スウェーデン生活+その後

2010-2013年スウェーデンに在住し帰国。雑記、鳥・植物の写真
*海外情報はその当時のもの。
*禁無断転載

世界陸上マニキュア事件

2013-08-25 14:02:29 | 時事問題
少し前になってしまうが、ロシアの女子陸上選手、エレーナ・イシンバエワ(Yelena Isinbayeva)選手が「ロシアの同性愛宣伝禁止法を支持する発言をした」として物議を醸した事件を御存じであろうか?日本のネットニュースを見ると、いきなり何の関連もなく彼女が「同性愛排除を支持する発言をした」という部分だけが取り出されて報道されている様で、「何だ?」と思われた方も多いかも知れない。
このイシンバエワ選手の発言は何の脈絡もなく出てきた話ではない。これはスウェーデンの陸上選手の行動に端を発した言動なのである。陸上選手の名前はエマ・グリアン(Emma Anna-Maria Green Tregaro)。走り高跳びの選手である。何をしたのか?と言うとThe localより。
http://www.thelocal.se/49682/20130816/
Wikipedia「エマ・グリアン」
ひとまず話の前に前提を。ロシアは最近になって「同性愛宣伝禁止法」なる法律を施行する事を決めたのである。この法律は同性愛と異性愛の関係が「社会的に同等」であるという情報を、未成年者に広めると罰金刑というもの。更に外国人にもこの法律は適用され、罰金の対象になるだけでなく、最大で15日間の身柄拘束、更には国外退去にもなりうるというものだそうである。これに内外から批判が集まる。特に欧州は人権の平等という事には敏感であり、スウェーデン国内でも抗議行動が繰り広げられた。で、先のモスクワでの世界陸上でスウェーデンの選手が取ったのがThe localの記事の行動である。爪のマニキュアを虹色に縫って競技を行ったのである(虹色はゲイ支持の意思表示)。かくてイシンバエワ選手(ロシアの選手である)がこの政治的活動に対して抗議し、その脈絡で上記の発言につながってしまったという次第。
しかしながらロンドン五輪の韓国選手の竹島プラカードの事件を出すまでもなく、スポーツの場で政治的主張は御法度である。後にグリアン選手はこのマニキュアを全て赤に塗り直し、またスウェーデンのオリンピック委員会も以下の通りの声明を出した。
http://www.thelocal.se/49744/20130820/
同様の行動は次回のソチ五輪では認められない、という訳である。これは当然であろう。選手が全員政治的主張をし始めたらスポーツ大会など成立しなくなってしまう。世界には政治的主張など文字通り星の数ほどあるのだから。。。
もっとも、この同性愛宣伝禁止法に選手が反発する事自体は理解できる。日本ではそれほど知られていないかも知れないが、海外でトップスポーツ選手が同性愛を公表する事はそれほど珍しくない事なのだ。アメリカの男子フィギュアスケートのトップ選手、ジョニー・ウィアー(John Garvin "Johnny" Weir-Voronov)選手、スウェーデンでも女子サッカーのリサ・ダールクビスト(Lisa Dahlkvist)選手などがいる。あとは女子サッカーの監督、ピア・スンダーゲ(Pia Sundhage)氏など。ソチ五輪ではロシアはこの法律を選手に適応しない、としているが反発は必至であろう。どうなる事か。
Wikipedia「ジョニー・ウィアー」
Wikipedia「Lisa Dahlkvist」
スンダーゲ監督
コメント
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