二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

ヴァルハラの乙女 第4話「バルクホルンの憂鬱」Ⅱ

2014-02-21 23:02:27 | 習作SS

で、さらに問題がある。
視線を横にずらし、宮藤芳佳の飛行を見物しているその他ギャラリー陣を見る。

「おいおい、見ろよルッキーニ!!
 宮藤の奴ったら気球を全部壊しちゃったぜ!
 私も散々備品を壊して来たけど着て早々とかは流石になかったぜ、これは負けたな!」

「にひひひ、これは後で始末書だねシャーリー!」

シャーリーとルッキーニのジャッキーニは2人して彼女の下手糞な飛行を見て大うけしている。
というか君たち、散々始末書を書いては何度も反省したはずだけどまったく懲りずに今でも始末書を書いているよね?
そしてエイラ、そして珍しくこの時間帯に起きているサーニャーは2人で仲良く並んで鑑賞していた。

「あ、う……う、うううう???」
「……エイラ?」
「はっ、何でもない!何でもないぞサーニャ!」

ただ、エイラがサーニャと手を繋ぐか繋がないかで、
悶々と悩んでいる所を見ていると相変わらずヘタレ具合は改善されていないようだ。
まあ、それでもエイラーニャ教徒でもあったわたしからすれば十分萌える光景でもあるのだが……ふぅ。

「まったく、坂本少佐が連れてきた新人ですから、
 さぞ優秀な方だと期待しておりましたのに、これでは期待はずれですわ。
 というか、どうして少佐は昨日今日始めたばかりの素人をここに連れて来たのかしら?」

ペリーヌは1人紅茶を片手に宮藤芳佳について論じているようだ。
結構きつい事を言っているが、ペリーヌは坂本少佐一筋だからなぁ……。

「うりゃー!」
「ひゃあ!!?」

あ、ルッキーニがペリーヌの胸を掴んだ。

「どうだった、ルッキーニ?」
「残念賞、成長してなーい。リーネよりちっちゃいまま」
「お、おだまりなさーい!?」

涙目になりながら胸を押さえペリーヌが叫んだ。
ペリーヌに胸の話をするなよ…本人は結構気にしているのだし、
時折同じ歳のリーネや一つ上のシャーリーの胸とか結構ガン見しているのを知っているのだろ?
この間なんか乳が重いから肩がこるなんてボヤいていたら、殺意を込めて睨まれたというのに懲りないなぁ…。

けどまあ、こうして騒がしく過ごすのが一番いいことは確かだ。
度が過ぎれば流石に問題であるが、しかしこの程度ならば問題なかろう。
しかし、そんな騒がしい中で一人だけ沈黙を保っている人物がいる。

「………………」

薄い金髪で一本の三つ編みを後ろに垂らした少女が、ただぼんやりと空を見上げていた。
時折俯き、何かを呟いているが服の裾を震えと共に強く握っているのを見ると、あまり良い傾向とは言いがたい。

彼女もまた、最近第501戦闘航空団に着たばかりの新人で、
優秀なウィッチを自国の部隊に残したいという政治的理由で訓練部隊から直接ここに来ており、
今日一日で飛行に成功した宮藤芳佳に思うところがあるのだろう――――主に劣等感的意味合いで。

彼女の名は、リネット。
リネット・ビショップである。



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ヴァルハラの乙女 第4話「バルクホルンの憂鬱」Ⅰ

2014-02-20 18:31:11 | 習作SS


『生まれながらにして勇者は存在しない、ただ訓練のみによって生まれる』

とは古代ローマの偉い人が述べたコメントである。
軍隊とは常に訓練をしなければ即座に練度が低下し戦力として成り立たない。
それを考えるとこの言葉は、日々の訓練の重要性を我々に教えてくれる貴重な助言であり、真理である。

