フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

エルネスト・ルナンの生涯 ERNEST RENAN (III)

2007-03-22 03:09:39 | 海外の作家

ルナンも老境に入ると若き日に思いを馳せるようになる。1883年(60歳)、最も有名な本になった “Souvenirs d’enfance et de jeunesse” 「幼少期の思い出」 を発表。その年までに 「キリスト教の起源」 を書き終え、新らたに 全4巻となる 「イスラエルの歴史」 “Histoire d’Israël” を書き始める。最初の2巻は64歳と68歳で出版されるが、残りの2巻は亡くなった後になった。この本には誤りがないわけではないが、教義は別にして信仰心 (la piété) は必要であるという彼の思想が最も生き生きと語られている。晩年、レジオン・ドヌール勲章 (グラン・ドフィシエ Grand-Officier、大将校) を始め、幾多の名誉を手にした。最後は数日の病の後に亡くなり、モンマルトル墓地に葬られる。享年69。

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彼は、科学と無私の精神 (le désintéressement) に魅せられていた。宗教との関係は複雑で、「科学の未来」 には次にようなことを書いている。

« Quand je suis à la ville, je me moque de celui qui va à la messe ; mais quand je suis à la campagne, je me moque au contraire de celui qui n’y va pas. »

「私は都会にいる時はミサに行く人をからかうが、田舎にいると逆に行かない人をからかう」

それから科学と神の関連については、以下のように考えていた。すなわち、科学は宇宙において知りうるものすべてについて明らかにするだろう。それに対して神は完全で全的存在といえるだろう。その意味で、神とは今ないもので、生成の過程にあるもの (il est en voie de se faire ; il est in fieri.) 。しかし、そこで終っては神学は不完全なものになるだろう。神は全的存在以上のもので、絶対的なものである。数学、形而上学、論理学と同様の理法のものであり、理想の場、善きもの、美なるもの、正しきものの生きた原理である。そのように見るとき、神は永遠、不変で、進歩もなく生成が完成することもない。

彼はダーウィンの自然選択説が発表されると直ちに賛意を表した。また、人種差別的な考えも表明しているようである。ただ、彼が書いていることを当時の時代背景に置き直して検討しないと、このシリーズのきっかけになった対論でフィンキールクラウト氏が言っているように、遠く離れた現在から過去を見て自らの道徳的優位に満足するだけに終るのであろう。

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  ひょんなところから、ルナンさんと長く付き合うことになってしまった。
  場所が変わったことのよい影響かもしれない。

コメント
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