フラメンコ超緩色系

月刊パセオフラメンコの社長ブログ

しゃちょ日記バックナンバー/2014年05月①

2014年05月01日 | しゃちょ日記

                                
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2014年5月15日(木)その1644◇新旧対談

きわめて優れたバッハ弾きがいる。

アンドラーシュ・シフ。
1953年ハンガリー出身のピアニストで、なきグレン・グールド同様、
バッハのキーボード曲のほとんどを録音している。

シフが2009年に再録音した『パルティータ(組曲)』は、
彼の最高傑作ではないかと私は想う。
いまから26年前、シフ30歳のハツラツとした最初の録音(1983年/デッカ)も
驚異的な出来映えだったが、ECMからリリースされた再録音には執念にも似た凄みがある。

六つある組曲のうち、第二番(ハ短調)と第三番(イ短調)が
この四十年ばかりのお気に入りだが、
近ごろはシフの新旧両盤の聴き比べがわくわくと楽しい。
30歳旧盤の全体像を淡い水彩画とするなら、
56歳新盤のそれは濃厚な油絵である。

両盤ともに、技巧を技巧と感じさせない超絶技巧は、
彼の音楽性と完璧にシンクロしている。
その意味ではエバ・ジェルバブエナが近い。
一方、多数舞曲を含む各楽曲のテンポや音色や装飾音については、
旧盤・新盤はまるで別人が弾いてるかのようだ。デビュー間もない頃の
アントニオ・ガデスと晩年のガデス以上の違いがある。

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旧盤は楽譜に忠実だが、新盤は彼の信念に忠実だ。
表現と共感度の深さなら、圧倒的に新盤を採りたい。
だが近ごろの私は好んで、
旧盤における青春期の彼の心情を懐かしく聴くのである。

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2014年5月15日(木)その1643◇夢判断

青い空、白い雲、美しい海岸線・・・そしてイカそーめん。

港のベンチに腰掛け、なぜか私はイカそーめんを喰っている。
足元ではジェーが、浅いお椀の中の生シラスをむしゃむしゃ喰っている。
私も生シラスを喰いたいと思う。

すると沖の方からこちらめがけて小舟がやって来る。
GパンTシャツの連れ合いが笑いながらやって来る。
彼女の肩にはなぜか真っ赤な酢ダコが乗っている。

尻尾をプルプルさせながらジェーは、
小舟から降りる連れ合いに駆け寄る。
すかさず私は、彼の喰いかけの生シラスを指でつまんで口に放り込む。
シャリッと妖しい食感!・・・と、そこで目が覚める。

ついさっき見た夢をこうしてPCに写しながら、
フロイト的あるいはユング的にはどう夢分析できるかを考えるのだが、
おれ的には単に好物の生シラスが喰いてえだけなんじゃねーかって薄々気づいてる。 

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2014年5月14日(水)その1642◇ごみんな星人

ソソソミ♭ーファファファレー♪

ベートーヴェン交響曲第五番ハ短調(運命)。
買ったばかりのアイポッドにカルロス・クライバーによるあの凄演を入れ、
ここ数日パセオの往き還りに聴いてる。
フラメンコで云うなら、アントニオ・ガデス『血の婚礼』の精度に近い。
つまり鬼のような快演なのである。

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初演当時は現代ハードロックのように聞こえたであろうこの名曲を、
『運命』というタイトルで呼ぶのは日本だけだという。
そのネーミングによってレコードは売れまくり、ベートーヴェンおよびこの『運命』は、
日本におけるクラシック音楽の代名詞となった。
ネーミングした担当者は、当時こう絶賛されたことだろう。

「うんめえ!」

              あっ、ごみんなせえ(汗)
                     

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2014年5月13日(火)その1641◇肝心要

相手がルールを守らないのに、こちらがルールを守り続けることを
「猿を相手に紳士のゲームを続ける」と云う。
紳士は猿にならない。
猿が紳士になるの待つのだ。
「じゃあ、猿が噛みついてきたらどーする?」
そりゃあ君、ハンティングというゲームに変わるだけのことだよ。