だからこそミーナはドレットノート級に、
ケチな財務担当者から如何にして予算をむしり取るか思考をめぐらせ。

部隊管理をある程度任されている、
わたしのような中間管理職は常に足りない費用を如何に効率的に使うかを考える。
そして各種手続き書類の作成、サインのために筆を走らせ、打ち合わせに走り回らなければいけない。

ただ、正面の敵と戦っていればいい。
という思考は近代の軍隊では存在の余地はない。
ましてや、指揮官達は部下が安心して訓練に励めるようにしなければいけない。
まあ、ようするに。わたしがやっている事はネウロイとドンパチする事を除けば、
その辺のサラリーマン、あるいは公務員のように書類と格闘するのが普段の日常だ。

だけど1944年の夏。
ここブリタニアにて私が第501統合戦闘航空団基地上空で響く悲鳴、
そして罵声は面倒な書手続きの末に手に入れた訓練機材をいっそ清々しいほど破壊してゆく姿であった。

『きゃあぁぁぁ~~!!』
『旋回が遅ーい!』

ブリタニアに寄港する途中にネウロイと遭遇、
落下するネウロイに対してシールドを張り、見事に『赤城』を守り抜いた期待の新人。
宮藤芳佳軍曹は飛行訓練の一環で阻止気球の間を抜ける訓練をしているが、何の遠慮なく破壊していた。

「…………ねえ、トゥルーデ。
 宮藤さんは『赤城』に匹敵するほど巨大なシールドを出せたわよね」

そうだ、あの日『赤城』にネウロイが落下し、
もう間に合わないと思った矢先『赤城』を守るように巨大なシールドが展開された。
唖然、呆然とするわたし達であったが、やがてシールドに阻まれたネウロイは、
元々深手を負っていたため、そのまま白い結晶と共に散った。

確かに彼女、宮藤芳佳はこの世界の鍵を握る人物だ。
【原作】でも散々「ウィッチに不可能はない!」と熱血主人公のように何度も逆転劇を演じた。
それを知った上で、この世界の常識に当てはめて言うと――――主人公まじチート。

つーか、何なんだよ!?
『赤城』並にデカいシールドなんて個人で出せるレベルじゃないし!
しかも色々あって今日始めて501の隊員として入隊したのだが、
普通なら先に教官と2人でする練習用の機材で飛行し、経験を積んでから単独飛行をするのだけど。

「いや、宮藤単独で飛行してもらう。
 何?流石に無理だって?心配性だなバルクホルン。なーに、ウィッチに不可能はない!」

で、一発で飛行成功しましたよこの主人公は。

【原作】でも一発で飛行に成功していたとはいえ、
あればネウロイに『赤城』が沈められそうになり精神的にも追い詰めれた状態であった。

この世界では変わりにシールドを張ったため、
彼女はまだ飛行しておらず、ゆえに常識論として通常通りの手順に沿った訓練を提示したが、

坂本少佐、もといもっさんの向日葵のような笑顔と共に却下され、
宮藤芳佳にはいきなり単独飛行を行い――――これに成功しつつあった。

「ミーナ、現実逃避は良くないぞ。
 我々の眼に映るものは宮藤軍曹がクソ高い気球につっ込み、次々と壊してしているシーンだ」

ボン、ボンと割れる音が連続して響く。
盛大に、それこそ爽快に破壊しているのは見ている側として乾いた笑いしか出ない。
現在進行形で器物破壊活動を行っている現行犯は後で注意を促すことで済むが。
壊されてしまった物は二度と戻って来なく、後始末はこちらがしなければいけない。

