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スウェーデン生活+その後

2010-2013年スウェーデンに在住し帰国。雑記、鳥・植物の写真
*海外情報はその当時のもの。
*禁無断転載

欲が出ました

2025-02-22 23:37:20 | 書評・映画評など
「欲が出ました」(ヨシタケシンスケ著、新潮社)を読み終わった。ごく短いエッセイをたくさん集めたもの。さすがというか、1つ1つに「なるほど」と思わせるものがある。一番は「世の中は正しいかどうかで回っているのではなく『気がすむ』かどうかで回っている」というもの。正しいこと、理屈にかなったことを強硬に主張する人が、必ずしも組織で優遇されるとは限らないのは誰でも体験することである。「考えることはオナラに似ている。『やれ』と言われても本人に準備が出来ていないとできない。逆にする時は『やめろ』と言ってもしてしまうし、止まらなくなる」というのも面白い。確かに自分も、物凄く忙しい最中であっても、何か良いアイディアが浮かび始めると夜中まで止まらなくなることはあるし、逆に時間があってもアイディアが出ないときは出ない。小泉純一郎元首相であったか、夜中に思いついたアイディアをメモするために、枕元にメモ帳を置いておくという話があったと思う。ちょこちょこ読みながら「なるほど」と思えるので、皆様もどうぞ。
ものは言いよう
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今夜は眠れない

2025-02-16 22:39:11 | 書評・映画評など
「今夜は眠れない」(宮部みゆき著、角川文庫)を読み終わった。最近になってストレスの多いイベントがいくつか終わったので、精神的にも少し本を読んだりする余裕が出来た。本のほう、殺人事件が起きる訳でもないが、きちんと考えられたストーリーで、最後はちゃんとハッピーエンドで終わる。宮部みゆきさん、いつもながら名ストーリーテラーである。取り調べ中の警察官が、捜査内容をそんなに中学生にペラペラしゃべってしまうのだろうか、とは思ったが。。トリックは見事である。あっという間に読めるので、皆さんもどうぞ。
おそろし 三島屋変調百物語事始

50代からの選択 ビジネスマンは人生の後半にどう備えるべきか

2025-01-19 22:03:40 | 書評・映画評など
「50代からの選択 ビジネスマンは人生の後半にどう備えるべきか」(大前研一著、集英社文庫)を読み終わった。今日買って、半日くらいで読んでしまった。大前研一は世界的に有名な経営コンサルタントであるが、52歳で東京都知事選挙に出馬して惨敗を喫する。以降は自分の人生を「オールクリア」し、「人と争わなくなったし、言葉を選ぶようになった」とのこと。氏は若かりし頃はマッキンゼーでがむしゃらに働き、海外でも多くを見聞した。海外では所得の格差があり、信じられないような金額の年棒をもらう経営者もいるが、その多くが必ずしも幸せそうでない生活を送っている、という話が強く印象に残った。巨大な城や船などを購入する人が多いが、友人も少なく孤独な生活を送ることが多いという。巨大な城は夫婦で住むには広すぎるし、船は一緒に船旅をする友人がいなくてはつまらない。氏はスキー、ダイビングなど多趣味な人物であるし、60歳を過ぎてもパワフルに趣味を楽しんでいるが、このような趣味や仕事以外のアクティビティについて、「やるなら50歳前後には始めていないとダメ」と説く。65歳になってから新しい趣味を始めてももう遅く、まだ体力・気力のある50歳前後には始めていないと長続きしないのだという。自分はバードウォッチングだけは始めたが、それ以外にも何かあるなら初めてみた方が良さそうである。2004年に書かれた本なので、今とだいぶ政治・経済状況が違ってしまってはいるが、いくつかのエピソードは今でも有効だし良い本だと思う。ご一読をお勧めする。
Wikipedia「大前研一」


おそろし 三島屋変調百物語事始

2025-01-05 23:37:08 | 書評・映画評など
「おそろし 三島屋変調百物語事始」(宮部みゆき著、角川文庫)を読み終わった。怪談話が5作であるが、どこか読後感がすがすがしいというか、最後はちゃんとハッピーエンドで終わってくれる。さすがは名ストーリーテラーである。お勧めできる。浄土は人間の心の中にある、というセリフは心に残る。調べると続編もしっかり出ているらしい。読んでみようかな。
Wikipedia「三島屋変調百物語」
孤宿の人

