花は咲いている

歩く

のんびりしたり　

急いだり

ときには　とまって

空を見たり

そして　また

歩く

気がつくと

季節が変わり

空の色が変わり

違う花が

咲いている

いつでも　

季節の花が咲く

その次の季節も

また次の季節も

花は　ずっと咲いている　

風のいる場所

風というのは

すてきなものです

でも　

宝ものみたいに

しまっておけません

それは　風ではありません

透けてる こころ

透けてる　こころ

ころころ　こころ

きらきら　こころ

ぱりぱり　こころ

ふわふわ　こころ

はらはら　こころ

ゆらゆら　こころ

透けてる　こころ

醍醐味

恐れない　と　

宣言を　するときの

この　小さな身震いは　

生きる　醍醐味

わたしとあなたのかたち

花が　咲く　とき

きっと　あなたを　思いだす

星が　出る　とき

きっと　あなたを　思い出す

わたしは　わたしの　かたちで

あなたは　あなたの　かたちで

めぐる　時間の　なかに　いる

よくきたね

いつのまにか

椿が　咲きこぼれ

サクラソウが　風に揺れ

たんぽぽまで　みつけた

よくきたね　　春

いつも　気がつくと　そこにいるんだね

ひとつの言葉

ひとつの言葉は

焚火か

刃物か


救いと破壊が

その中にある


ひとつの言葉は

握りしめずに


この世に出して

旅に出す

知らない道を歩いたら

知らない道を歩いたら

知らない花が咲いていて

知らない鳥が鳴いている

知らない山を目印に

知らない橋を渡ったら

知らない人と会ったので

知らないわたしを知りました

眠りのなかで

おやすみ

涙を流したひと

おやすみ

泣く場を奪われたひと

おやすみ

笑顔を失ったひと

おやすみ

必死に笑うひと

すべてのひとは

眠りのなかで

落としたかけらをみつけてる

割れたこころをなおしてる

はじめての花

こんなに静かな樹だけれど

こんなに古い樹だけれど

咲くのは　いつも　はじめての花　

咲くのは　いつも　あどけない花

うねる古木にさざめく声は

まだかな　まだかな

もうすぐ　もうすぐ

桜の花は　開く日を　待つ

はじめての花が　開く日を　待つ

星の理由

あの星は

何を語りたいのでしょう

星になるまえは

なんだったのでしょう

遠い遠いところから

ここまで光を届けたい

理由がきっとあるはずです

月光

満月

あなたが心を決めたから

あなたの光が痛い


春はもうすぐくるでしょう

月夜のあかるい土の上

草木が囁きあっている


満月

あなたは一心に

光を行き渡らせている


満月

あなたは目を開き

ひとつも見落とすまいとする


春はもうすぐくるでしょう

あきらめたものが違うかたちで

芽吹くときがくるでしょう

ビオラのきょうだい

朝がきた

ビオラのきょうだい

まぶしくて目が覚めた

日ざしがくすぐったいんだよ

ふふ　くふふ　ふふふふふ

くっつきあってはしゃいでる

ふふ　くふふ　ふふふふふ

ビオラのきょうだい

ときどきなにか歌ってる

見えない根っこも笑ってる

泣きはらしたお月さま

お月さま

ぼんやりと

霞がかかって

ふくらんで


お月さまも

泣いたのね


見おろす景色に

泣いたのね


泣きはらした

お月さま

聞こえる？

聞こえる？


小さな芽が

よいしょ　

よいしょ　

右に左に

揺れながら

大きくなっていく音


聞こえる？


水のなか

たまごのなかで

稚魚が　ぴくん　と

からだの向きを

変えた音


聞こえる？


もうおとなだと

ながいこと思っていた

たくさんのひとたちが

こどもの頃

憧れたおとなとは

どんなひとたちだったのか

弾けたように　

思いだした音