フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

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ヘンリー8世と6人の妻 THE SIX WIVES OF HENRY VIII

2005-10-16 09:01:34 | 出会い

  "DIVORCED, BEHEADED, DIED, DIVORCED, BEHEADED, SURVIVED"

ヘンリー8世の6人の妻の運命を歌った RHYME だという。この話を知ったのは、先日杉本博司のエッセイ集 「苔のむすまで Time exposed」 の中にあった 「不埒王の生涯」 を読んだ時 (2 octobre 2005)。そして数日前に、juil さんに何と 「ヘンリー八世の六人の妻」 という音楽まであることを教えていただいて、少しまとめてみようという気にさせられてしまった。向こうの人にとってはおそらく常識なのだろうが、。

Henri VIII (1491-1547)

(1) キャサリン・オブ・アラゴン Catherine of Aragon (1485-1536) [married 1509- divorced 1533]
(2) アン・ブリン Anne Boleyn (1500?-1536) [married 1533-1536 executed]
(3) ジェーン・シーモア Jane Seymour (1509-1537) [married 1536-1537]
(4) アン・オブ・クレヴス Anne of Cleves (1515-1557) [married January 1540-divorced July 1540]
(5) キャサリン・ハワード Katherine Howard (1521-1542) [married 1540-1542 executed]
(6) キャサリン・パー Katherine Parr (1512-1548) [married 1543-widowed 1547]

(1) スペインの王室出身のキャサリン・オブ・アラゴンは、1501年16歳でヘンリー7世 (ヘンリー8世の父親) の長男アーサーと結婚するが半年後にアーサーが死亡。その後、1509年にアーサーの弟ヘンリー8世と結婚。しかし男児には恵まれず(死産流産を繰り返す中、生き残った子供は後のメアリ1世 = Bloody Mary だけ)、その理由を自らが兄の妻と結婚したためだとして離婚を決断。ローマ教皇の許可なく離婚できるようにするためローマと決別し英国国教会を設立 (国教会は基本的にカトリックの伝統を維持しているが、ローマからは独立した存在と捉える方がよいのか。歴史はこの程度のことで大きく動くようだ)。1533年離婚成立。彼女はその3年後失意のうちに亡くなる。

 結婚期間: 24年 (ヘンリー8世、17歳-41歳;キャサリン、24歳-48歳)

(2) アン・ブリンは14歳から6-7年フランスの王室で働きイギリスに戻る。彼は王宮で働いていたアン・ブリンを見初め、妊娠を機に1533年秘密裏に結婚。エリザベス (後のエリザベス1世) を生む。その後二度妊娠するも死産で、ついに男児は得られず。彼女と離婚するのではなく、不貞や王殺害を計画した罪などをでっち上げ、彼女は裁判の後1536年に処刑される。

 結婚期間: 3年 (ヘンリー8世、41歳-44歳;アン、33歳-36歳) 

(3) アンの処刑後11日で結婚したジェーン・シーモアはこれまでの妻とは異なりおとなしい女性だったようだ。結婚1年後に男子、エドワード (後のエドワード6世) を生むが、お産の合併症で亡くなる。彼女は王妃になることはなかったが、ヘンリー8世は彼女を心から愛していたようで、ウィンザー城の聖ジョージ教会の墓地で彼女の横に眠っている。

 結婚期間: 1年半 (ヘンリー8世、44歳-46歳;ジェーン、27歳ー28歳?)

(4) ローマとの決別もあってヨーロッパから孤立していたイギリスの状態を改善するため、側近たちはドイツとの連携を画策する。ジェーンの死後、2年ほど独身を通していたヘンリー8世を政略結婚させようというのだ。宮廷画家のハンス・ホルバイン Hans Holbein をドイツに派遣してクレヴス公爵の二人の娘の肖像を描かせる。王が選んだのは姉のアン。しかし実物を見て愕然とし、結婚をやめようとするが時すでに遅く、結婚はするものの半年後に離婚。

 結婚期間: 半年 (ヘンリー8世、48歳-49歳;アン、25歳)

(5) アンと結婚しているうちから5番目の妻となるキャサリン・ハワードを見初めていたと思われる。アンとの離婚後16日でアン・ブリンの従妹でもあった彼女と結婚。王は肥満と死ぬまで苦しむことになる脚の潰瘍で歩くこともままならなかったという。一方キャサリンは若く活動的。結婚前から付き合いがあったという男との関係を理由に処刑される。

