で、さらに問題がある。
視線を横にずらし、宮藤芳佳の飛行を見物しているその他ギャラリー陣を見る。
「おいおい、見ろよルッキーニ!!
宮藤の奴ったら気球を全部壊しちゃったぜ!
私も散々備品を壊して来たけど着て早々とかは流石になかったぜ、これは負けたな!」
「にひひひ、これは後で始末書だねシャーリー!」
シャーリーとルッキーニのジャッキーニは2人して彼女の下手糞な飛行を見て大うけしている。
というか君たち、散々始末書を書いては何度も反省したはずだけどまったく懲りずに今でも始末書を書いているよね?
そしてエイラ、そして珍しくこの時間帯に起きているサーニャーは2人で仲良く並んで鑑賞していた。
「あ、う……う、うううう???」
「……エイラ?」
「はっ、何でもない!何でもないぞサーニャ!」
ただ、エイラがサーニャと手を繋ぐか繋がないかで、
悶々と悩んでいる所を見ていると相変わらずヘタレ具合は改善されていないようだ。
まあ、それでもエイラーニャ教徒でもあったわたしからすれば十分萌える光景でもあるのだが……ふぅ。
「まったく、坂本少佐が連れてきた新人ですから、
さぞ優秀な方だと期待しておりましたのに、これでは期待はずれですわ。
というか、どうして少佐は昨日今日始めたばかりの素人をここに連れて来たのかしら?」
ペリーヌは1人紅茶を片手に宮藤芳佳について論じているようだ。
結構きつい事を言っているが、ペリーヌは坂本少佐一筋だからなぁ……。
「うりゃー!」
「ひゃあ!!?」
あ、ルッキーニがペリーヌの胸を掴んだ。
「どうだった、ルッキーニ?」
「残念賞、成長してなーい。リーネよりちっちゃいまま」
「お、おだまりなさーい!?」
涙目になりながら胸を押さえペリーヌが叫んだ。
ペリーヌに胸の話をするなよ…本人は結構気にしているのだし、
時折同じ歳のリーネや一つ上のシャーリーの胸とか結構ガン見しているのを知っているのだろ?
この間なんか乳が重いから肩がこるなんてボヤいていたら、殺意を込めて睨まれたというのに懲りないなぁ…。
けどまあ、こうして騒がしく過ごすのが一番いいことは確かだ。
度が過ぎれば流石に問題であるが、しかしこの程度ならば問題なかろう。
しかし、そんな騒がしい中で一人だけ沈黙を保っている人物がいる。
「………………」
薄い金髪で一本の三つ編みを後ろに垂らした少女が、ただぼんやりと空を見上げていた。
時折俯き、何かを呟いているが服の裾を震えと共に強く握っているのを見ると、あまり良い傾向とは言いがたい。
彼女もまた、最近第501戦闘航空団に着たばかりの新人で、
優秀なウィッチを自国の部隊に残したいという政治的理由で訓練部隊から直接ここに来ており、
今日一日で飛行に成功した宮藤芳佳に思うところがあるのだろう――――主に劣等感的意味合いで。
彼女の名は、リネット。
リネット・ビショップである。
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