『きゃあああ!!』
『宮藤ぃ~!!』

あ、最後の1基が爆発した。
巻き込まれたが……まあ、魔法力の保護があるか大丈夫だろう。

「……宮藤さん、今まで飛んだことがないのに一回でここまで飛べたからすごいわよね」

「そうだな、確かに凄い、普通ならばこの水準までには数ヶ月かかるし。
 それよりミーナ、たしか気球は1基あたり30~40ポンドだったよな……予算、あるのか?」

「………………」

わたしの問いに対して、
ミーナは明後日の方向を向いてしばし沈黙する。
思わず沈黙は金、雄弁は銀、という言葉がふと浮かんだ。

「…………ロンドンまで行って予算を取ってくるわ」

背中に哀愁を漂わせてミーナが呟いた。
ああ、やっぱりか…という事はこちらはこちらで工面する必要があるな。
まずは近隣の部隊に掛け合って気球を借りるか、嗚呼また書類が必要だな……。



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ヴァルハラの乙女 第3話「原作開始Ⅱ」

2014-02-18 18:37:36 | ヴァルハラの乙女

「騎兵隊参上、といったところかな少佐?」

あ艦、坂本少佐が『リベリオンの映画なら騎兵隊がくるのだがな』
と無線越しで呟いているのが聞こえたからつい言ってしまった。
今更ながら臭い台詞で顔が赤くなるのが自分でも分かる。

現に横にいるシャーリーが、
「うまいこと言ったな」と言いたげにニヤニヤと笑みを浮かべていた。

しかし、相変わらず大型ネウロイは硬い。
20ミリMG151/20機関砲の連装タイプで撃ち込んだがまだ悠々と空を飛んでいる。
実際、お返しとばかりにこっちに光線が雨あられと飛んで来ている。

「先に少佐と合流する、
 最大速度でネウロイの脇を抜けるがいけるか?」

「私に加速魔法があるのを忘れているのかい?」

まずは坂本少佐と合流する。
その際位置的に坂本少佐との間にいるネウロイの脇を通らなければいけない。

しかし、わたしの『Ta152H-0型』の最大時速は760キロ、
シャーリーのストライカーユニット『P51』の最大時速は703キロと足並みが普通なら揃わないが、
彼女には加速魔法があるのでわたしの速度についてこられるので、わたしの質問に頷いて見せた。

「よろしい。今からカウントするから、
 0になったら一気に行くぞ3……2……」

魔力をストライカーユニットに一定以上注ぎ込む、
大量の魔力を食らい、魔道エンジンから爆音と漏れ出す。
さらに、魔力は運動エネルギーへ変換されつつあり、加速への準備が整いつつあった。

「……1……0!」

そして、注ぎ込んだ魔力がMW50水エーテル噴射装置を経由して、
エンジンに水エーテルを噴射した刹那、わたしは時速760キロの世界に突入した。

冷たく鋭い風が顔を叩くが、
それよりも雲が続々と視界の脇に押しやられ、過ぎ行く景色と爽快感がとても心地よい。
青い空に飛行機雲を描き、まるで天使が後押ししてくれている気分だ。

そんなわたし達にネウロイからさらに光線が降り注ぐ、
まるで東方の某弾幕ゲーのような光景で避けるのは困難であるように見えたが、
少なくても足を止めない限り当たる事はないのを知っているので、ただ加速して進む。

ネウロイの横を通り過ぎる際、光線がわたし達の横から追いかけるが、
偏差射撃も追いつかず、わたし達が通り過ぎた後から光線が飛ぶありさまである。
そして、ネウロイを通り過ぎると、孤軍奮闘していた坂本少佐に合流した。

「バルクホルン、そしてシャーリー。
 よく来てくれた、見ての通り『赤城』と駆逐艦数隻を除いて壊滅している。
 早速すまないが2人は速度を生かして囮になってくれ、その間に私がネウロイのコアを破壊する!」

「了解した」

「了解!」

久々に会ったことで積もる話をしたい所であったが、
残念なことにここは戦場であるために、軍務が優先される。

何よりも返事をした次の瞬間、
休む間もなくネウロイから唸り声と共に光線が飛んで来た。
わたし達は散開すると、シャーリーと2人でネウロイの周囲で旋回し盛んに鉛弾のシャワーを浴びせる。
的が大きいこともあって外れる弾はなく、続々と命中しネウロイが悲鳴を挙げた。


