小樽のパパの子育て日記

日々のできごとを徒然なるままに2006年から書いて18年目になりました。
ヤプログから2019年9月に引越し。

グローバル資本主義が国家の右傾化を推進する

2015-01-20 21:39:07 | 図書館
図書館で借りた本


「知」の読書術 佐藤優


歴史は繰り返す。
本書で一番印象に残ったのは、現在の日本が置かれている状況に警鐘を鳴らしているとも言える部分。
以下、自分用のメモとして。

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冷戦終焉後、資本はグローバル化の名のもとに、国境をやすやすと越えていくようになったが、それは同時に、市場と国家の衝突を引き起こしている。
グローバル資本主義が強くなりすぎると、国家の「徴税機能」が弱体化してしまうため。

スターバックスやグーグル、アマゾンといった多国籍企業は、タックスヘイブンを活用して税金を逃れようとするが、徴税機能の弱体化は国家の成立基盤を危うくするため、各国とも国家機能を強化しようと、独裁的統治に傾いていく。

徴税機能が弱くなれば、当然、再配分する財源も枯渇していく。
財源に行き詰まった国家が独裁主義的な方向に進んでいくのは、フランス革命後の政治体制の推移を見れば明らか。

フランス革命で旧体制を打倒した後、権力を握ったのは商工業ブルジョワジーを地盤とするジロンド派。
ジロンド派は、旧勢力のクビを切って彼らの富をばら撒いた。
それはポピュリズムによる再配分であったが、ポピュリズム的ばら撒きには限界がある。
列強国の対仏大同盟によって包囲され、物資の輸入が困難になり深刻な食料不足となる。
不換紙幣を大量に発行しインフレを招いて、結果、国民の支持を失う。

次に権力を握ったのはジャコバン派。
個人の権利を主張したジロンド派に対してジャコバン派は緊縮財政、恐怖政治、国民皆兵という形で国家機能を強化する。
しかし、息詰まるような恐怖政治は国民に不満を募らせる。

その後、登場したのがナポレオンによる独裁政治。
ナポレオンはジャコバン派ほど厳しい政策はとらず、ばら撒きの財源を軍事的征服によって外から収奪した。


代議制民主主義を採る近代国家では、市民は一回政治家を選んでしまえば次の選挙まで政治について考える必要がなく、欲望だけを追求していればよい。
経済さえうまく回っていれば、政治はどうでもいいのが市民社会の原則。
ところが景気が悪化すると、政治に経済を改善するよう要求し始める。
その先に待ち受けているのは、国家機能の強化。
国家機能の強化イコール政府機能の強化、政府機能の強化イコール独裁の強化という形で、独裁制へと移行していく。

グローバル資本主義が発展していくと、国家の右傾化や独裁化を推進するという逆説を看取することができる。

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危機が報じられているウクライナ情勢も分かりやすく解説していて参考になりました。
サラサラと読了。