かならずたどりつく

ものがたりが

どんな筋書になろうと

どんな登場人物に出会おうと

主人公がたどりつくもの

時代で呼び名が変わっても

おなじものにたどりついて

おなじことをしている

それが使命

それが役割

なんども生まれ変わっても

どんなにみじかい一回でも

かならず近づいている

かならずたどりつく

景色

ああ　ぴかぴかだ　きらきらだ

うまれてきたのは光だね

ああ　ふかふかだ　つやつやだ

いきつづけるのは水なんだね

ああ　ひろがるね　ちらばるね

はなれていてもつたわるね

ひとつもすべてもつながるね

その傷が

その傷が

誰かを救う

蝶の模様のように

それぞれ違う傷で

美しく飛ぶ

意味なんか

どうして

せせこましく

意味なんか

さがすんだろ

朝がくること

星が光ること

芽吹くこと

意味なんか

いらない

自転車みたいだ

自転車

ころんですりむいて

ちょっと泣いて

なんども繰り返して

そうやって乗れた

これは自転車みたいだ

あの嬉しさは

いちばんのご褒美

よくばりだから

たくさんご褒美

もらうつもりなんだ

夏 終わるのかな

夏　そろそろ　終わるのかな

大きなひまわり　見たかったな

浮き輪　どこにいっちゃったかな

ひび割れたじょうろ　

小さなサンダル

バケツの横の線香花火

夕立のあとの土のにおい

スイカ　くわがた　サルビアの赤

蝶の姿が見えなくなった

夏　やっぱり　終わるのかな

昔話のように

昔話のように
出発してごらん

まずは荷物をまとめて
ちいさな鞄ひとつで
靴ひもを結んで
旅に出るところから

一本道はそのうち
ふたつに分かれるだろう
切り株にすわり空をみて
小石を投げてみたりして
どちらかを選ぶだろう

急ぐこともなく
歩きつづけるだろう
小鳥はうたうだろう
雲は流れるだろう

そしてひとつの街に
暮らすことになるだろう
毎朝でかけて
毎晩帰って
おなじドアをあけるだろう

たくさんの人に会って
知れば知るほどに
涙を流すだろう
許せないくやしさ
たまらない喜び

ほめられることを
いちばんの支えにはできないと
いつの日か
知るだろう

大きな木も
小さな花も
ほんとうは違いはないのだと
いつの日か
知るだろう

ひとりのひとも
ひとつの星も
ほんとうは違いはないのだと
いつの日か
知るだろう

その旅はいつか
静かに幕がとじるだろう

ひとりの物語がおわったあと
つぎのひとり
そのつぎのひとり
たくさんのひとの物語が
はじまるだろう

昔話のように
いつまでも
いつまでも
続くことだろう

かわるものをもってる

羽はないよ

だけど

羽にかわるものを

もってる

力はないよ

だけど

力にかわるものを

もってる

永遠はないよ

だけど

永遠にかわるものを

もってる

ポケットにつめて

なつかしいも

あたらしいも

ぜんぶ

ポケットにつめて

歩いていく

ポケットのなかで

ちゃりんちゃりんと

いとおしいが

うたってる

編んでる

いま　編んでる

こつこつ　編んでる

ちまちま　編んでる

みえない糸を

編んでる

たどりつくと信じて

編んでる

目覚めてるときも

眠ってるときも

編んでる

時があるかぎり

編んでる

あさってのスキップ

まだなんにも起きてないけど

先に嬉しくなってしまった

だってもう

あさってのわたしが

楽しげに待っている

これから背負うリュックに

ともだちにあげるお菓子

スケッチブックとクレヨン

白紙に宝の地図を描こう

スキップしてでかけよう

大真面目

大真面目に遊ぶ

そのためには

好き嫌いとか

山や谷とか

思いがけないことが

たくさんあると

盛り上がる

遊びのさいごに

ああ　面白かったと

言うために

わたしは今日も

大真面目である

月により桃

暮れてゆく空を見たら

もうすこしで熟れる月

ということで

帰りに桃を買いました

マティスのジャズ

色がうたう

マティスのジャズ

知らない色

嫌いな色

いごこちわるい色

それが

いちばん好き　

になってる

大声で泣いて

たからかに笑う

ぜったい壊れない

マティスのジャズ

ぎいこぎいこと舟を漕ぐ

ぎいこぎいこと舟を漕ぐ

むこうの岸のあの灯り

めざしてこうして舟を漕ぐ

ぎいこぎいこと舟を漕ぐ

波がずいぶんはこぶ日も

波があっさりかえす日も

ぎいこぎいこと舟を漕ぐ

かたちもあてもない明日へ

飛びうつろうと舟を漕ぐ