ネウロイは光線をこれでもかと放ってくるが、
攻撃するさいに一箇所に留まらず小刻みに動くことで回避している。
やむなくシールドを使う時も出来るだけ長く足を止めないように努めている。

「リロード!」

シャーリーが装填の合図をする。
その間にわたしが前に出る形で火線を絶やさないようにする。

「装填完了!」

そしてまた2人で高速でネウロイの周囲を旋回し鉛弾のシャワーをネウロイに浴びせる。
連装MG151/20機関砲はこれまでのMG42と比較して使う方として反動が大きく、
いくら魔法で強化された筋力で押さえ込んでいるとはいえ、流石に体に響く反動はややつらい。

おまけに背中には【原作】の第2期ではジェットストライカーユニットと共に、
登場した30ミリMK108機関砲を1つ背負っており、弾薬ともども重いことこの上ない。

だが、その分の労力は報われている。
MG151/20は口径が20ミリで【原作】で一貫して使用されたMG42の7.92ミリ、
と比較すれば物理的に遥かに威力は増大している、しかも炸裂弾を使用するため威力はさらに割り増しとなる。

【原作】ではドラマCDによると補給が追いつかない、という理由で登場しなかったが、
どういうわけかわたしがいる世界では【原作】で登場しなかったTa152共々わたしの元にある。

どのような原因でそうなったかは、分からない。
しかし、わたしのこの新しい玩具を手配した人物には感謝しよう。

ん、今ネウロイが赤く光った?

「コアだ!」

シャーリーが叫ぶ。
その言葉に改めてネウロイを見る。
一方的に殴られたため、ボロボロと崩れ白い結晶のような破片を落とすネウロイ。
その中央部に赤い宝石のような物が露出していた、太陽の光に反射してチカチカと赤い光が漏れている。

「ああ、終わりだな」

どうやら、わたしの【原作】介入は成功したようだ。
艦隊の被害も駆逐艦数隻が未だ無傷で『赤城』も航行中で宮藤芳佳が出る幕はないだろう。
そして、ネウロイはわたし達に背中を見せ、欧州大陸へ向けて撤退する航路を取る動きをとった。

無論逃がす心算など当初からないため、即座に追撃する。
今度は生き延びるために必死に光線の弾幕を張るネウロイだが、
どうやら先程から脅威度が高い追撃するわたし達に集中するあまり正面にいる彼女に気づいていないようだ。

『2人共、感謝する。
 だからここで終わらせよう』

坂本少佐だ、
彼女は軍刀を上段に構えネウロイの正面で対峙していた。
今更ながら自分の正面に天敵の魔女の存在を認識したネウロイは光線を放つ。
が、急に認識したせいかまばらでどれも明後日の方向へ飛んでゆく。

坂本少佐は動揺することなかった。
閉じた眼を見開き、静かに息をすっ、と吸う音を、
わたしは無線越しで聞き取ると彼女は雄叫びとともにネウロイに突貫した。

『おおおおおお!!!』

ネウロイは距離的に回避することも、光線の弾幕を張る余裕はなく。
ただ坂本少佐の斬撃を受けることを待つだけの存在へと成り下がっていた。

少佐がネウロイと衝突すると思われた刹那、
上段から振り下ろされた軍刀がネウロイの漆黒の装甲に接触。
まずは火花が散り、次に装甲が破壊されれ白い結晶が周囲に飛び散った。

相対速度に従い少佐はそのままネウロイを両断するかと思われたが、
ネウロイが少し上向きに動き、完全に両断することは出来ず少佐は飛び出した。

それでもネウロイからすれば兜割りを受けたような姿、
つまり真ん中から一直線に半分以上割れている有様でコアも破壊されたらしく、
ネウロイはその機能を停止させ、急速に高度を落として崩壊しつつあった。