イギリスの英雄、首相チャーチルの有名語録。
鼻持ちならないプライドがぷんぷん匂う。
だが、彼の語録の中でもうひとつ、いやいやながら認めざるを得ない現実がある。

勇気がなければ、他のすべての資質は意味をなさない

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2014年5月12日(月)その1640◇男女の友情

「男女の間にも友情は湧く。
湧かないと思っている人は友情をきれいなものだと思い過ぎている。
親密感とやきもちとエロと依存心をミキサーにかけて作るものだ。
ドロリとしていて当然だ」

『人のセックスを笑うな』で2004年に文藝賞を受賞した
山崎ナオコーラ(1978年~ )さんの名言。
若いころなら「?」だったかもしれないが、
水気が抜けてくると感覚的にわかったりする。
まあ、気性のいいおっさんみたいな女性群に包囲されてるせいもあるだろう。
そりゃさておき、儒教的な締めつけ感を嗤う、
ナオコーラさんの着想の広がり感は参考になるな。
         
「やらせろや」「十年早いわ」。
こんな会話を三十年も続けていると、
たしかに友情らしきものが芽生えることもある。

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2014年5月12日(月)その1639◇ラジオ生出演

エフエム世田谷の生放送「パコ・デ・ルシア追悼特集」で、
十分ちょっと喋くり終えたところ。
パコを二曲流してくれるというので『二筋の川』と『アルモライマ』をリクエストした。
後者は特にパセオ創刊を後押ししてくれたナンバーだから想い入れが深い。

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さて。本日月曜はパセオ7月号のスリリングな追い込み。
夜はプリメラのチコさん、エスアイイーの林さんと呑み会。
年に三回、順番で勘定を持つ仲良しおやぢトリオの例会なんだが、
一回おごると二回おごってもらえるので嬉しい錯覚を味わえる。

前回は林さんのホストでカニサレス夫妻を招き、
新大久保の焼肉屋でドンチャカ騒いだが、
今晩は私が勘定当番なので、高田馬場の赤提灯で
質素にしてつつましい呑み会をささやかに設営したいと思う。
                        
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2014年5月11日(日)その1638◇精神分析

ご近所呑み友アキラにもらったアイポッドがぶっ壊れた。

仕方ねえので新品購入、この機に曲目を大幅に入れ替えた。
寄る年波で根気が失せ、しばらく長い曲を聴いてなかったので、
気分一新シンフォニーや協奏曲や室内楽、
それとパコのアルバムと古典落語を多めに入れた。
時間は食うが、選曲するプロセスで昨今の精神状況を分析できるメリットは大きい。

 ☆あなたは前向きですが、ムラがあり過ぎます。
 ☆あなたは暗い人ですが、その暗さを持続できません。
 ☆あなたは真実を愛する人間のクズです。

・・・自己分析は気が滅入るので、しばらくお休みしようと思った。

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2014年5月11日(日)その1637◇爆笑王

この日の師匠は、最初から最後まで客席の空気を108%つかんでいた(税込)。
落ち着き払った彼のおとぼけ言動のひとつひとつが客席に波乱と爆笑の渦を巻き起こした。
おかしな例えだが、本場のフラメンコにヒケを取らない大沼由紀や森田志保のステージとの
共通項が顕著であり、場の空気をつかみ動かすというのはこういうことだと改めて知った。

きのう土曜は三宅坂の国立演芸場。
笑ろた。徹底的に笑ろたわ(大笑い)。

このおっちゃんが近くで呑んでるだけで周囲はほんのりした安堵に包まれるという人生の達人、
チャーリーカンパニーのリーダー、ご近所呑み友の〝師匠〟が第一部のトリで出演。
正月の新宿末広亭でこの師匠の芸の真髄を思い知ったが、
今回はいわゆる「ドッカーン!」が連続するネタで前回の十倍くらい笑った。

