ものにも魂が

ものにも魂というものがあるだろうから

好きだからと持ち歩いていれば

そうかそうか好きなんだそうかそうかと

ほくほくと幸せなものになってくれるだろう

持ちものがきげんが良いといいな

ものとヒトが仲が良いといいな

新しい地図

新しい地図を描く

渋い蕎麦屋

ひとなつこい犬

池に沿った散歩道

美味しいパン屋

古い洋館

鯛焼き屋

立ち話してるおばあさん

気にいった場所を

ぶらぶらと歩き

じぶんもまた

地図の一部になってゆく

明日の地図はまたひとつ

なにかが増えていきそうな

冷たい手

温かいうつわを持ち上げて

手の冷たさに気がついた

この手のひら

知ってしまったね

物語のはじまり

お姫さまも王子さまも

旅に出る若者や

知恵で闘う娘

冒険にでかける動物たち

どんな物語も　つまり

みんなみんな　宝さがしのお話

さあ　この世界のどこかで

またひとつ　ほらまたひとつ

物語の　はじまりはじまり

ひとやすみする

山に登るときだって

休憩なしじゃいかないだろ

ひとやすみする

道は長いだろ

歩ききるためには

立ちどまらなきゃ

まわりの景色を見わたさなきゃ

行きたい場所に

たどりつくためにね

幼なじみ

懐かしい

痛いほどに

人混みのなかで

振り返る

おもかげは

百年前の幼なじみ

いまどこにいても

いま誰であっても

おなじ笑顔

おなじ首の傾き

自分が誰だったか

思い出せないけれど

あなたが助けてくれたことは

忘れない

秋がいま

秋がいま　

光を横切り

落ち葉を揺らし

走っていった

枝の小鳥が息ひそめ

後ろ姿を見送った

花は決めた

まるで荒野　

そう見えても

花は生きてる

絶対に咲くと決めた

醍醐味

毎日いかがおすごしですか

まあまあですか　そうですか

それはまた　結構なこと

でも　人には祭りが要るものです

綿菓子も林檎飴も心が浮き立つ

お小遣い握りしめて選ぶのは楽しいこと

でも　自分の神輿を担いでみる

これがやっぱり　醍醐味です

おとなになって

おとなになって

やっとわかった

みんなそれほど

おとなじゃない

おとなをそとにもとめるな

ほんとのおとなをよびさませ

一つだけ選んでいいなら

一つだけ　選んでいいよ　と

神さまが言うなら

きげんが良い　を　選ぶ

見えるものまで　すてきになるから

旅をするひと

旅をするひとがいました

川の流れに驚いて

海というものに絶句して

夜の暗さにおののいて

星の光を知りました

命ひとつで旅をして

生きた日の数　それぞれに

生きてる人の数　それぞれに

違う景色があると知りました

すさまじく　満ちてゆく

美しいものが　見えました

ぴかぴか

にこにこしながら

ばいばいと言える


いくらでも歩けるよう

靴のひもを締めて


ポケットには

新しいカギ


明日は

いつもぴかぴか



にこにこしながら

はじめましてと言える

淡々とした星

明日の天気がどうであれ

わたしの気分がどうであれ

星の動きは淡々と

じぶんの道をすすむだけ

光を届けていることに

気づかぬように淡々と

じぶんの道をすすむだけ

きれいなものをみつけたら

何かひとつ

きれいなものを

みつけたら

刻みつけておく

記憶という傷

傷あとがだいじ