「すっげー!流石坂本少佐、ネウロイを斬っちまったよ」

まったく同意である。
銃火器で攻撃するよりも、ああした物理攻撃の困難さは比べようにない。
三次元空間を移動する目標に斬撃を叩き込む技量、何よりもネウロイと事実上密着するまで接近する度胸。

それらがなければ実現することはできない。
こうして見るとなぜ【原作】で坂本少佐が尊敬されていたのか改めて理解できる。
というか、あんな事を好んでやるウィッチなんて扶桑の人間以外いないし……。

わたしも弾切れした時には銃器か戦槌の類でぶん殴ったことがあるが、
お互い時速数百キロで進んでいる中でああいう近接武器を使うなんて正直やりたくない。
というか、怖い、魔法があるから衝突しても肉片に成ることはないが怖いものは怖い。

それを嬉々としてやる坂本少佐、もといもっさんマジもっさん。

しかし、相変わらずでかいネウロイだな。
見たところ直径200メートルぐらいあるし下手な戦艦並みの大きさだ。
そんなのが、崩れ錐揉みしつつ落ちているのだからなんというか派手である。

……おや?

「なあ、イェーガ大尉。
 ネウロイが落ちている方向は」

「え?」

直前までネウロイは大陸に向けて逃げていたが、
少佐に止めを刺されてから空中で錐揉みしている間に方角がイギリス側に変わっていた。
その先には丁度空母『赤城』がおり、角度と距離からして――――衝突は避けられないものであった。

『っ!!しまった、赤城に当たる!』

坂本少佐が叫ぶ、
『赤城』をシールドで守るべく降下するが間に合わない。
わたしも、急降下するが――――やはりどう見ても間に合わない。

「宮藤芳佳ァ!!」

くそっ!!こんなところで、
彼女を死なせてしまってはいけない関わらずこのざまだ!
盾になってでもこの物語の主人公である宮藤芳佳を守ると決めたのに!!



※ ※ ※



援軍の到来。
さらにネウロイの撃破により、
『赤城』の乗員は万歳三唱から始まり様々な歓声で溢れた。

が、それも直ぐに絶望へ変わった。
なぜなら空気を押しつぶすような唸り声を挙げつつ、
自分たちへ落下するネウロイを見てしまったからである。

恐慌状態になりつつも、
このままやられるくらいならばと対空砲火を浴びせるが、
元々対象が大きすぎるためにその効果は薄く、駆逐艦も砲火を放つが無駄な努力になりそうだ。

「機関全速、面舵一杯。回避してみせろ!!」

艦橋で艦長が叫ぶ。
その声に弾かれた様に操舵手が操舵輪を回し、
『赤城』の巨体がゆっくりと、確実に進路が右へ曲がるがいつもよりも動きが鈍い。

「駄目です!先程の至近弾でスクリューと舵が損傷した模様で回避できません!」

「………っ!!」

死が確定された絶望の報告。
『赤城』の艦長はこの時ほどこの偶然をもたらした、
戦場の女神を呪ったことはなかった。

「もはや、ここまでか」

ネウロイの落下は誰も止められない。
後はただ軍人として毅然とした態度で死を迎えるばかりであった。



※ ※ ※



みんなの悲鳴に罵声が絶え間なく響いている。
ネウロイという名の化け物こそ倒されたが自分たちへ向かって落下している。
『赤城』と同じくらい、あるいはそれ以上の大きさを持つそれに耐えられるとは思えない。

「あ、ああ」

怖い。
足が生まれたての子鹿のようにガチガチと震えているのが自分でも分かる。
自分なんかよりも遥かに巨大なネウロイを見れば嫌でも自分がちっぽけな存在であるのを自覚する。

