二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

続いたネタ20 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり

2016-01-09 22:38:15 | 習作SS

1945年 東京 陸軍参謀本部

参謀本部は年末調整で殺気立つ大蔵省の官僚に怯える以外の話題。
陸軍と自衛隊のイタリカ救援と共に商人と接触し得られた情報、
特におぼろけながらも特地の情報が判明したことで話題を呼んでいた。

「イタリカより先が武装勢力、通称【帝国】の首都か。
 このまま一気に攻略してしまいたいが、兵力が足りるかどうか…」

「いや、相手はせいぜい中世程度の文明だ。
 アルヌスの丘周辺に残敵はない以上今すぐ進撃すべきだ!」

「馬鹿を言うな、本土と結ぶ輸送路はあの銀座の門だけだぞ!
 唯でさえ軍の補給で四苦八苦しているのに碌に地形も分からぬ土地なぞ行けるか!」

レレイ達が商人と接触したことで得られた異世界。
通称「特地」の経済体制を知った参謀達は今後どうするか議論していた。

「帝国陸軍は特地の都市、通称「イタリカ」
 において武装勢力の残敵掃討を完了せり、これを以って銀座に進行した武装勢力。
 さらにアルヌスの丘に逆襲してきた戦力の全てを排除することに成功したことを報告する」

一方政府はイタリカでの行動で突然襲ってきた武装勢力の壊滅を宣言。
この報告はメディアを通じて大きく報道され、各地で歓喜を以って迎えられた。

「帝国陸軍万歳!異世界にても勝利!」
「勝てる戦なぜしない、特地を帝国の領土に」
「株価再度値上がり、特地開発に経済界は注目する」

新聞ではこのまま特地を一気に支配すべき、
という強硬姿勢が強く、世論と経済界のコントロールに夢幻会は頭を痛めていた。

後先考えずに特地に進出する、という選択肢は最初からない。
なぜなら【原作】で時空の捩れで銀座の門を一時的にも閉じることは絶対必要で放置すれば大惨事になるのだから。
また、補給路は銀座の門だけで大兵力が展開できない問題を常に抱えており、下手な深入りができない。

そしてそれは現場も同じ結論に至っていた。

「やはり、無理か」

アルヌスの丘、自衛隊と帝国陸軍の合同司令部の会議室で栗林中将が呻いた。
会議室の真ん中に設置した卓上にはこれまで収集した航空写真を元に作成した特地の地図があり、
自衛隊、日本軍、そして国家として承認されていないため武装勢力と未だ呼ぶ【帝国】の戦力を示す駒が置かれている。

想定として【帝国】の帝都攻略に向けて自衛隊と日本軍が進撃を開始。
自衛隊は加茂直樹一等陸佐率いる第1戦闘団に空中騎兵である第4戦闘団。
日本軍は島田豊作中佐指揮下の戦車第18連隊を中心とする戦闘団、さらに第4騎兵旅団が初日にイタリカを難なく通過。

2日目にイタリカと帝都の半ばまで到達した所で【帝国】軍がようやく行動し、交戦する。
しかし、航空機の援護と自衛隊の空中騎兵である第4戦闘団の健軍俊也一等陸佐が背後に展開したことで崩壊。
その日の内に【帝国】軍を撃破、帝都の城壁を自衛隊の隊員と日本軍の将兵は目にする。

そして後方からやってくる砲兵を待ち、3日目にいよいよ帝都攻略に掛かる。
早朝から【帝国】の首脳部を確実に捉えるため第4戦闘団が空から重要施設に対する攻撃と降下で混乱を誘引。

さらに城壁の外からは戦車と自走砲の砲撃を加え城壁を破壊、城壁を頼りとする敵を撃破。
指揮系統が麻痺している間に戦車を押したて周辺住民への被害を極限するため一気に中心部に突入する……。
自軍の被害は想定の範囲内で間違いなく勝てる戦争であり、一見すれば問題ないようだが、問題があった。

