風が通りすぎる
ああ
しあわせ
草原で寝ていた
ヒトではなかった自分も
おなじことを思った
雨があがるとき
はしゃいだ自分は
どんな生き物だっただろう
ああ
なつかしい
風が通りすぎる
ああ
しあわせ
草原で寝ていた
ヒトではなかった自分も
おなじことを思った
雨があがるとき
はしゃいだ自分は
どんな生き物だっただろう
ああ
なつかしい
小鳥よ 小鳥
おまえの羽はなんのため
空を飛ぶため
風をきるため
宝ものをいだくため
小鳥よ 小鳥
おまえは首をかしげて答える
わたしの羽をつくったのは
わたしではないのです
羽がどうしてあるのかも
わたしがどうしているのかも
どうしてわかると言うのでしょう
小鳥よ 小鳥
おまえの羽は
近くで歌を聞きたいと
空があたえたものだとか
わたしはひそかに考える
小鳥はもいちど首かしげ
空へと高く飛んでいく
歌いながら飛んでいく
こころは
ちいさないきもので
よわむし
つよがり
いじっぱり
あまえたいのに
へたくそで
どこへむかうか
わからずに
いつもゆらゆら
ゆれている
こころは
ふしぎないきもので
だれかのいいなりは
ゆるせないけど
だれかのためしか
うごけない
月がでるまでまだだから
夕焼けすぐに消えるから
いま目の前に見えること
それだけを見ていよう
きのうはきのうで終わりだし
あしたはなにも決まってないし
いまこの時にいることを
宝と知っているのなら
ほんとに知っているのなら
なにかは出来るはずだから
いま放たれた矢
飛べ
飛べ
勢いと
夢だけで
行きたいところへ
飛んでいけ
それだけが
新しい伝説をつくる
それだけが
新しい思い出をつくる
だれにも
征服されないように
じぶんの旗をかかげてる
いちばん好きな色で染めて
いちばん好きなかたちを描く
旗をかかげて舟を出す
星をたよりに旅に出る
いちばん好きな言葉をえらび
いちばん好きな唄を書く
一緒に歩いた道が
なつかしいものになるだろう
一緒にいた時が
いとおしいものになるだろう
わたしたち ほんとうは
そのためだけに
生きているかもしれない
すべてが
震えながら
ここにある
震えながら
わたしたちは
変わっていく
おなじ星で
遠くにいるひとたち
いつ会うともしれない
変わりゆく互いを
かすかな波紋で
知るこの夜
小鳥が一羽いるだけで
ちいさなあかりと
ちいさな唄と
ちいさな望みが
そこにある
小鳥が一羽いるだけで
空と地面のあいだには
いくつも線が描かれる
風に吹かれて流されて
それでも線をまた描く
雨が小鳥の羽をあらう
小鳥は身震いしたあとに
空を流れる雲をみる
あの雲どこからきたのだろう
雨のあがった地面では
小鳥がぴょこぴょこ跳びはねて
ひざしの中で歌ったあとに
空をみあげて考える
あの雲どこへいっただろう
きれいなもの
すがすがしいもの
やわらかいもの
あたたかいもの
かろやかなもの
とうめいなもの
ほんとうにすきなもの
それは
すべてこれから
はじまるあたらしいもの
なにもかも
であうべきもの