そして、ここで私は死ぬんだ。
お父さんとの約束を守ることも出来ずに。

『宮藤!宮藤!海に飛び込むんだ!!早く!』
「っ坂本さん!?」

インカムから坂本さんの声が通り我に返る。
海に飛び込む、つまり逃げるという選択肢を知ったけど、

「けど、坂本さん。それだと『赤城』のみんなが」
『大丈夫だ、彼らは軍人だ。心配するな』

嘘だ。
坂本さんは私を逃がしたいのだ。
そのくらい、私にも分かる。
分かるから改めて無力で惨めな存在であることを知る。

力、力がほしい。
みんなを守れるだけの力が!
そして、私に出来ることがあるはず――――あった。

「わたしに出来ること……」

私も坂本さんのように空を飛べることはできない。
けど、お父さんとの約束を守るために、そしてみんなを守ることが出来る力が私にはある。

「ネウロイ落下します!!」

もう眼と鼻の先にネウロイがいる。
甲板にいたみんなが生きることを諦め、絶望の叫びを声を出す。
坂本さんも何か叫んでいるけど今の私には聞こえない。

ただ集中し両手を空へ突き出し、
じっくりと、そして確実にシールド魔法を展開する。
治癒魔法すらあまりうまくいっていないにも関わらず、
ほとんど始めての魔法で、しかも『赤城』と同じ大きさのネウロイを食い止める。
なんて自分でも馬鹿だと分かっている。

けど、私はもう逃げない。
みんなを守るために私は逃げない。
それに私は――――ウィッチなのだから!

「はぁああああああ!!!」

自分でも感じたことがない程膨大な魔法力が出ると、
巨大なシールドが出現しネウロイは私のシールドに阻まれた。

みんなが呆然と私に注目しているのがなんとなく分かる。
間もなく、それが歓声と共に私を応援するものへ変わっていった。

「っぅ…!?」

だけど、重い。
それに意識が時折失いそうだし全身から震えが止まらない。

息だって体育の日で走っていた時よりも荒いし、
このまま止めてしまえばどんなに楽になるか、そんな誘惑に駆られてしまう。

それに、徐々にだがネウロイの自重にシールドが押されている。
1秒が1時間のように時間は遅く感じてしまうし、私の魔法力も長くは持たない。

「あ、」

どれだけ耐えたのか分からない。
けどふっ、と意識が飛ぶと同時にシールドが消えた。

意識が完全の途切れる寸前、
絶望の黒い感情とこれまでの思い出が一瞬の内に走馬灯のごとく流れる。

もう、駄目だ。
ごめんなさい、みんな……。

「よく頑張ったな、宮藤。
 もう安心しろ……おまえは本当によく頑張った」

でも、最後に聞こえた坂本さんの声は穏やかなものだった。
私はその意味を確かめる気力はなく、坂本さんの胸元に倒れこむ形で眼を閉じる。
だけど、眼が完全に閉じる前に視界の隅でネウロイの白い結晶が飛び散っていたのを私は見た。

そして、『赤城』のみんなが私の元に寄ってきて口々に何かを言っていたことから、
私はようやくみんなを守れたことを知り、安心して眼を閉じ、意識を閉じた。





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おススメSS 【ネタ】一流作家に俺はなる! 『ネタ的な、アンチテーゼのような何か』

2014-02-17 08:16:55 | おススメSS

【ネタ】一流作家に俺はなる! 『ネタ的な、アンチテーゼのような何か』

ネット小説では往々にして見ている側の心を折るものがあります。
書いている本人は自分がピエロになっていることに気づいていないのがまた喜劇であり悲劇だと言えます。

自分もそういう時代がありました……(遠い目)

今日紹介するのはそんなネット小説を揶揄したものを紹介します。
しかもよりにもよっと読者の評価が厳しいことで有名な理想郷で投稿されました。


――――そんなおれだが、最近悩みがある。

弟のことだ。

現在高校二年の俺の弟――山田翔太は、ガチガチの体育会系。
中学から今まで空手をやっており、その瞬発力と動きのキレは、身内贔屓を抜きにしてもすごいと思う。
半年前から筋トレも精力的に始めたので、全身にみっしりと筋肉がつき、逞しさが前にでる。
鍛えられているためか、その眼光には力が篭り、厳しい部活に所属している者特有の目力がある。
そのため、容姿端麗というわけではないが、精悍という印象が強い。