未来のだるまちゃんへ

2025-01-05 01:34:12 | 書評・映画評など
「未来のだるまちゃんへ」(かこさとし著、文春文庫)を読み終わった。「からすのパンやさん」などで有名な絵本作家さんであるが、東大工学部を卒業したあと、昭和電工で25年間もサラリーマン生活を続けながら「二足のわらじ」で絵本を書いていた人物であったことを、この本を読んで初めて知った。工学部出身らしく、科学分野の絵本も多く、書いた絵本は600冊を超えるのだという。戦前には一時は軍人を志したが視力が悪かったために不合格となり、結果として生き残る。そして敗戦を迎えて全ての価値観が転換してしまう中で一回は自分の道を失ってしまう。そんな中、東大のとある教授の「強い身体と共に、強固な思想を持て」という一言、そしてセトルメント活動という子供たちへの奉仕活動を経て絵本作家への道を歩んでいく。筆者は絵本作家は「結果として」なったもので、初めから絵本の道を志していた訳ではないとしている。人生誰でもそんなものであろう。だいたいにおいて目の前の仕事を、一生懸命にえり好みせずに頑張っていれば、道は開けていくものである。良著だと思う。
Wikipedia「かこさとし」

空気なんか、読まない

2025-01-04 05:26:46 | 書評・映画評など
「空気なんか、読まない」(鎌田実著、集英社文庫)を読み終わった。どうも最近、若い世代にいくほど「過剰に空気を読む」というか、周囲に合わせて行動しようとする雰囲気を感じる。余計な努力をしないで済むのは良いのかも知れないが、若いうちに「これをやりたい、あれもやってみたい」という意欲がまったくない人間が大人になっていったら、どういう職業人が出来上がるのであろうか。自分の守備範囲を恐ろしく狭く区切って、「この内側のこと以外できません!」という人間、自分の職場でも何人か知っているが、だいたいトラブルを引き起こした挙句に数年で職場を去っていった。この本では時代の「空気」を気にせず、信じるところを突っ走っていった人々が何人も描かれている。自身も病気に侵されながら教育に尽くした女性が、臨終に際して最後に残した言葉がよい。「生きるということは、人のためにつくすこと。以上、終わり!」これは本当にその通りであろう。
Wikipedia「鎌田實」

正直

2024-12-01 21:14:10 | 書評・映画評など
「正直」(松浦弥太郎著、河出文庫)を読み終わった。いつもながら自然に読める本である。「SNSは『社会的なつながりの仕組み』という意味なのに、SNSの上ではみんな自分自身の物語を語ることに熱心で、他人の物語を丁寧に聞くことをしなくなっている」はけだし至言であろう。「ものを売るのではなく、自分を売りにいく」「すこやかな野心を持つ」、いずれも今の自分に必要なことである。外回りで売り込みに行くことはあるが、結局は自分という人間を売り込むのが一番効果的である。恐ろしく筆まめであったという母親の話は示唆に富む。きっと商売は繁盛していたのであろう。「縁を時間ではからない」「身内を疎かにしない」これは本当にその通り、こちらが誠意をつくしたつもりでも、離れる人は離れるし、それを無理に追いかけてあまり良い結果にはならない。むしろ「今後の活躍を祈る」と送りだすのが適切である。そして筆者の指摘する通り、長い間知っているから、長い付き合いだから「縁」が壊れないと思ったら、それは大きな間違いである。どんなに長い縁でも、学生時代からの縁でも、血縁であっても切れるときは切れるので、それはそういうものと思っていた方がいい。「縁が切れる2つの条件」、これも大事である。「人間同士の付き合いではないところで、相手を利用している関係」「与える量が違いすぎる関係」、これは心に停めておかなくてはならない。また、こちらが困った時に助けてくれるのは、「長い間培った縁の人」ではなく、まったく思いもよらぬところからの縁だったりもする。あとがきを読んでいて、この本を執筆している最中に筆者の父親が亡くなっていたことを知った。筆者もいろいろ思うことがあったのだろう。お勧めの本である。
即答力

