二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

【炎龍編】 続いたネタ35 GAET~夢幻会、彼の地にて戦いけり

2016-09-13 23:05:37 | 連載中SS


アルヌスの丘。


この世界を支配する帝国からは「聖地」
として崇められている場所であるが無人の丘に過ぎなかった。

人の生活があったのは帝国が異世界へ軍を進めるために集結した時だけで、
その帝国軍も影も形もなく、代わりに同じ太陽の旗を仰ぎつつも違う世界の軍隊が駐留していた。

そして丘の下でもアルヌス生活協同組合に属する人々が暮らしており、
組合の商売が成功したこともあり人口は徐々に増えつつあり、今では・・・。

「今では小規模とはいえ、街だなこれは」

様々な種族、人種で賑わう通りを見て柳田が呟いた。
組合が暮らす宿舎、食事処も兼ねた酒場、馬を止めるための厩舎。
どれも何もなかったので新たに建設された施設であり、
かつてコダ村逃れて来た避難民20人そこらから始まったとは思えないほどの繁盛ぶりであった。

「まだまだ大きくなるでしょう、
 組合はエルベ藩国にも販路を伸ばす予定だそうで」

「・・・帝国以外の国について情報が集まることは良い事です、殿下」

「殿下ではなく若杉大尉で結構ですよ、柳田二尉」

「いえ、他の者がいる場なら兎も角こうして2人だけの時は・・・」

世界が違い所属する組織が違えど階級は1つ上な上に、
対面する人物が日本で最も尊い血筋を引く者ゆえに柳田は緊張するばかりであった。

加えて言えば若杉大尉。
もとい三笠宮崇仁親王殿下は平成の世において皇族最長老の人物であり、
平成日本から見れば先帝陛下の兄弟という立場と合わさって柳田を始めその扱いに非常に胃を痛めた。

「若杉大尉と呼ぶことに慣れることを期待しますよ。
 実のところ、私は『若杉大尉』と呼ばれる方が好きですから」

何せ『殿下』ならこうして組合の食堂でビールを傾けることなんてできませんから、
と自らの立場を揶揄しつつ上品な笑みを浮かべた。

「努力します」

ただの大尉として扱ってほしいと希望しつつも、
言葉では表現できない帝王の血筋を証明する気品のある仕草と言葉使い。
そして覇気に圧倒される中、柳田はなんとかその一言を絞り出した。

「さて、仕事の話に入りますが、
 帝都の悪所に潜入する人材の選抜は終わりましたか?」

「はい、我々は伊丹・・・。
 第三偵察隊の面々と特殊作戦群からの選抜を完了しました」

「うん、準備が良いのはいいことだ。
 これで交渉団を裏から援護することができる」

ピニャを通じた講和交渉への道筋は決まっており、
事実上大使館として既にピニャの館に間借りする形で帝都に拠点を設けることになっている。

が、そうした表の情報取集でなく裏の情報収集役として帝都でも最も治安が悪く、
だからこそ溶け込める悪所に自衛隊と日本軍は部隊を派遣することに異存はなく柳田と若杉はその準備をしてきた。

「こちらは中野学校出の人間を送る予定ですが、
 即座に自衛隊と我が軍が動ける位置にあるとはいえない場所ですから、
 もしもの時に連携できるように顔合わせをしておいた方が良いと思いますが、二尉は?」

「もとよりこちらでも懸念していた事項です。
 帝都に派遣される前に親睦会などを開くべきではと議題に上がってました」

「それは結構。
 私の方からもそう進言しましょう」

「ありがとございます」

柳田の回答に帝王の血を引く若き皇族が頷き、
根回しを終えた柳田は安堵の息を吐くのを堪えつつ感謝の言葉を述べた。

「しかし第三偵察隊と言えば、あの面白き方ですか・・・」

「で、殿下?」

怠け者でオタクな部下を面白き人間と評した事に柳田は思わず疑問符を口にした。

「ええ、中々面白き方だと思います。
 確かに私から見てもご本人の言う通り怠け者そのものですがその実に義に厚く、
 自らの立場を犠牲にすることを厭わないと、矛盾に満ちた人間でありますから」

「・・・・・・・・・」

大尉の言うところに覚えがある柳田は反論する言葉がなかった。
例えば炎龍との戦闘後に見捨てられた避難民を伊丹はその場で見捨てることもできた。
何故なら日本国民でない人間、ましてや敵国人を見捨てても関係ない、という理由で切り捨てることは可能だ。

だが、伊丹は日本軍側からの避難民を情報集役に仕立てる、
という提案を自衛隊が受けて避難民の保護を命令する前から、命令を拡大解釈する形で難民を基地に連れてくる腹であった。

本人は寝覚めが悪いから仕方がなく連れて来ようと思った、
と嘯いていたが命令の拡大解釈も最悪特地から僻地へ飛ばされても仕方がないやり方であり、
自己の良心と自衛隊における立場を天秤で比較してもその選択肢を選ぶ勇気は自分にはない、と柳田はその時感じた。

さらにイタリカの戦い後にピニャの部下たちに捕まった時も部下を先に逃がす自己犠牲精神、あれもまた咄嗟にできることではない。
またアルヌス生活協同組合がここまで拡大する過程で発生した様々な問題も伊丹は特地の人間を面倒だと言いつつも助け続けた。


だからこそ、伊丹を見ていると―――――——。


「よう、ヤナギダ、ワカスギの旦那!
 お代わりはいるかい?というか飲んでいきなよ!」

「ああ、これはどうも。
 では生を2つ、柳田二尉の分も含めて」

と、思考に耽っていたいたが外部からの干渉で思考が中断される。

「へいお待ち!ワカスギの旦那!
 ほらヤナギダの分もあるから元気出して飲んでいきな」

デリラと言う名の兎耳の女性がニヤリと笑みを柳田に向けた。
それに柳田はふと伊丹の奴ならケモ耳萌えだの言いそうだな、と内心で呟く。

(考えすぎたな)

そして、伊丹について一度思考を辞めて、
相手の好意に答えるべく目の前に置かれたビールに手を伸ばした。
 














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