だからか、女子にはそこそこ人気があるようだ。
そんな弟だが、最近困っていることがある。

それは――――





「異世界トリップチート勇者だぜ!」
「すごい・・・一体何物なの、あの人」
「勇者様・・・素敵です」
「俺に任せろよ、全て上手くいく」
「ああ、勇者さま・・・」





中二病を発症したことだ。
しかも、極めてまずい方向に。

上記の文章だが、あれは決してダイジェストにしたわけじゃない。弟が夢中になって書き込んだもの、そのままだ。
これを初めて見た瞬間の衝撃は、忘れられようもない。

心底楽しげに、弟は文字を打っていた。
慣れていないであろう、たどたどしいタッチで。
それ自体はいいことだ。
ああ、文字を打つということは手が文字を覚えるということでもある。
小説という形態を用いることで、自発的な言語の習得に励むというならば、それは実に望ましいことだ。
うん、そうだな。そう考えれば実に有意義な――

「くらえ!サンシャインマグナム!」
「ぐあああ!おのれ、勇者めえ」
「きゃあ、勇者様、素敵です」

転がったまおうを、俺は突き刺す。

「ふん、正義は勝つんだ魔王!」
「きゃあ、流石です勇者さま!」

有意義な――――

「おお、魔王を倒すとは素晴らしい、勇者を、わが娘を嫁に迎えてはくれぬか?」
「あああ、当然だぜ。マリーはとっくに俺のもんだ。その身も、心もな」
「きゃっ、言わないで勇者様!」

有意義な――――

「ふはは、魔王なぞ、所詮わしの下僕。この地上を制するのは、心の覇者、大魔王ぞ」
「怖いは勇者さま」
「任せろ!世界は俺が守る!」
「おお、流石ゆyしゃよ」

――――なわけがあるか。

会話しかねえぞ。
しかも話しが意味分からん。
きゃあきゃあ言ってる女はなんなんだ気持ち悪い。
誤字脱字多すぎだろおい。
『は』と『わ』の違いぐらいつけろよ。
ちゃんと文字打ち込めよ。変換できてなくて、意味不明な文章になってるぞ。
てか、描写なさすぎだろ。台本みたいになってるぞ。



お、おう黒歴史!黒歴史がががが




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おススメSS 銀河連合日本

2014-02-16 19:53:56 | おススメSS

銀河連合日本

ハーメルンではなく、
偶には「小説家になろう」のSSを紹介したいと思います。

お題はSF物のオリジナルで、

二〇一云年、日本に異星人の巨大な宇宙船が飛来した。
この未曾有の事態に世界各国は動揺し、それまでの世界秩序を根底から覆す事態に陥ってしまう。
……しかし彼らは極めて友好的であったが、地球世界全体ではなく、「日本」という特定の国家のみと交流を持ちたいと言う。

他の地球国家にはまったく興味がないらしい。
そしてその異常なまでに発達した彼らの科学力を惜しみなく日本に公開、提供する異星人。
地球の各国、特にアメリカ、ロシア、中国、EUは、異星人の日本に対する対応に世界のパワーバランスの崩壊を危惧する。
なぜ異星人は、地球の小さな島国である「日本」に固執し、日本にしか興味を示さないのか。
それには遥か昔の日本のある物語と、一人の異星人女性が関係していた……


と現代日本と宇宙人が接触するもので、
オリジナルでしかもSF物を既に15話以上連載しています。
内容も「俺Tueee!」な日本無双にならずに政治的駆け引きに宇宙人との交流。
など細かく描かれており、いつか「ゲート」のように出版されてもいいくらいレベルであります。

ぜひ見てください。








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