 結婚期間: 2年 (ヘンリー8世、49歳-51歳;キャサリン、19歳-21歳)

(6)前妻の処刑の1年半後にヘンリー8世の最後の妻となったのは、すでに2度結婚して夫を亡くしていたキャサリン・パー。メアリ、エリザベス、エドワードの3人の子供を、メアリより4歳だけ年上であったにもかかわらずよく育て、王の看病にも尽くした。晩年の王にとっては最良の妻であっただろう。ヘンリーの死後、結婚前からの意中の人 (?) トマス・シーモアと結婚するが、お産の肥立ちが悪く亡くなる。1年半ほどの結婚生活だった。

 結婚期間: 3年半 (ヘンリー8世、52歳-55歳、キャサリン、21歳-25歳)

まさに人間の欲望が生の形で表れていた時代。当時の医学のレベルを垣間見ることもできる。事実は小説よりも奇なりで、今でもひとびとの想像を掻き立てているようである。

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リック・ウェイクマンの音楽も聴いてみた。70年代のプログレッシブ・ロックとのことだったので、耳に入ったことがあるかもしれないという期待も込めて。しかし、初めての曲で、この主題とどのように繋がるのかをつかむのは難しかった。いずれ、先入観なしに場所を変えて聞いてみたい。

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5 コメント

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Unknown (リカ)
2005-10-17 00:14:35
こんばんは。

やはり6人の妻たちではアン・ブリンが気になる存在ですが、どの女性も数奇な人生だったようですね。

それにしても、ヘンリー8世の肖像画は一度見たら忘れられないインパクトがありますね。
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bonsoir (paul-ailleurs)
2005-10-17 01:20:23
コメントありがとうございます。

ヘンリーの人生を見てみると、逆に女性の生き方のタイプが見えてくるようです。アン・ブリンは若いときにフランスの宮廷に出向いていますので、フランス語も操ったようです。ただあざや腫れ物があり、当時の美人の基準であった色白で金髪、青い目とは程遠く、胸も小さかったという記述があるそうです。王は最初彼女に愛人になることを求めたらしいのですが、彼女は拒否、結婚に至ります。王は結婚してしまうとアンに対する関心を失ってしまったという記述もあるようです。



エリザベスは生んだものの、男の子が生まれず苦しんだようです。今も昔も変わらないのでしょうか。側近の考えもあり、彼女の周りの男が次々に捕らえられ、最後は彼女が。裁判の結果、証拠がないにもかかわらず裏切りなどの罪で死刑になる。



とにかく大変な時代だったようです。昔を振り返るといろいろなことが見えてきます。少し余裕を持って現実を見ることができるようにも感じます。



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TBありがとうございます。 (juil)
2005-10-17 02:02:21
リック・ウェイクマンもお聴きくださったとのことで、興味をもっていただいてありがとうございます。



もう30年ぐらい前のアルバムですので、私の方は、LPのプレイヤーが調子が悪く、全然聴いていないのです。



そうですね。私も確かに彼女達と曲のつながりはそんなに感じられなかったかもしれません。

彼がこれをテーマにした理由やそれぞれの妻達にどのようにインスピレーションを得たのか訊いてみたい気がしますが。
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余談ですが (juil)
2005-10-17 02:16:42
偶然なのですが、神奈川県民ホールで「詩と音楽」というシリーズをやっていて、11月は「イングリッシュ!~シェイクスピアからワールドランゲージへ」というテーマで、古楽からロックまで演奏や朗読などの舞台の催しがあります。



このプログラムの中に、なんと、ヘンリー8世の「気の合う友と過ごすのが」という曲がありました。



気に入らない妻を次々に離婚、処刑したというイメージと裏腹に、「ヘンリー8世は芸術家としても知られた」とチラシに書いてありましたが、どんな曲なのか、先日アン・ブーリンの曲を聴きましたので、これも聴いてこようと思っています。

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繋がる時は繋がるものですね (paul-ailleurs)
2005-10-17 19:35:38
ヘンリー8世は才能とエネルギー溢れる人で、お話のように音楽や詩などをものしたようです。かの有名な「グリーンスリーブス」が彼の作という話もあるそうで、驚いています。いろいろな建物(オックスフォードのクライスト教会、ウェストミンスター寺院、キングズカレッジのチャペルなど)も建て大きな足跡を残したようですが、大食漢で人生を楽しむ bon vivant とでも言うべき彼の私生活が人の心を引き付けるという面もありそうです。ヘンリー8世の音楽、またレポートをお願いします。

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