だって、皆来るんだも~ん、とヴェルビエまで来てしまった。今日はジョシュア・ベルとジャン=イヴ・ティボーテによるメンデルスゾーンのヴァイオリンとピアノのための協奏曲が目玉。
それにしても、この演奏会場にまずショック。テント張りで、そこに椅子を並べただけ。外の音が漏れなく聴こえる。
前半のピアノ五重奏曲などは比較的普通に聴こえていて、へぇ、テントでも何とかなるんだ、などと思っていたのたが、後半の協奏曲になって、結構な数の弦楽合奏団と蓋を取り払ってしまったグランドピアノが相手だからか、最初のジョシュの音に「えっ?」と思う。いつも聴いているコンチェルトの出だしの響きと余りに違う。これが、本当に、あの、5億円の(拘る)ストラディヴァリウスの音なの??
しかし、第一楽章の最後のピアノとのカデンツァでは、昔から組んできたティボーテとの息もぴったり、とても素晴らしかった。
メンデルスゾーン14歳(1823年)の作品。14歳でこんな作品が書けるなんて、やっぱり天才、と今更ながら感心する。
第三楽章も、やはりティボーテとの掛け合いが良い感じだった。ホールが良かったら、どんなに良い演奏になっていただろうか-と、とても残念。
Promsといい、此処といい、夏の音楽祭は会場に問題がある所が多いのだろうか。ソリストにとって自分の出す音は演奏を進めてゆく上でとても大切だと推測する。本人への聴こえが悪ければ、それが即演奏に反映され支障を来たすのではないかと気の毒に思う。
楽屋にお邪魔したら、ジョシュは汗だく。ヴェルビエはとにかく暑いし、空気が薄くて私など肺の奥まで空気が入らない感じすらするのである。演奏などしたら、いくら男性でもexhaustしてしまうのは理解できる。初めて直接お目にかかって、写真より美しい容貌と少し距離感のある対応にこちらも余所余所しくなってしまったけれど、Maison du Chocolatのチョコレートを差し出したら、ちょっと打ち解けてくれたように感じた。やっぱりお土産は大事ね。
ティボーテに今日の労をねぎらったら(今日の演奏会は「ティボーテへの白紙委任状」がサブタイトル)、「本当に大変だった」といい、また、ドレスデンでの演奏を讃えたら「ドゥダメルは素晴らしかったよ」というので、「あなたの演奏も良かった」といったら、とても嬉しそうだった。可愛い人である。