若き日の師匠は浅草の爆笑王デンスケの愛弟子であり、
あの爆笑手法を現代に蘇らせる抜群のセンスは、
カンテフラメンコのミゲル・ポヴェーダの懐かしい芸風を連想させる。
お通夜の一コマを描くその日の爆笑コントは、
若手お笑いアンジャッシュの得意とするねじれ手法であり、
「デンスケ~師匠」の伝統がアンジャッシュに継承されている事実もまた痛快だった。

ところで・・この日の興行は師匠の所属するボーイズバラエティ協会の創立五十周年公演。
落語界の大御所、四代目三遊亭金馬の笑える祝辞もイカした。
その口上コーナーで、チャーリー師匠がボーイズバラエティ協会の理事長に就任することを知る。
しばらく理事長職が空席だったのは、理事長になると
その一年後に他界するというケースがあまりに多かったためらしい。
おしまいの祝辞はこう締めくくられた。

「チャーリー師匠の一年後が楽しみでもあります」・・・(汗)

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2014年5月10日(土)その1636◇成長の証明

「人生が解ってきた」

四十代でそう思った。
その錯覚に気づくのに三年かかった。

五十代で今度こそ本当に解った。
そして、その錯覚に三日で気づいた。

つまり私はモーレツに成長を続けている。

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2014年5月9日(金)その1635◇国際的ダンサー

フラメンコ公演忘備録番外編 「超弩級のフラメンコ魂」(井口由美子)
今井翼出演/バーン・ザ・フロア Dance with You 日本公演
5月3日(土)/東京公演(渋谷)東急シアターオーブ


彼の守護心・美輪子にチケットを取ってもらって
バーンに出掛けたのが一年半前。
銭の獲れるダンサーを目の当たりにし、
その日本代表ダンサーがフラメンコにハマったことに震えた。

それから間もなくスペイン国立バレエ公演で彼とバッタリ出会い、
直接パセオフラメンコ連載を決めた。
超多忙な彼の対談連載は一年続き一段落するが、
ラスト取材の折に「次回」を約した。

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2014年5月9日(金)その1634◇おそるべき科学性

ずっと前に読んだ時には正直ウザい説教だと感じた。
いま読めば、その正確極まりないマザーテレサの科学性に
手遅れながらもひれ伏す。

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思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。

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2014年5月8日(木)その1633◇母の屈託

活気はあるがどこか殺伐とした雑踏。
得体の知れぬ恐怖とむず痒い好奇心。
ふんと笑って無関心を装いたい街の夕暮れ。

おそらくここは池袋あたり。
私の手を引くのは母だ。
どうやらバスに乗り遅れたらしい。

西陽に向けて、ふたりはトボトボ歩いてる。
ぼくたちは何処に行くんだろう。
めずらしく母は何も喋らない。

池袋に親戚はいない。
どうして駒込や尾久に行かないのだろう。
めずらしく私も喋らない。

ただそれだけの夢だが、記憶が妙に鮮烈だ。
見渡す情景はおそらく昭和三十年代半ば。
私はたぶん五歳くらい。

いつ見た夢かも思い出せない。
あるいは現実だったのかもしれない。
いつも明るい母の意外な屈託。

いまの私なら話相手になってやれた。
だが幼い私はメンコや駄菓子に夢中だった。
遅ればせながら、古びた写真に問ふてみる。

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2014年5月8日(木)その1632◇失楽園

彼もまた不死身の人だと思い込んでいたので、
そのたび旅立ちには驚いた。

ずっと気になる巨匠だったが、その著作の半分ほども読んでない。
思想哲学には共感するが、どこかしっくりこないところがある。
マスコミ訃報の中に中国では爆発的人気作家とあり、
なるほどそのザラッとした大陸的な感覚が違和感の原因だったことに思い当たる。

