豊島八段が初タイトルを獲得した。
弱冠20歳でタイトル戦に登場し、レーティングでは長くトップクラスに鎮座し続ける彼の実力からすれば、28歳での獲得は遅きに失したというのが大方の意見だろう。
その実力は、今年に入って一気に開花しているようだ。
ビッグタイトルである竜王戦では決勝トーナメントに勝ち上がっており、王位戦にも挑戦中の彼は、今一番強い棋士といっても過言ではない。
将棋界は、8大タイトルを8人で分け合う群雄割拠の戦国時代。
将棋ファンにとっては、見応えのある難解な局面に突入したといえる。
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ソース:朝日新聞
将棋の第89期棋聖戦五番勝負(産経新聞社主催)の第5局は17日、東京都千代田区の都市センターホテルで指され、挑戦者の豊島将之(とよしままさゆき)八段(28)が羽生善治棋聖(47)に108手で勝ち、対戦成績3勝2敗で初タイトルとなる棋聖位を獲得した。竜王位との二冠だった羽生竜王は一冠に後退した。
この結果、将棋界の全8タイトルを8人の棋士が一つずつ保持することになった。全タイトルが分かれるのは、1987年に7タイトルを7人で分け合った時以来約31年ぶりとなる。
豊島新棋聖は愛知県一宮市出身。2007年、16歳でプロ四段に昇段した。関西本部に所属し、元竜王の糸谷哲郎八段(29)らとともに「関西若手四天王」と呼ばれ、早くから注目された。名人挑戦権を争う順位戦は現在A級に所属し、昨年度は初参加でプレーオフに進出する活躍を見せた。
しかしタイトル戦では20歳の時から計4回挑戦するも獲得に至らず、今回は過去2回敗れている羽生竜王から念願のタイトルを奪った。現在、第59期王位戦で菅井竜也王位(26)に挑戦している。
初タイトル獲得について豊島新棋聖は「ずっと目標にしてやってきたので、よかったと思う」と話した。
将棋界では七タイトルの時代が長く続き、昨年新たに叡王が加わった。現在のタイトル保持者は、羽生竜王、佐藤天彦(あまひこ)名人(30)、高見泰地叡王(25)、菅井王位、中村太地(たいち)王座(30)、渡辺明棋王(34)、久保利明王将(42)、豊島棋聖の8人。
羽生竜王は96年に「七冠独占」を果たし、以来20年以上にわたって将棋界の先頭に立って活躍してきた。しかし16年に佐藤名人に名人位を奪われると、昨年は王位、王座を続けて失冠して棋聖のみに。昨年末に竜王を取ったが、今回の敗戦で再び一冠に後退した。通算100期目のタイトル獲得がかかっていたが、達成は竜王戦に持ち越された。羽生竜王は「また次の機会を目指してやっていけたらと思います」と話した。
棋聖戦で敗れた羽生善治竜王の話
本局は、角を手放して(局面を)打開していったんですけど、(その角が)あまり働かなかったような気がします。攻めが無理だったかもしれません。(今回、タイトル獲得通算100期が成らなかったことについて)また次の機会に、また、その舞台の時に、また目指してやっていけたらいいな、と思っています。(佐藤圭司)
谷川浩司九段(56)の話
豊島さんは20代前半でタイトルを獲(と)る人だと思っていたので、彼の実力からするとタイトル獲得まで時間がかかった、というのが正直な感想です。ただし、今年は王将戦、棋聖戦、王位戦とタイトル戦に登場し続ける豊島さんを、私は羽生さんに次ぐ二番手の棋士と思っていました。今回、タイトル戦で初めて勝ったことで、二つ、三つとタイトル奪取を重ねる可能性は十分にあります。豊島さんのすごいところは、仲間の棋士との研究会はやめて、一人で研究し続けていること。ストイックに打ち込む姿は、大変なことだと思っています。
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ちなみに、7大タイトルを分け合っていた1987(S62)当時の状況は、
名人 中原誠
棋聖 桐山清澄
王位 谷川浩司
王座 塚田泰明
十段 福崎文吾
王将 中村修
棋王 高橋道雄
1987年10月22日から11月26日までのわずか36日間である。