この庭で空をみる
雲はゆるやかに流れて
一羽の鳥がよこぎる
こうしていると
百年前をおもいだす
これからも
なつかしい時が流れて
あの雲のように
かたちをかえていくけれど
わたしもあなたも
きっと会えるだろう
鳥の声が聞こえる
おまえもずっと
飛んでいるだろう
わたしたちの庭で
この庭で空をみる
雲はゆるやかに流れて
一羽の鳥がよこぎる
こうしていると
百年前をおもいだす
これからも
なつかしい時が流れて
あの雲のように
かたちをかえていくけれど
わたしもあなたも
きっと会えるだろう
鳥の声が聞こえる
おまえもずっと
飛んでいるだろう
わたしたちの庭で
ね つぎ どこへ行こうか
わたしのなかのわたしに聞く
ね つぎ なにをしようか
わたしのなかのわたしに聞く
遠足にいくみたいに
なにをおやつでもっていこうか
なにをするためうまれてきたか
ぜんぜんわからないけれど
わたしはあなたに言いたいだけ
ね この空 きれい
ね この月 きれい
ね この色 きれい
ね このかたち きれい
世界はもちろんあさましく
きたないものがいっぱいだけど
どうしても無視できない
きれいなものが見えるのだから
ね ほら きれい
ね ほんとうに きれい
見たことないけど
懐かしいなら
それはむかし
あなたのそばにあった
ありがとうを言うために
そばにおこう
いつでも言えるわけじゃない
あしたもあるとは
誰もいえない
理由なんか
説明できなくても
意味なんか
見いだせなくても
かけがえのない
大切なもの
大昔
うまれる前から
探していたものに
やっとたどりついた
大切なもの
そう思うなら
なにがあっても
守りなさい
じぶんを裏切るな
まえのじぶんを裏切るな
守りなさい
挑むならそのために
闘うならそのために
ひとりのわたし
一匹の狐
わたしたちの星はひとつ
わたしたちの空はひとつ
おもいでは幻かもしれないが
つくりごとでないのは
わたしたちに命があること
だから
あしたどうなるかわからないこと
狐は夢をみるだろうか
その寝息をおもいながら
わたしは夢をみるだろう
おなじ星のうえで
おなじ空のしたで
こわがりの種が
芽吹かないように
いつもこころを
掘り返すのだ
勇気みたいな偽物や
正しいという勘違い
大きく育つまえに
みつけておくのだ
ほんとうの植物は
もっと素直で
もっとめだたず
あたりまえのものだ
ほんとうの花と
ほんとうの実をつける
ほんとうの種をまき
たいせつに育てる
季節を待って
時とともに
ほんとうと生きる
石段をかけのぼると
ひろい空がみえる
ちいさな屋根が
光って見える
ちいさな靴が走っているよ
ころんですぐに起き上がって
どんどんむこうへ駆けていく
いつでも景色を
思いだせるから
リュックをしょって
口笛吹いて
さあいこうって
旅人になれるよ
ああそうだね
白い雪がつもる
きらきらと青い色が
雪のうえで遊ぶ
ああそうだね
茜色にもみえる
朝焼けが雪を染める
雪はつめたくてあたたかく
なんにでもなれる
どんな色にも
どんなかたちにも
ああそうだね
雪はどんなことも
つつみこみ
きらきらとひかる
てくてく歩いて
歩きつづけて
よりみちはするよね
あとずさりもするよね
それでも前には行けるさ
行きたいところはひろいから
こまかくなくても大丈夫
虹が出たらたちどまる
花が咲いてたらたちどまる
悲しくなったらたちどまる
誰かがころんだらたちどまる
あたりまえさ あたりまえさ
それでも前には行けるさ
行きたいところは逃げないよ
あしたもあるから大丈夫
ドアをあけて空をごらん
月と雲がいま完璧だから
遠くはなれたわたしたちも
こうしてみあげているときは
月を中心にいちばん近い
こころが旅をはじめたもので
あしたはどこで空をみているか
いまのところわかりませんが
おなじときに月をみていたら
わたしたちはまるで
横にならんですすむ星
遠い過去から未来まで
しずかに旅をするなかま
あの水たまりを飛び越えよう
動いている雲が映る
揺れる空を飛び越えよう
じぶん以外のだれかのことは
いまは静かに遠くへ消える
あたらしい景色を見るために
知らないじぶんを見るために
あの水たまりを飛び越えよう
これはひとつのおとぎ話
またはひとつの伝説
ひとりの主人公が
ひとつしかない命をかけて
ひとつしかないものがたりを
つくりあげているのです
悲しいことも嬉しいことも
お話のなかに咲いた花
いつ終わるかはわかりません
だれと出会うかわかりません
なにに出会うかわかりません
でもこの道を歩いていけば
かならず出会うと決まっています
今日もおひさまと月が
主人公をみまもってくれました
あしたもずっとその先も
そのつぎのいのちまでも
まもられながら歩くのです
羽ひろげてみようね
ためしにぱたぱた
もすこしぱたぱた
すこし浮いたら
もっとぱたぱた
それで飛べたら嬉しいもんね
ぶつかってもころんでも
頭かいて飛びなおせばいい
下向いててもつまらないし
きげんよく飛ぶのが
いちばんだもんね
嬉しくって歌っちゃうかもね
羽ひろげてみようね
水のなかにおります
硝子の球体が
細い水の道でおおわれる
そのなかで空をみています
わたしのなかは水
わたしのそとは水
どこからか
小鳥の声が聞こえます
どこからか
うす青い空のきれはしが
うまれてくる香りがします
千年前もこうしていました
水のなかにおります