つづきを歩いているのです

あの物語のつづきを

歩いていること

思いだすまでに

ずいぶんかかりました

手わたされた時間と

いくつもの物語をもって

いつもどおりに

空をみながら

歩いているのです

どちらもおなじ夜の底

静かな夜の底

ひとつの石ころは

月をみあげます

聞こえるのは

森の樹のざわめき

遠い水のうた

夢とほんとうは

どちらもおなじ

むかしといまは

どちらもおなじ

ひとつの石ころ

ひとつの星

どちらもおなじ

どちらもおなじ

世界は

世界は

理解はできませんが

うけとめて

あじわうことはできます

世界は

ばらばらのかけらですが

組み合わせて

あたらしく創ることはできます

このまえみた空みたいに

ああ　わたし

うそつきだな　

みないふりしてること

いっぱいあるな

どんな人になりたいかは

わからないけど

このまえみた空みたいに

のびのびと雲を浮かべて

ひろい青い空

あれがいいな

ああじゃなきゃだめだな

そのうえに星がいる

風がごうごう吹いている

そのうえに星がいる

雲がどんどん流れてく

そのうえに星がいる

時がびゅうびゅう走ってく

そのうえに星がいる

洗いつづける

日々が洗う

足を前にはこび

両腕で時をかき

からまるよどみを

洗いつづける

うまれたときの

たましいになるまで

ひかりかがやくまで

洗いつづける

ノートを一冊

まだ残っていた朝顔の

まわりをトンボが飛んでいる

その上をゆく飛行機が

軌跡を白くつけてゆく

こんなにあかるい青だもの

そうだ

ノートを一冊

新しくしよう

季節のとおりみち

ぽこりぽこりと

景色にまじる赤や黄

季節のとおりみちを

いま歩いている

空の青に落書き

あれは白い雲だよ

鳥が一羽空を渡っていくよ

鳥がみおろす景色に

みあげるわたしがいるよ

季節のとおりみちを

いま歩いている

はじまり

あたらしくて

さびしくて

からっぽで

いっぱいで

つめたくて

あかるくて

はじまりは

そういうもの

物語はうまれる

たくさんのひとの記憶

たくさんのひとの夢

たくさんのひとの物語

息を吸うたびに

わたしたちはとりこみ

息をはくたびに

わたしたちはてわたす

風で地上をめぐりながら

物語はひとつになり

また旅をして散りながら

いくつもの物語がうまれる

たくさんのひとの

ひとつの物語に

朝がまたやってくる

旅の景色

旅をする

はじめて

そして

さいご

いつでも

一度きり

金木犀が昨日で香る

雪があしたをつつみこむ

今日はどこかで散歩中

よりみちしたいな

よりみちしたいな

もちろん

けいかくなんか

たてちゃいけない

もくてきも

あってはならない

ともだちがいたら

なおいいな

おやつがあれば

すてきだな

あるいているこのみちでなく

わきにあるちいさなみち

ちかくにあるはらっぱ

すこしくらいもり

そのさきにあるものを

さがしにいきたいな

空が青いよ

空が青いよ

あしたは

どんなかな

高いビルの窓から見る空は

ずうっとむこうまで

空なんだ

どんなことも

ずうっとむこうまで

つながってる

空が青いよ

道を渡る蝶

横断歩道を

蝶がひらひら

渡っていった

きみの名前は

わからないけど

気をつけていくんだよ

わすれない

遠くにいっても

わすれない

そのままじゃないけど

変わらない

おなじ季節に見た花を

そのときみた背中を

わすれない