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未来派 ---Futurismo--- Ver2.0 

2012年08月31日 | 音楽・music




未来派野郎(みらいはやろう)とは 1986年4月21日に発表された
坂本龍一の6作目のオリジナルソロアルバムCD 1993/9/21再発 ディスク枚数: 1
レーベル: midi 収録時間: 42 分 ASINコード: B00005FDYT

1 Broadway Boogie Woogie 作詞:ピーター・バラカン / 作曲:坂本龍一
坂本にとっては初めてのブルースコードを使用したロックンロール的ダンスナンバー
曲中流れる男女の会話は 映画「ブレードランナー」から
ワンセンテンスずつサンプリングして会話風にコラージュされた

2 黄土高原 作曲:坂本龍一
坂本の作品では数少ないオーソドックスなコード進行を持つ楽曲のひとつ
テクノの呪縛がとけていわゆるフュージョン的なテイストが全面に出ている

3  Ballet Mécanique  作詞:矢野顕子 / 翻訳:ピーター・バラカン / 作曲:坂本龍一
元々 岡田有希子のアルバム『ヴィーナス誕生』のために提供した
「WONDER TRIP LOVER」を新たに歌詞を書き換えてセルフカヴァー
1999年には中谷美紀が「クロニック・ラヴ」のタイトルでカヴァーしている
(作詞は中谷美紀本人・TBSドラマ ケイゾク 主題歌)
 

4  G.T.IIº 作詞:ピーター・バラカン / 日本語原詞:矢野顕子 / 作曲:坂本龍一
シングルカットされた「G.T.」のメガミックスヴァージョン 曲名は「グランツーリスモ(大旅行)」の意

5 Milan, 1909 作曲:坂本龍一
“スペースコロニーの東洋人地区の端末で「未来派」を
検索したときに流れるBGM”というイメージで作られた曲
後半から現れる高次倍音を含んだ朗読はヴォコーダーではなく
マッキントッシュの「Smooth Talker」で作られた合成音 内容は細川周平による未来派の解説

6  Variety Show 作曲:坂本龍一
サンプリング音で組み立てられたヒップホップのビートに マリネッティの演説がラップとして乗る曲
音声は「未来派」を意味する「フューチャーリスタ(Futurista)」がサンプリングされている

マリネッティ…1910年の公演で「世界で唯一つの健康法ー戦争よ永遠なれ!」と
観衆を挑発して逮捕されたイタリアのファシズム 
大衆へ向けての自らの演説を 「バラエティショー」
と称した

7 大航海 Verso lo schermo  作詞:かの香織 / イタリア語翻訳:細川周平 / 作曲:坂本龍一
ジュール・ベルヌの「月世界旅行」のような世界を夢とロマンを
 当時細野晴臣が傾倒していたOTT(Over The Top)で表現した
ヴォーカルはかの香織 複雑な転調を何度も何度も繰り返す

8  Water is Life 作曲:坂本龍一
クラシックのCDからの音源を切り刻んで編集したコラージュ音楽

9  Parolibre 作曲:坂本龍一
タイトルはイタリア語で1910年代の未来派の自由詩のことで
未来派に関わったアーティストによる造語といわれ(直訳すると「話し文学」)
読み方は「パロリーブル」となる
坂本としてはブッチーニのオペラの中の間奏曲のようなつもりで書いている

10 G.T.   作詞:ピーター・バラカン / 日本語原詞:矢野顕子 / 作曲:坂本龍一
アルバムに先行してシングルとして発表された曲 CDではボーナストラックとして追加収録された


タイトルの「未来派」は20世紀初頭イタリアを中心に起こった芸術運動から取られている
サウンド的にはフェアライトCMIによる機械音・金属音のサンプリングと
ヤマハDX7が全体を支配しており かなりゴリゴリと硬質な音感
 

※未来派・・・(みらいは Futurismo(伊) Futurism  フトゥリズモ フューチャリズム)とは
 過去の芸術の徹底破壊と 機械化によって実現された近代社会の速さを称えるもので
 20世紀初頭にイタリアを中心として起こった前衛芸術運動

 この運動は文学、美術、建築、音楽と広範な分野で展開されたが
 1920年代からはイタリア・ファシズムに受け入れられ 
 不本意ながら戦争を「世の中を衛生的にする唯一の方法」として賛美されてしまう

 日本において初めて未来派が紹介されたのは1909年に「スバル」誌上に掲載された
 森鴎外による 未来派宣言の翻訳としてであった


前回のオリジナルアルバム『音楽図鑑』よりトラック数が減っているものの
アルバム制作に7ヶ月を要しており 1トラックごとの密度は濃いと坂本はコメントしている
なおこのアルバムのレコーディングに入る前に 坂本はロックのドライブ感のリファレンスとして
レッド・ツェッペリンの全アルバムを聴き直している

直前に参加したPILのアルバム『ALBUM』でのセッションにおいて
ビル・ラズウェルがレコーディングの合間にツェッペリンを流して
参加メンバーの意識を方向付けていた事の流れを汲んだもので
結果としてそれまでの坂本の作品中 最もロック色の濃い仕上がりとなる

音楽は 人々に和みや癒しを与えるだけでなく 
覚醒させる ひとつのセラピー もしくは「手段・方法」と捉え 
教授の英知の集結した最高傑作=ひとつの到達点だとも考える 僕の愛聴盤

※ なお 文中「未来派」の解説ですが 戦争を賛美するものではなく 
本来なら 人の心を豊かにする芸術運動さえも 間違った使い方された 
過去の愚例として取り上げましたことをご理解ください
未来永劫 戦い・血が流れること・尊い命絶ゆることは 決してあってはならないことですし 
皆で阻止せねばならぬことです!