作家 小林真一のブログ パパゲーノの華麗な生活

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【 解説「炎の商社マン」(4)六角専務追放 】

2010-02-18 13:35:01 | ○ 小説「炎の商社マン」

一介の平社員に過ぎぬ者が、繊維部門の総司令官として、
大阪本社に君臨し専務陣の一角を占めている。

しかも本人は、次期社長には自分しかいないとまで自惚れている。

六角天皇とまで呼ばれた男が、中原信介を憎むこと
甚だしくても当然であろう。

あの阿呆を早く放り出せと、連日社内で喚き、あんな馬鹿が
専務でいる限り、当社の近代化は遅れるとも言ってのける。

それも六角本人の耳に入るように図ってのこと。

普通なら、専務職権を持って、クビにこそ成らずに済んだとしても、
金沢なり福井なりの出張所に飛ばされても仕方がなかった。

ところが六角には、中原への報復人事ができない。
ゴマスリの綿糸布部員が何故ですか?と問い糾すのが、
また六角の怒りを呼ぶ。

中原信介は社内にシンパ勢力の拡大を図るよりも、社外の
有名企業の中にこそ、いざという場合に備えた人間関係作りの方を
優先していた。

五菱財閥の最長老による、トーセン本社表敬訪問の形で、
社長・副社長が恐縮してお出迎えした際に、直属の親分、
田中吉三郎が名指しで誉められて、大いに気を良くしたと
同時に、中原の名も社長以下お出迎えの役員たちの
頭脳に焼きついた。

その晴れの舞台に、担当専務六角だけが出席を許されず、
六角は中原を地方店に飛ばすよりも、自身のクビが涼しく
なったことを悟らざるを得なくなったのである。

課長ですらない、一平社員の勝利が明らかになった。
名門と言って良いトーセンの歴史の中でも、こんな快挙は
他に例を見ない。

中原は田中吉三郎の意を受けて、沈滞しきっていた
欧州繊維部に乗り込み、8名もいる部員たちの怠惰な
働き振りを見て、怒りを爆発させ先ず部長兼支店長の
高木を内地に送還させ、六角が後釜にと送りこんで
きた東條をも、早々に送り返してしまった。

良いタイミングで欧州総支配人制度ができて、豊村常務が
ロンドンに赴任してきた。

豊村は化学品・合成樹脂部門の長であったが、管下の
合成樹脂部が弱体で、繊維に所属する中原の樹脂の
取扱高の方が上回る事実を知って、職権上苦情は
述べはしたが、じゃあトーセンの合樹部門で商権確保は
可能なりやと反論され、管下のだらしなさを嘆くしかなかった。

そんな経緯があったから、中原に全幅の信頼を置いた。

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「炎の商社マン」  

    
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