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儒教倫理に縛られ小ぢんまり硬直する日本の若者たちを彼は叱った。
もっと自由奔放で在れと。
それを「もっとフラメンコで在れ」と云い替えることも可能だろう。
小説の発行部数からしても、その大陸性パラノイアは多くの日本人の憧れだった。

島国根性の幾つかの特性を肯定したい私にとっても、
渡辺淳一さんの著作はこの先のスリリングな楽しみとなるに違いない。合掌。

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2014年5月7日(水)その1631◇十年一剣

「くだらねえ日記を、まあよくも毎日書くもんだよなあ」

連休も何のそので今日もパセオに出てくると、こんな私信が届いてる。
ほとんどの友人は性格が悪くてこういう率直な暴言を平気で吐くから、
私の耳にはタコができている。
まあ、当然おれの方にも云い分はあって、
実を隠そう「日記は毎日の素振り」なのである。

パセオにもいい描き手が多数育って来たので、
近ごろは本来の社長業や営業にシフトしつつあるが、
それでもドタキャン等の変事に備えいつでも即座に書ける状態はキープしたい。
つまり、毎日の素振りは欠かせないのだ。

ミスタージャイアンツ、かの長嶋茂雄師匠は観客席を沸かせるため、
熱心に「華麗なる空振り」の練習をしたという・・・ん、ありゃ、
「十年一剣」を主張したかったのに、ちょっと話の趣旨が違くなってるし (?_?)

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2014年5月6日(火)その1630◇男と女

愛する映画や小説、音楽や絵画、ヒーローや友人・・・。
惚れた理由をあれこれ考えることは、意外と楽しいことだと知った。
そこで整理した物語は、残り少ない未来を
いっそう充実させる手掛かりとなるかもしれない。
帰納法&演繹法による合わせ技一本狙い。

ならば、かつて惚れた女性についてもあれこれ考えてみようと思ったが、
あることに気づきそれを断念した。
すなわち、猛烈にアタックをかけ、カスることなく即座に撃沈を喰らう
そのあまりに定番的な早期結末の数々が、
物語の成立を不可能にしている事実に気づいたからである ( ̄▽ ̄)

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2014年5月6日(火)その1629◇みじかくも美しく燃え

『Elvira Madigan』。
邦題は『みじかくも美しく燃え』。

「妻子ある伯爵の陸軍中尉とサーカスの美しい綱渡り芸人は愛し合い、
やがて二人は駆け落ちする・・・」
1889年(明治22年)北欧での実話をもとに、
その78年後に制作された1967年スウェーデン映画。

萌える青春期にそのテレビ放映を観た。
甘く切ないありふれたストーリーだが、
日本で云えば明治時代の実話と知って印象深く記憶した。
ラストシーンは後にあの世界の北野もパクった。
『曽根崎心中』的来世観の救済がない代わりに、
作品自体は音楽に救われている。
主人公たちの心象風景をテーマ曲に重ね合わせることが出来れば、
哀しいばかりの物語ではない。

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メインテーマはモーツァルトのピアノ協奏曲(21番ハ長調のアンダンテ)という意表の選曲。
世界中のモーツァルティアンを味方につけ、
同時にこの曲はあのレクイエムやト短調交響曲に並ぶ人気ナンバーとなった。
グルダやルプーやバレンボイムなど歴史的名盤が多々あるが、
昭和42年公開のこの映画ではハンガリーのゲザ・アンダが手堅く弾いている。

何年か前、好ましいセンス・教養にあふれるウェブ上の愛人から
この名作DVDをプレゼントされた。
まだお会いしたこともない彼女はコードネームを「春海」という
おそらくは三十そこそこの貴婦人(たぶんスペインとフランスのハーフ)で、
さらにおそらくはジャケ写の女性とほぼ同一人物かと推定している。

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2014年5月5日(月)その1628◇ネバーギブアップ

ティム・ロビンスとモーガン・フリーマン。
1994年公開だから、もう二十年も経つ。
当初の興行収入は赤字だったというが、
今でも世界中の人気映画ランキング上位の常連だ。