建築家、走る

2024-11-03 23:27:58 | 書評・映画評など
「建築家、走る」(隈研吾著、新潮文庫)を読み終わった。建築家・隈研吾の自伝である。言わずと知れた国立新競技場の設計者であり、自分も高尾山口駅でその設計を目にしている。今の建築家の生活は恐ろしく忙しいもののようである。氏もまた日本に加えて外国にもオフィスを構え、文字通り世界を分刻みのスケジュールで走り回っている。建築家の目からみた世界各国の国民性評がなかなか面白い。ただその中でも日本の建築界には批判的で、「サラリーマン的」なリスク回避が建築をダメにしていく、日本では顧客からのクレームを極度に恐れるお役人的態度の方が勝ってしまうことが多いが、本来は依頼人と建築家に「ともだおれ」とでもいうべき関係が出来ないとよい建築ができない、とする。これは他の仕事にも通用する理論のように思う。世界各国で「泥臭く」仕事する方法、巨大な模型を作った上で現地の人の意見も聞きながら構想をくみ上げて行ったアオーレ長岡の話などは面白かった。自分もまた、地に足のついた仕事をしているか、地元の状況、ニーズを本当に理解して仕事をしているか、それは常に自問自答していかなくてはならぬ。また頑張ろう。
Wikipedia「隈研吾」
Wikipedia「長岡市シティホールプラザアオーレ長岡」
高尾山その2
建築の日本展

オシムの言葉

2024-07-29 00:15:47 | 書評・映画評など
「オシムの言葉 増補改訂版」(木村元彦著、文春文庫)を読み終わった。忙しさにかまけて中々読書がはかどらなかった。2022年に死去されたイビチャ・オシム元日本代表監督の評伝である。ここまで波乱万丈な人生であったとは知らなかった。サラエボが包囲された時、本当にタッチの差でオシム監督は市の外に出て、アシマ夫人は市内に残ったのである。そこからの無線通信を使った必死の通信連絡、家族との離別の心労をかかえながらプロのサッカー監督として結果を出し続けるオシム、そして抗議の代表監督辞任。。。もう波乱万丈である。自分はそこまでサッカーには詳しくないが、サッカーについては本当に「職人の」監督というか、どこの監督を引き受けてもちゃんと結果を出してしまうところが凄い。高校野球などで、複数の高校で甲子園出場を成し遂げてしまう監督が時々いるが、そんな感じである。世界中を移動して仕事をしてきただけに、会見で述べる言葉が鋭い。これは「オシム語録」として日本のマスコミでも何回も引用されてきたが、特に印象的な言葉はいくつか紹介しておきたい。「作り上げる、つまり攻めることは難しい。でもね、作り上げるほうがいい人生でしょう。そう思いませんか?」「日本人は平均的な地位、中間に甘んじすぎるきらいがある。野心に欠ける。これは危険なメンタリティーだ。受け身すぎる」「私は日本人に、あまり責任や原因を明確にしないまま次に進もうとする傾向があるように思います。私には日本人の選手やコーチたちが使う言葉で嫌いなものが二つあります。『しょうがない』と『切り替え、切り替え』です。それで全部をごまかすことが出来てしまう」。どの言葉も含蓄があって素晴らしい。一読をお勧めする。
Wikipedia「イビチャ・オシム」
オシム氏死去
クロアチア旅行その5

バカの遺言

2024-04-29 21:42:42 | 書評・映画評など
「バカの遺言」(扶桑社新書、林家木久扇著)を読み終わった。ご存じ「笑点」のメンバーを長年つとめた落語家である。ご存じ「木久蔵ラーメン」とおバカキャラで売ってきた方であるが、本を読むとなかなかに計算高いというか、かなり現実的な計算に長けた人物である。師匠の林家正蔵や桂三木助、笑点のメンバーのエピソードなど、読んでいて興味深い(林家たい平も秩父愛に溢れる人物として紹介されている)。読んでいて心に残ったエピソードが桂三木助のエピソードで、行きつけの蕎麦屋で「店の中で必ず、同じ席に座る」ことを日課にしていたが、三木助が死去した後に同じ席に座ってみると、厨房の様子が良く見える上、出口に近いのですぐに外に出やすいことを知り「なるほど」と感心する。そして、こだわりというのは、他人からは意味がないことのように思われることがあっても必ず理由があるし、それを貫かないと得られないものがある、と結ぶ。確かにこれはその通りかも知れないと感心した次第。
Wikipedia「林家木久扇」
ランチパック あまりんいちごのジャム&カスタードクリーム