旧長崎英国領事館は、在上海英国政府建築課技師ウィリアム・コーワンの設計により、
長崎英国領事館本館として1907年(明治40年)に竣工した西洋館で、
大戦中の1942年(昭和17年)頃まで当初の用途で使用された。
1955年(昭和30年)に長崎市の所有となり、児童科学館の施設となった。
その後1990年(平成2年)に国の重要文化財に指定され、
1993年(平成5年)から新しく開設された長崎市野口彌太郎記念美術館の施設となった。
経年劣化により修復が必要となってきたため
2007年(平成19年)に同美術館は移転、建物は閉鎖されて現在に至っている。
敷地は北側の道路に面した側を正面とする。
敷地正面は煉瓦塀で区切り、この塀の左右端近くに
それぞれ1か所ずつの出入口を設ける。
左の出入口を入って左側には門番所がある。
敷地手前側に本館が建ち、その奥には南北棟の附属屋、
最も奥には南側の道路に面して職員住宅が建つ。
このほか、本館東側に仕切門、職員住宅西側に別棟の便所がある。
本館、附属屋、職員住宅の3棟及び土地が重要文化財に指定され、
煉瓦塀及び石塀(計4棟)、本館東側仕切塀、
職員住宅便所が附(つけたり)指定となっている。
本館 - 煉瓦造2階建。外観は煉瓦積を基調に、要所に白色の花崗岩を入れている。
東・北・西の3方は1・2階ともベランダを設け、
東西の側面は1・2階ともアーケードとするが、
北側正面は1階をアーケード、
2階は2本1組のイオニア式柱を3組入れたオーダーとする。
創建当時の内部は、1階が領事事務室、応接室、食堂等の公的部分で、
2階を居室としていた。
附属屋 - 煉瓦造、平屋建。屋根は瓦葺きで、
創建当時は厨房のほか、ボーイ、コック、クーリー(苦力)などの控室になっていた。
職員住宅 - 木造2階建+煉瓦造2階建。東側を煉瓦造、西側を木造とし、
木造部分には畳敷きの部屋を設ける。
旧長崎英国領事館は、附属建物や塀も含め、創建当時の状態で保存されている。
また、建築時の設計図や仕様書が残されており(長崎歴史文化博物館保管)、
日本近代建築史、外交史のうえで貴重な遺産である。