旅立つ日

風が吹いた

ああそうだ

旅立つ日がきた

こんなふうに

突然にやってくる

鳥が飛ぶように

雲が走るように

ひかりを連れて

朝がくるんだ

鳥のゆきさき

旅する鳥の

ゆきさきは

いつかみた

雪ふるところ

星の地図が

ひろがるところ

いっせいに

花が咲くところ

雀の朝

駆け抜けた嵐のあとの

眩しい朝に

大はしゃぎの雀たち

夏がもういちどきたみたいに

呼び合わずにはいられない

そうだねこれは

ゆうべの嵐を耐えた

きみたちの朝だね

だれだって

いきものは

だれだって

できることを

するまでさ

うかんだことを

うたうだけ

からになるまで

いきるのさ

ぐるぐる

ぐるぐる

まわりみち

しらないみちを

あしあとでなぞる

ぐるぐる

さんぽみち

しらないあしたを

もうそうでえがく

ぐるぐる

かぜのみち

ずっとずっとさきの

ちじょうをめぐる

おなじじゃない

どこで見る空も

ひとつだけれど

おなじじゃない

なにをしようと

わたしだけれど

おなじじゃない

満ちる秋

満ちる秋

夕焼けの縞は消えて

空は紫へと

いまはもう

夜空の雲のむこうに

かくせない月のまるさ

時刻む音がきこえる

きのうはもう別の本のなか

なにもかもこれは

ひとつのものがたり

照らしてちょうだい お月さま

照らしてちょうだい

お月さま

芽をだしたばかりの

やわらかいみどりの群れを

眠っている森の一匹を

水底でひそやかに光る小石を

窓辺にいるわたしのともだちを

思い出のなかの古い大きな樹を

照らしてちょうだい

お月さま

金色の月

ねえ　みてみて

金色の月

どかんとおおきな

金色の月

雲があろうがなかろうが

絢爛豪華な金色に

まわりの空を染めながら

ゆっくり高くのぼっているよ

それぞれの雲

海のうえ

山のうえ

どの場所でも

それぞれの雲

かたちのちがう雲が

空にうまれて

きえてゆく

ひとの時間も

雲の時間も

きっとおなじ

ぷかぷかと空を流れて

ちがうかたちになるまで

秋なんだな

あ　夕焼け

ひさしぶりに見たな

電車の窓ごしに空をみて

駅について買い物してお店から出ると

けっこう暗くなっていて

月が雲をまとっている

あ　そうか　もう

秋なんだな

月が満ちるまであとなんにち

もう　秋なんだな

よろこぶひとよ

よろこぶひとよ

そのつまさきから

そのかみのけから

よろこびが

ひかりのつぶとなって

ゆくさきざきで

よろこびのあしあとになり

よろこびののこりがとなり

ひかっているよ

青

ひろいね　

どこまでもいけそうだね

ふかいね

どこまでも沈んでいきそうだね

つめたいね

てざわりまで透明だね

あついね

炎のなかにある色だからね

風船の旅

ちいさな風船が

おひさまにあこがれて

空まで旅していくのをみたよ

せつめいなんかできないけれど

どうしても行きたいんだって

あしたの方向

きのうは

もうあんなに遠い

あしたの方向

どっちだろう

風と波と星のままに

この舟のゆくままに