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「あきらめない物語」そして「極限状態における友情」は
やはり軽々と国境を超えるようで、そのこと自体が頼もしいよねえ。
        
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2014年5月4日(日)その1627◇誰にも似てない

「感じるか、感じないか」

その意味ではフラメンコによく似ている。
だが、この音楽のノリはフラメンコとはほぼ対極にある。
どちらも、生理的もしくは精神的に合わない人なら、それ以上接する意味はない。

「その音楽は誰にも似てない」

フレドリック・ディーリアス。
ドイツ人である彼(1862~1934年)はイギリス北東部に生まれ、
北欧や北米を放浪した末、パリ郊外の美しい村で作曲に没頭する。
彼の音楽は穏やかでモラトリアムで、
そのとりとめのない美しさはほとんど天国的ですらある。

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アイポッドのシャッフルからディーリアスの田園音楽が鳴り出すと、
突然路上で立ち止まり途方に暮れることもままある。
その作品は音楽史上「イギリス近代」に分類される。
昨晩触れたフランス生まれの英国人サマセット・モームがそうであったように、
彼もまた世界中を楽しませるコスモポリタンだった。

島国イギリスはヨーロッパにあってヨーロッパ的ではない独自性がある。
島国日本にもアジアであってアジア的ではない独自性がある。
イギリスはそこにプライドを持っている。
日本はまだまだ自己嫌悪が強いが、そういう優れた内省能力を含め、
新たなヴィジョン・プライドを持つ時代が来ていると想う。

私が選んだのはフラメンコだが、
そのように流れるための大河の一滴となるイメージは、
歳とともに明快さを増している。
ミミズだってアメンボだって、オイラだって。
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2014年5月4日(日)その1626◇猛毒注意

「愛の反対語は憎悪ではなく〝無関心〟である」

私たちの世代はマザーテレサではなく、
サマセット・モームの人気短編『レッド』からそれを学んだ。
サルトルと並んでモームは当時の流行だったから、
ミーハーな私も大学一年の春から夏にかけてその翻訳を三十冊ほど読んだ。

ウィリアム・サマセット・モーム(1874~1965)は、
パリ生まれのイギリス人小説家・劇作家。
第一次大戦では軍医として、のちに秘密諜報部員として活躍して、
007ジェームズ・ボンドのモデルにもなった。
皮肉で狷介な性格も有名で、
若い私もそういうウィリーの猛毒をよくよく吸収してしまったらしい。

最近はあまり読まれないが、1970年代にモームは世界中で愛読された。
とにかく読み出したら面白くて止まらない作家で、
日本で云うなら鬼平の池波正太郎師に似ている。
面白さの他には何も残さない近年のスタイリッシュな小説とは異なり、
自分なりの価値観を形成する上でかなり有力なテキストと成り得る質があって、
そうした普遍性は現在でも変わらないと想う。

昨秋あたりから藤沢周平、乙川優三郎、関川夏央などを
繰り返し深読みするマイブームが続いているが、バランス的にも
久々に国際基準で愛される文学にシフトするタイミングなのかもしれない。
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2014年5月4日(日)その1625◇逆転の技術

日曜午前のNHKテレビ将棋を久々に満喫。

戦型は地味だが、若手強豪同士のスリリングな攻防は、
まさしく金の穫れる将棋だった。
フラメンコに例えるなら、静かにしかし熱くうねるタラントの深淵。

澤田真吾五段の腰のすわった冷静な反撃には、彼の生き様そのものが視えた。
劣勢の中、一手30秒に追い込まれながら繰り出すシャープな技の連続は、
彼の日常のトレーニングをそのまま反映しているかのようだ。

時間も足りない、持ち駒も足りない、
何もかもタラントよ。
・・・私の嘆きは愚痴に過ぎない。

締切と資金繰りに追われながらも、決してあきらめることなく最善手を選び続ける。
澤田五段の指し手はそういう毅然とした勇気と行動をガッツリ具現化していた。

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2014年5月4日(日)その1624◇やったね!

