花のよろこび

花は開いて

よろこびを放つ


この道に漂う幸福感は

ここに咲く花のもの


この道に漂う安らかさは

ここに咲く花のもの


ひとは受け取り

よろこびを抱く

住まい

窓から樹が見える部屋がいい

鳥の声が聞こえる場所がいい

近所に犬がいるといい

角にとうふ屋があるといい

季節の花が咲くといい

忙しくない街がいい

ちょっと奇妙も味のひとつと

許してくれる場所がいい

天気予報は見ないけど

雨ならば　大好きな傘を持っていこう

晴れならば　大好きな靴をはいていこう

つまりは　大好きなものがあればいいだけ

おんなじようにくりかえす

陸地がうまれ

かたちを変えて

生きものがうまれ

生きものがたたかい

新しい生きものがうまれ

嵐がおきて

花が咲いて

くりかえしくりかえし

失っては　つくりあげ

くりかえしくりかえし

日がのぼり日がしずみ

月が満ちて欠けてゆく

星の時間にも

人の時間にも

樹の時間にも

虫の時間にも

一つの泡の時間にも

おんなじように　くりかえす

花

この一日は　みずからが

たぐり寄せたひとひらの花

送り出す花

迎え入れる花

花は　風で散ることはなく

咲ききることで　散るから花

お祝い

日々を祝う

生きている　を　祝う

きのうは知らなかったひと　を　祝う

二度と会わないひと　を　祝う

新緑　を　祝う

チューリップ　を　祝う

すれ違う猫　を　祝う

電柱で遊ぶ雀　を　祝う

変わりゆくこと　を　祝う

樹は歌う

古木の幹から

咲きこぼれる花

ごつごつした根もとの

窪みで遊ぶ小鳥

ひとり静かに樹は歌う

重低音のハミングで

風がなくても葉が揺れる

不安定な風

力がうまれたら

じっとしていられなくて

ただ　行き場を探す

風も　同じだろう

振りかえると　草木がなぎ倒されている

そこでやっと　走っていた　と　気づくのだ

すくすくと

こどものように

そのままに

泣いて

笑って

すくすくと

おばさんになり

すくすくと

おばあさんになる

この毎日が旅ならば

この毎日が旅ならば

わたしたちの

帰るところは

どこだろう

ずっと前に

いってきますと

旅に出た

その場所は

どこだろう

旅の記憶は

わたしたちに

なにを刻むのか

刻まれたことばは

わたしたちを

どこへつれてゆくのだろう

新しい靴

新しい靴を買おう

はじめての道のために

小学生に負けないくらい

よりみちいっぱいしてやるぞ

落書きいっぱいしてやるぞ

たっぷり歩いて

たっぷり笑い

たっぷり食べて

たっぷり眠る

新しい靴を買おう

はじめての道のために

ファイティングポーズ

他人の目で見て

他人の顔を見ながら

他人の言葉でかたる

まったくそれでは

おもしろくありません

闘いがいがありません

三つの色

青い色は　海

赤い色は　血

白い色は　再生

明日の朝

明日の朝

早く起きて

樹を見上げて

あいさつをして

出かけます

葉のいろは　今だけ

空のいろも　今だけ

ごきげんな庭

ほしいものは　なあに？

ときどき

大人は　答えにつまる

でも　今　即答できる

いきの良い　植物が

ごきげんに育つ　小さな庭

おひさまと　雨と

ごきげんな　わたしが　

大事に育てる　小さな庭