そんな闘い方もある

遠い景色と空を見る

足もとのてんとう虫を見る

地面をゆっくり踏みしめる

闘う相手は人ではない

そんな闘い方もある

花束をつくってください

花束をつくってください

白だけでなく

淡い色をいれて


花束をつくってください

子守唄みたいな

しゃぼん玉の色で


花束をつくってください

そのひとが　こどもの顔で

笑ってくれる花束を

羽がはえかわる時の小鳥は

羽がはえかわる時には

うまく飛べなくて

頭にくるから

指を見ると

噛みつきたくなる

で　怒られる

だから　こっちも怒ってみる

目を三角にしてみる

頭もかゆいし

丁度良くなでてくれないから

いらいらするんだ

白いつんつんしたものが

頭にあって　変

でも知ってる

このつんつんは蕾

花が開くように

ふわふわになるのさ

そしたら

ふわふわを

撫でてもいいよ

わたしたちは世界を再現する

わたしたちは　世界を再現する

一瞬をきりとる

物語を語る

伝えようと思わなくても

涙で

凍りついた顔で

ほほえみで

スキップで

生きる限り　世界を再現する

生きる限り　伝え続ける

わたしにとって

世界はこのようなものである

蝶のいる景色

小さな蝶が

世のなかを舞う

森を　海を　街を

この世の背景に

一瞬の花を咲かせて

ひらひらとふわふわと

今日もどこかで

飛んでいる

きらきらと 光る

ひざしの中で

きらきらと　

舞いあがる

小さなホコリ

きらきらと

混じることで　光る

きらきらと

動くことで　光る

きらきらと

ぶつかって　光る

きらきらと

祈りながら　光る

ただいま 散歩中です

ただいま　散歩中です

星から見たら　一瞬です

だけど　意外とゆっくりです

どんな道も

自分で歩いてきた道なら

ああ　満足

星から見たら　点のような

この　満足が

砂金のように　光ります

ただいま　散歩中です

今年さいごの西瓜

真夏のてっぺん

もう過ぎた
　
今年の夏にお辞儀する

お名残り惜しゅうございます

今年さいごの西瓜を

味わうことに致します

きっと　喜びというものは

こんな　西瓜　なのです

丁寧に挨拶できれば

よりしみじみと美味しいのです

好きですか

今　カバンの中にあるもの

好きですか

引き出しの中にあるもの

好きですか

部屋のカーテンは

窓から見える景色は

好きですか

あなたが食べているもの

好きですか

あなたが飲んでいるもの

好きですか

あなたが選んだものは

好きですか

あなた以外の多くの人が　

そんなことは意味が無いと言ったとしても

負けないくらい　好きですか

ひとつ 物語をここに

ひとつ　物語をここに

みんなが目をみはるような

大事件は出てこない

でも　毎年渡る鳥たちも

同じ鳥ではありません

物語の背景には

空を描きます

湧きおこる

気象のような変化を拾い

湿度で濃く立ちこめた

草花の香りを集める

誰の署名もないような

山から飛んできた綿毛のような

古くからあるおとぎ話を

ぽつりぽつりと語りたい

ひとつ　物語を　ここに

絶対に良いこと

どうにかして　

なんとかして

ありつづける　こと　

それは

絶対に良い　こと　なのだ

誰が何を言おうとも

絶対に良い　こと　なのだ

花が咲く　ように

赤ん坊がほほえむ　ように

絶対に　良い　ことなのだ

乾杯しよう

乾杯しよう

昨日の記憶に

乾杯しよう

明日の景色に

乾杯しよう

今いる自分に

誕生日ではないけれど

お祝いだ　お祝いだ

乾杯しよう

知っているひと

乾杯しよう

知らないひと

みんな　みんな　もれなくみんな

お祝いだ　お祝いだ

空はいつも空

空は　いつも　空

あなたが立つ場所に

どんな風が吹いていようと

空は　いつも　空

青い空に一筋の雲

滲む雨雲の灰色

月を浮かべた墨色

同じ色のままではいられない

常に変わり続けることで

空は　いつも　空

秋 もうすぐ

カブトムシ　

ひまわり

飛んでゆくアゲハ

花火があがる

海も山も空も

それぞれの

光の頂きを

一瞬で飛び越えて

秋　もうすぐ　

遠い道を走り

遠い道を走り

家に帰る　

遠い道を走り

記憶をたどる

遠い道を走り

小さな頃よりも

もっと　もっと昔へ

記憶が揺れる

遠い道を走り

旅してきた道と

これから歩く道の

ちょうど真ん中

小さな蝋燭に火を灯す