理由はそれだけ

ほら　あそこに

樹が見える

こんもりと緑かさなる

小高いところ

風に揺れる葉の音を

聞きたい

樹の下を目指す理由は　

それだけ

会いたかった

ここまできた理由は

それだけ

燕の季節

丸いあたまの

健気な姿が

あんなにも正確に

美しい線を描いて

飛ぶ

飛ぶ

飛んでいる

今年も街にやってきた

燕の季節がやってきた

しあわせなことだ

じぶんの

あたまのなかにあったものを

じぶんで

かたちづくる

しあわせなことだ

じぶんが

ぜったいにつくれないものが

じぶんがくらす

このよのなかにある

しあわせなことだ

ひとつのうた

よるべなく　ひとつ

まぎれもなく　ひとつ

せつなく　ひとつ

くらべようもなく　ひとつ

はてしなく　ひとつ

かぎりなく　ひとつ

たんぽぽが咲くように

何かになるのでなく

じぶんであることは

たんぽぽが咲くように

あたりまえのこと

１ｍｍでいい

１ｍｍでいいんだ

かならず１ｍｍ

手のなかの羅針盤で

さがしあてた路に近づく

夜の雷雨

決めた　決めた

今夜は荒れるぞ

気がすむまで

大声あげて泣いてやる

じだんだ踏んで泣いてやる

夜の雷雨はそういうものです

果てなく見える海にも

果てなく見える海にも

向こう岸がある

灯りがある

星はあなたを見ているよ

あなたの祈りは届いているよ

きれいね

きれいね

緑いろ

地面には

花びらの模様

手のひらに

花びら一枚

落ちてきた

見上げると鳥

蜜をつついてる

ああ　きれいね

終わりながらはじまり

いろんなものが

つながっている

きれいね

みっけたよ

みっけ　みっけ　

みっけたよ

いちばんいいもの

みっけたよ

みっけ　みっけ

みっけたよ

だれのものでもないものを

ぴったりのもの

みっけたよ

かみさまからのおくりもの

わたしのほんとう

みっけたよ

青空って 贅沢

青空って　贅沢

誰かのものにできないほど　贅沢

飾りつけできないほど　贅沢

とどめておくことができないほど　贅沢

咲く 咲く さくら

咲く　咲く　さくら

咲く　さくら

ひとつひとつの花びらが

ひとつひとつのこころから

ただただ深く満ちたりて

風に　たゆたう

空に　ほほえむ

いま　この　ときの

幸福を　はなつ　花

咲く　咲く　さくら

咲く　さくら

ちいさな猛禽と同じように

ちいさな猛禽が

獲物をさがす

高い樹のうえから

草原をみおろす


同じように　世界をみる


ちいさな猛禽が

獲物をみつける

目がとらえたら

知らぬ間に急降下して

爪のなかに捕らえ

放すことはない


同じように　世界をとらえる


それは　生きるため　だから

それは　生きること　だから

雀の歌

雀たち

ごきげんだね

みんな揃って

朝の歌

まるいからだが集まって

木の実のように鈴のように

枝を揺らして歌ってる

そうだね

朝はすてきだね

きらきら

水底の小石 きらきら

ひなたに舞うほこり きらきら

見えない星 きらきら

見えない気持ち きらきら

海の砂 きらきら

硝子のかけら きらきら

思い出 きらきら

傷も きらきら

宝もの きらきら

足跡が きらきら

いとおしい きらきら