フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

ジョン・ケージ JOHN CAGE - UN ESPRIT LIBRE

2005-08-23 23:57:21 | 自由人

一週間ほど前の日曜日に Bunkamura でジョン・ケージのCDの衝動買いをした。

John Cage: Early Piano Music
John Cage: The Works for Violon, Vol. 3

どうして手が彼のCDに向いたのか考えていた。70年代後半に初めて長期滞在したアメリカのボストンにいて、体の周りがすべてアメリカの空気に包まれ、ある種の恍惚感に浸っていた。この街に行って1週間のうちに見つけた書店で買った本のひとつに彼の « M: Writings 67-72 » があった。その時も気になる存在であった彼の考えを知るべく買ったものと思われるが、じっくり読んだことはなかった。その余裕がなかった。おそらく、記憶のどこかに軽い罪悪感のようなものがあり、彼の名前を見た時に何かを刺激したのかもしれない。

彼は現世に適応できなかった Erik Satie に共感を持っていたという。彼も時代の流れを横目に見ながら、自由な心で独自の歩みを続けたようだ。どこか何か違うな、と思って生きている人は哲学者になるのだろうか。古代ギリシャ人のように、物事の本質を見極めようとするのだろうか。

彼の音楽をこの夏休みに初めて意識的に聞いてみた。コンサートホールや部屋で聞いてもおそらく自分の中には入っては来なかったであろう。人の溢れているところや人工的なところには馴染まないような気がした。大自然の中に身を置いて、囚われのない心でいる時に彼の音楽がすんなりと入ってくる。沈黙を通して時間や自然を音楽にしたようにも感じた。

今回、彼の音楽をゆっくりと時の流れるお休みに、しかも自然の中で聞いたということは、私にとっては幸運であった。彼の音楽をさらに聴いてみようという気にさせてくれたのみならず、彼の考えを、彼の人生をもっと知りたいという欲求が湧いてきている。同じ日に Brian Eno に目が行ったというのもなぜか不思議なつながりを感じる。

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話は少しずれるが、John Cage の本 "M: Writings 67-72" をパラパラとめくっていると、買った当時のレシートが出てきた。本屋は Paperback Booksmith、日付は 28 July 1976 で、$4.25 になっている。ちなみにアマゾンで見ると今では $18.95。さらに、bookmark まで挟まっていて、そこには吉田兼好の次の言葉が引用されている。

"To sit alone in the lamplight with a book spread out before you, and hold intimate converse with men of unseen generations -- such is a pleasure beyond compare. (Yoshida Kenko "Essays in Idleness" 1340 A.D.)

こんな小物が何とも言えない懐かしさといとおしさを呼び覚ます。

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(PS)兼好の文章をフランス語で読むと、

Solitaire, sous la lampe, c'est une joie incomparable de feuilleter des livres et de se faire des amis avec les hommes d'un passé que je n'ai point connu. (Urabe Kenkô « Les Heures Oisives » Gallimard/Unesco)

コメント (2)
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