「首脳部を確保するにしても現段階では【帝国】皇帝の姿が不明だ。
 その上帝都で戦闘すれば市民の犠牲がどうしても出てしまう、政治的にまずい」

挟間陸将がそう言葉を続けた。
まずは【帝国】を率いる【皇帝】と称される人物の確保は絶対であったが、
モルト皇帝と人物名こそ判明しているが容姿が不明で確保したいが不可能であった。

さらには政治的問題、すなわち市街戦でどうしても市民を巻きこんでしまうことだ。
日本軍はあまり気にしていなかった自衛隊はその特殊な政治環境ゆえにこの点に敏感に為らざるを得なかった。

自衛隊は事前に市民に退去するように宣伝ビラの散布などをして市民の安全確保を考えていたが、
日本軍が自らの世界における独ソ戦でソ連が根こそぎ動員した例を持ち出し、無意味であるとの意見がでる。

「自衛隊と我が軍の補給は…そうですね、何とかなるでしょう。
 しかし、戦火で流通に打撃を受けた結果帝都の住民は間違いなく飢えます。
 この面倒を無視する、というわけには行きませんから住民慰撫で食料の配布をするとなるととても…」

さらに帝都を攻略した後の問題があった。
自給自足能力がない大都市は周辺部からの流通によって支えられているが、
自衛隊と日本軍、そして【帝国】軍との戦闘でそれが破壊され、回復するまでの間にその面倒を見る必要がある。
栗林中将の下で参謀長を勤めている八原博通大佐が言葉を濁すように飢えた住民の分まで現状手が回らない。
 
もしも本土と結ぶ補給路が銀座の門だけでなければ、
大量のトラックを動員して流通が回復するまで最低限の食料配布は可能だが、
補給路は門のみ、という環境がそれを許していなかった。
 
「つまり戦えば鎧袖一触に間違いない。
 しかし、首脳の顔は未だ知らず、戦後に必要な物資は用意できない。
 帝都を占拠しその後の治安維持に必要な兵力を考えると…兵站上の悪夢だな」

栗林中将が帝都進行を想定した兵棋演習をそう総括した。

「やはり今日来る彼女らを伝手に講和会議を開く。
 武力でなく交渉の場で決着を付ける、これが最も労力がかからないか」

「合理的だが納得できないな、ああ俺は待つのは性に合わない!」

「まったくだ、もう一度【帝国】がアルヌスの丘に押し寄せてくれば話は早いのだがな…」
 
健軍一等陸佐の言葉に加茂一等陸佐、
そして島田中佐が戦車屋らしく好戦的な言葉を口にする。

「まあ、諸君逸るのは良いが待つのも仕事の内だ、
 日本ならびに帝国日本の政府も進撃を望んでいない以上、現状維持に努めるだけだ」

挟間陸将の苦笑交じりの言葉に自衛隊、日本軍双方の幹部が頷く。

「当面は万が一に備え補給物資の備蓄。
 それにイタリカの人道支援、深部偵察の続行。
 コダ村住民を使ったさらなる情報収集に周辺部の治安維持といった所だろうか」

「可能ならば街道整備もしたい所ですな挟間陸将。
 街道があるとはいえ戦車が進むにしては貧弱なので時間がある内に工兵で整備してしまいましょう」

「そうれは名案ですな、栗林中将閣下。
 自衛隊も施設科を動員しますので是非しましょう」

とはいえそこで暇を弄ばず万が一に備え自衛隊と日本軍はその準備を今の内にするつもりであった。
物資の備蓄、人心の掌握、情報収集に街道整備で機動力の確保などすることはあった。

「失礼します、例の姫君が間も無く到着します」

その時柳田二尉が部屋に入り報告する。
柳田は先ほど話していた講和の伝手となる人物が来たことを知らせた。

「話題の客が来たようで…では早速会いに行くとしましょう」
「ええ、お供します」

栗林中将、挟間陸将が頷きあった。
ピニャが2人の将軍と会談する15分前のことであった。


 
 










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