松尾芭蕉の有名なこの句と英国料理の不味さ(正確には英国料理の不味い部分)とは私の中で分かちがたく結びついている(一応断っておくが、私はこの句の優しい響きが大好きである)。
英国料理は、おそらく最近になって美味しくなったのだろう。かつては不味かったに違いない。普段、会社の食堂は結構美味しいと思っているが、こちらに来て体重がうなぎのぼりの私は、少し節制することにした。即ち、ジャガイモは食べない。油で揚げた野菜は食べない。マヨネーズ、油の類は避ける、である。
これを実行してみて気がついた。酷く不味い。昔、英国留学をした少女が、英国料理の不味さ(夕食はいつもゆでた根菜類)に泣いた、という話を聞いたことがあるが、まさにその通り。泣きたいほど不味いのである。
英国人は、これが結構平気なようだ。会社で、おやつを食べるのは私の得意技なのだが、同僚も食べないわけではない。しかし、食べるものが違う。私は、ケーキやチョコレート。同僚も勿論チョコレートなど普通のおやつも食べるのだが、時にきゅうり(本当に!!日本のよりかなり太いものをキリギリスのようにかじる)、にんじんを生のまま、適当な大きさに切ってラップに包んで持参して、ぼりぼりとかじるのである。まさに「手ごとにむけや 瓜なすび」が目の前で展開されるのである!
松尾芭蕉のこの句が載っていた教科書の解説には、「昔は貧しくて、瓜やなすびがおやつだった」と書いてあった記憶がある。今の英国は貧しくはないと思うが、文化的な違いなのだろうか、きゅうりやにんじんがおやつなのだろう(電車の中でも、子供が母親の持つおやつ袋からにんじんを出してかじっていたのを見たことがある)。
英国料理は意外と美味しかった、などといっていた私は愚か者に違いない。なぜなら、美味しくなっている原因は、脂肪分や糖分が多く含まれた料理が増えたからに他ならないから。このところBBCでは繰り返し肥満人口が増えたことを警告している。これは、間違いなく美味しくなった英国料理が原因だ。私にとっても他人事ではない。しかし、芭蕉の時代に帰れ、といわれると、正直、つらい。