いちにちのぶん

きょうもまた

いちにちいきています

いきのこったのだから

こつこつといきのびていき

そのいちにちのぶん

たしかにあったじかんを

かたちをかえて

なにかべつのものを

つくろうとおもっているのです

いきている

ゆれている

またたいている

はしゃいでいる

ないている

たちどまる

ふりかえる

うちがわから

ひがともる

だんだんと

あかるくなる

あるきだす

いきている

雨の日

今日の雨はきれいでしたね

しずかにつめたくふりつづく

時間がわからなくなるような

きれいな雨が降りました

この雨の日がひとつの点です

そのまえとそのあとを

くぎるひとつの点となります

境界線をぼかすように

きれいな雨が降りました

長い旅だから

長い旅だから

つぎの道しるべも

すぐには見えない

きのうと

あしたと

夢をつかって

旅をつづける

地面と

空と

風をつかって

旅をつづける

ともだちよ

もうすぐだ

言葉はいかが

言葉はいかが

甘くつめたく

のどごしの良い

言葉はいかが

突然の雷のような

わすれられない

言葉はいかが

子供のなみだをぬぐう

ゆりかごのような

言葉はいかが

あしもとを照らす

夜のあかりのような

言葉はいかが

クリームソーダ

ひさしぶりに

クリームソーダをえらぶ

ちいさなころのおでかけを

おもいだしたりするために

おかあさんのきいろのワンピース

わたしのちいさなサンダルのおと

はしのむこうには

いちょうのきがあった

ほんとうにこのよに

あのけしきはまだあるのかしら

あのはしをまたわたることはあるかしら

まだ先です

意味は

つみかさなる時間に

ひっそりとしのばせた

古い手紙のよう

読まれる日は

まだ先です

ぎゅるり ぎゅるりりり

ぎゅるり　ぎゅるりりり

電線で燕が鳴いてる

車は走りひとは歩き

自転車はとばしてゆき

そしてわたしは飛びつづける

ぎゅるり　ぎゅるりりり

わたしがちいさなたまごから

うまれて鳴いていた頃に

確かにこのざわめきのなかで

全力でいつも待っていた

ぎゅるり　ぎゅるりりり

わずかな時間の羽繕い

あのまるいちいさないえのなか

まるくてちいさなものたちが

わたしをいつも待っている

そこにいるのはわたしである

どのような天気であろうと

どのような気持ちであろうと

どのような人と出会おうと

どのような場所に行こうと

そこにいるのはわたしである

うまれたときからわたしである

わたしのことがすきであろうと

わたしのことがきらいであろうと

わたしがわたしをなげだしたくても

そこにいるのはわたしである

手に一本のクレヨンもって

手に一本のクレヨンもって

道路にらくがき

壁にらくがき

窓に天井に階段に

お庭に門に大きな木に

走る車に飛ぶ鳥に

浮かぶ雲に青空に

どんどん描こう

らくがきしよう

いっぽん線をひくだけで

この世の中は変わるから

とびら

おもしろいもの

みつけるために

とびらをあけて

ここへきたのさ

ああ　

おもしろかった

と　おもったなら

つぎのとびらをさがす

あたりまえのことさ

　

原っぱのなか

原っぱのなか

雀が一羽

かくれてみたり

とびうつったり

高いところから

飛びこんでみたり

ひとりではしゃいで

遊んでいたら

草むらのむこうに

ともだちみっけ

おおよろこびで

近づいてみたら

あげは蝶が一羽

原っぱのなか

ひらりひらりと

飛んでいた

たいせつなひとの記憶は

たいせつなひとの記憶は

わたしのお守り

わたしの鎧

わたしの剣

わたしの冠

たいせつなひとの記憶は

わたしの靴

わたしの舟

わたしの星

ときには

ときには

たくさん

わがまま

言おう

ときには

きらいと

はっきり

言おう

ときには

だいすきなものだけ

えらぼう

ときには

じぶんが

どんなひとか

思いだそう

好きな山にのぼるんだ

決めたのなら

今この地点が

はじまりになる

ほんの一ミリでも

すすむことだ

のぼる山は

じぶんで決める

高いか低いかじゃない

好きな山にのぼるんだ