やったねトンチュー!

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ナイス・タイムリー!

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2014年5月3日(土)その1623◇しょうぶの世界

「花村さんが死んだよ」

てっきり呑みの誘いかと思いきや、いきなり秋田はそう告げた。
たしか八つばかり私たちより上だった。
花村さんと最後にお会いしてから、すでに四十年の歳月が経過する。
いい想い出ばかり、とは云えない。
あの時もケンカ別れだった。
いま想えば、非は私にあった。

「運は自分で創れ」。
チンチロリンからブリッジまで、彼は私たちのギャンブルの師匠だった。
確かに名伯楽だったと思うが、唯一私はおメガネ違いの駄馬だった。
秋田は早々に足を洗ったが、逃げ遅れた私は一時それでシノいだ時期もある。
そうした放蕩の決算こそがパセオフラメンコの創刊だった。

「葬儀はどうなる?」
「いや、逝ったのは去年だ、高部から聞いた」
「墓は?」
「実家のそばらしい、調べておく」
「・・・呑まなきゃな」
「ああ、世話になった」
「・・・お花茶屋か?」

それがいい、と秋田は応えた。
京成線「お花茶屋」にある花村さんの古びた屋敷の離れが
私たち高校生が寝泊りする合宿所であり、酒も煙草もそこで覚えた。

ふいに堀切の花しょうぶを想い出した。
野郎五人ばかりで、やはり京成沿線お隣りの堀切菖蒲園に出掛けたことがある。
〝勝負〟に掛けた花村さんのゲン担ぎだった。

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2014年5月2日(金)その1622◇厚顔無恥

落語の名人・柳家小三治師匠が受勲した。
CDは全て持ってるし、一時は独演会の追っかけをやってたくらいの熱烈ファンなんだが、
このマエストロの芸風には底知れぬ英知と希望が満載だ。
無理やりフラメンコで例えるならカンテの名人チャノ・ロバートか。

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ところで今回、合計4104人の受勲のうち民間人は1757人で、全体の43%だと知った。
つまり官の受勲が半数以上を占める。
税で食わせてもらう官が国に貢献した民間人に与えるのは当たりめえのスジであり、
その本末転倒の実状に思いきりドン引いた。
                                    
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2014年5月2日(金)その1621◇つまずき

「つまずきは落下を防ぐかもしれない」

自分のことを決してつまずかないタイプの人だと自負する私は、
この優れたイギリスの警句を知ったとき、
ストンストン毎日のように激しく落下する自分の人生の構造を、
ようやく理解するに至った。( ̄▽ ̄)

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2014年5月1日(木)その1620◇イワシと俺たち

獲れたてのイワシを生きたまま地方から中央の料理屋に運ぼうとすると、
そのほとんどが途中で死んでしまうらしい。
水温や酸素なんかの環境を万全に整えつつ運んでもアウトだという。

なんでか?
輸送中の「揺れる環境」に耐えられない、というのがその理由。
では、生きたイワシを遠隔地まで運ぶ方法はないのか?
あるんだそうだ、これがっ!

たくさんのイワシが泳ぐ水槽の中に、
例えばハマチみたいな彼らの天敵を一匹入れる。
するとイワシは、いつ喰われてしまうのかという危機感に戦々恐々としながらも、
通常ではあり得ないポテンシャルを発揮し、
つまりモーレツな生存本能にめざめ、目的地まで元気に生きのびるというのだ!

危機感に煽られることで逆に助かっちゃうという、
実は私たちだって大いに心当たりのある話。
偉いぞイワシ、頑張ったな!
そのあと私に喰われちまうのでなければ、心からの拍手喝采を送りたいところだ。

だけどさ、実はおれたち人間だってあんたらイワシと同じような境遇なんだよな。
この先何かの拍子で立場が入れ替わるなんてこともあるだろうから、
そん時にゃあ覚悟を決めて食われてやるからな。
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