ほら
景色のすみっこに
ふるい家があるでしょう
緑の屋根と古い玄関
八重桜の古い樹
庭から見える月が好き
行ったこともないのに
知っているの
窓はちいさくて
硝子は桜のもようです
机に置かれた本を
開いてみて
そこに書かれた唄を
知っているの
引き出しに入っている
古い金色の鍵を
知っているの
そして
これからアルバムに
貼られる写真も
届く手紙も
こわいほど濃い夕日も
つぎの桜も
なつかしくて
涙がこぼれるほど
知っているのよ
ほら
景色のすみっこに
ふるい家があるでしょう
緑の屋根と古い玄関
八重桜の古い樹
庭から見える月が好き
行ったこともないのに
知っているの
窓はちいさくて
硝子は桜のもようです
机に置かれた本を
開いてみて
そこに書かれた唄を
知っているの
引き出しに入っている
古い金色の鍵を
知っているの
そして
これからアルバムに
貼られる写真も
届く手紙も
こわいほど濃い夕日も
つぎの桜も
なつかしくて
涙がこぼれるほど
知っているのよ
鳥は飛ぶ
きのう見た夢の地図
伝えられた物語
ひとりではない
空を巡る星を頼りに
鳥は飛ぶ
からだがきえたあとも
風に翼を預けて
唄とともにこの空の
どこかで飛んでいる
空はきれいだな
雲はきれいだな
青と茜の
その境目の秘密
雲からみえる大きな月
神さまがつくった
この場所はきれいだな
知らぬまに涙こぼれる
街のあかりはまるで
ひっくり返した宝箱
そのなかでわたしは
ひとときもとまらない
世界にみとれてる
ごらんよ 空を
ルドンの月だよ
水をたたえた風がはしるよ
ごらんよ 空を
ルドンの月だよ
夢とうつつの壁がとけるよ
時の並びも書きかえられて
墨いろの絵がうかんで消える
月の旅とわたしの旅
道がわずかに近づいて
ひかりが前を照らすから
ひとあしだけでも踏み出して
道をさがしてみようかな
小さな星をともだちにして
ひとあしずつで道を刻んで
いけるところまでいこうかな
青い絵の具で
大きなそらを描く
白い絵の具で
雲を描く
そして
光を描く
鳥を描く
そらを見上げる
いきものを描く
なにを描いてもいいことを
しあわせと言うのだろう
命令するな
行き先を決めるな
だれかが決めたご褒美よりも
わたしが望むものがほしい
こころからの言葉を
まっすぐ云えることを
しあわせと言うのだろう
これから
海を渡る
ちいさなきみへ
きみの羽はこれから
風を知るだろう
じぶんの小ささに
はじめてきづくだろう
きみの眼は空から
世界を見るだろう
たくさんの色と
たくさんのかたち
たくさんの命を
見ながら旅をするだろう
海を渡る
ちいさなきみへ
きみの目的地は
あたらしい陸地と
あたらしいきみ
朝起きて
窓をあけて
はじめて見える景色を変える
きっと
ときどき泣くだろう
だけど
やっぱり笑うだろう
あしたがあるのは
きょうがあるから
きょうがあるのは
きのうがあるから
おひさまのぼれ
小鳥ようたえ
あしたのわたしよ
行きたいほうへ
あしたのわたしよ
生きたいほうへ
秋の朝の道は
さくさくと音がします
赤い木の葉は氷菓子
鳥の声まで透明です
ちいさなころに公園で
落とした赤いミトンの手袋
みつかりそうな気がします
なにものでもない
なまえがつけられるような
なにものでもない
なにかがなしとげられるような
なにものでもない
たにんにわかりやすいような
なにものでもない
こころぼそく
けれども
しばられず
空の月のように
なにものでもない
花 咲きますか
鳥 歌いますか
ひと 伝えますか
生きていれば
自然に向かうかたち
生きていれば
あたらしい朝が
どんないきものも
包んでくれる
ゆだねることだけが
わたしのできること
灯をともす
はるか遠くの
孤独な旅人が
帰るところを思いだして
あと一歩すすめるように
隠れた月のかわりに
闇をほんのり照らし
道があることに気がつくように
今夜も灯をともす