一番いいものを
ぽんと与えられても
手のひらをすりぬけて
どこかに消えてしまう
一番いいものを
ほしいと願っても
強く握りしめて
壊してしまう
一番いいものを
誰かに渡したくて
抱えて運ぶとき
そのひとの手のなかで
ほんとうにあたたまる
一番いいものを
ぽんと与えられても
手のひらをすりぬけて
どこかに消えてしまう
一番いいものを
ほしいと願っても
強く握りしめて
壊してしまう
一番いいものを
誰かに渡したくて
抱えて運ぶとき
そのひとの手のなかで
ほんとうにあたたまる
つめたい空気のそのなかに
たくさんのひとの
たくさんのいきものの
生きてきたあかしが
みえないあかしが
旅人のように
この世界をめぐり
わたしたちは
街を歩きながら
遠い昔の彼方の鳥や
言葉をもたない人々の
記憶の一部を呼吸する
雪 ふるかな
あの 白い ひらひら
ふるかな ふるかな
雨音が聞こえなくなったら
外をみてごらん
雪 ふるかな
あの 白い ふわふわ
ふるかな ふるかな
まいにち
うそをついて
暮らしています
ほんとうの蓋をあけるのは
そろそろだろうと知りながら
無意味にとっても生真面目に
うそをついて
暮らしています
月がまあるくなる夜は
あしたの先のもっと先
思い描いてみる夜だ
月はいつでもそこにいた
わたしがうまれるそのまえの
ちがう名前だった日も
まるい顔してそこにいて
だれがなにしていようとも
ぽっかりそこに浮かんでた
夜起きている動物も
ふと目をさました赤ん坊も
おんなじように月をみて
おんなじきもちになるんだろ
月のひかりにくるまれて
おんなじ夢をみるんだろ
一本の糸を
こつこつと重ねて
満ちたりたきもちが
織られていきます
こころひかれることと
だれかのためということが
交差したときに
しあわせが織られていきます
じぶんを描く
やわらかい鉛筆と
だいすきな色で
のびのびと描く
お日さまにまもられ
お月さまにまもられ
いとおしいものは
たからものと知る
じぶんをみつめて
じぶんを描く
はじまることはおわること
おわることははじまること
くるくるとつながりつづき
おおきなながれのなかで
えいえんとなるならば
いまここでえらびとることに
かくごをきめることでしょう
みえているのに
みつからなかった
ほんとはずっとあったのに
おまじないの一言で
霧がはれていくこともある
先延ばしにしていた旅
懐かしいはじめての場所へ
むかしむかしのものがたりへ
靴のひもを結びなおそう
かなしいお話を
ひとつひとつ
ひろいあつめて
花束にします
かなしみが
すこしでも
かるくなり
いつかきっと
羽のように
ふわふわと
空にのぼり
長いときのなかで
きがつかないほど
淡い透明に
なることをいのって
なにはさておき
祝うことにする
なにを祝うか
それはあとから
きれいな月
夜ふる雪
おいしいサンドイッチ
夕焼け
新しい靴
思いだした夢
祝うために
この日はある
祝うために
わたしはいる
きれいな水です
さらさらと流れて
日をうけてかがやき
空とおなじ色です
生きもののなかにも
水は流れて
からだがうける光と影と
こころがうけるあらゆる波を
うけとめてつつみこみ
静かに流れつづける
世界を流れつづける
めぐりつづける
きれいな水です