜論」水原紫苑

2008-03-21 00:08:54 | Weblog
本日放映分が、歌人・水原紫苑の「桜論」。

NHK教育TVの「視点論点」で、こういう教養モノっぽいのをやるとは知らなかった。めっちゃ面白かった。

この頃の、他の教養モノより中身が濃いというか、時間が短いのか、フルスピードでかっとばして在原業平の昔から、近代、現代作家の桜の歌までを紹介。その語り口のかっ飛ばし方と、使う言葉の的確さが心地よい。

聞き漏らすと、肝心の所が抜けるので、食いついて聞く感じ。

業平の歌に見る「宇宙」。いにしえの歌人の歌に、宇宙を見る、この歌人の歌と宇宙観に聞き入るのが愉しい。この論の良し悪しは、時間のある時に考えればいい、忙しい語りと、私も時間がないために、そんな気になった。

小野小町の歌「花の色はうつりにけりないたづらに・・・・」の一般的な見方から、少し入り込んで、「花」と「女」は違うと言う話、花は移ろうのが自然だが、歳を重ねた女の身は、花より重たい、・・・。

そんな踏み込んだ講釈を聞くと、逆に小町の歌の一見しての「軽み」の秀逸さに感じ入る。元々、いい歌とは、一見軽く流れやリズムがあり、その裏にちらり深みが入っていることが要求されるんだろうけど、歌人でも研究者でもない私ら素人は、洒脱な軽みの勝った歌にまで、普段「その奥」を感じてはいない気がする。

短歌のサークルにまで行ったりはしないから、こういうTVでこのように語れる語り手は貴重だと思った。

そして長大な「源氏物語」の中で「桜」の出てくる場面は、運命を狂わす恋の話の2場という示唆。
源氏と朧月夜の「花の宴」。そして源氏の正妻・女三宮を柏木が垣間見る場面、「野分け」。
平安時代の桜へのイメージは、どこか運命を狂わせる妖しさ、暗さ、現実の破綻に至るエロス、といったものがあるのかもという主旨の示唆が興味深い。

紫式部の考え方や好みが私には合わない所があって、私的には、源氏物語にも苦手意識があった。けれど、こうして聞くと、この2場の選び方、展開、男女関係に普遍的な要素がてんこもりで、式部にもこういう広さがあったのかと、ちょっと見直した。

次の西行の時代、そして江戸時代の桜にまつわる歌の解析と、その時代性の話から、これが、近代になって「桜」の象徴するものが変わった所まで語られていた。

恋、エロスといったものから、国家的なものへと。

言われてみればそうなのだけど、TVの時間枠の制約の中で、歌人の生きてきた濃密な教養が、却っていい方向に出たような、急ぎ足の語りと、非タレント的な誠実な作風が、新鮮な魅力の、教養もの番組だった。

10年くらい前か、短歌界は、大衆的な歌い手が出て、自分には魅力がなくなったと思っていた。で、全然見なくなってしまったのだけれど、また別の路線の新しい人が出てきていると今日知った。

最近見たNHK教育番組の中で、一番面白かった気がする。
コメント (4)
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