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温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

旭岳山麓 岩の湯・ピラの湯(弘法の湯群)

2012年10月04日 | 北海道
虫の活動が沈静化して藪の茂りも衰える秋は、絶好の野湯シーズンですね。ということで、今回から数回連続して北海道の野湯を取り上げていきます。今回は前回掲載した「中岳温泉」を含む旭岳登山(その1その2)の下山後に訪れた野湯「岩の湯」および「ピラの湯」です。


 
旭岳から下山してロープウェイで山麓駅まで戻った後、駅から近い某所から寂れた登山道へと入ってゆきます。この道はあまり使われていないのか、湿原に架かる木道はボロボロに朽ち果てており、慎重に歩かないと踏み抜いてしまいます。葦原からクマさんがひょっこり出没しないか、ヒヤヒヤしながら先へと進みました。


 
途中の経路に関する詳細は記述を避けますが、途中で登山道から離れて、黒くて太くて固い(いやんエッチ…)配管に沿って藪を突き進んでゆくと川に突き当たりますので、その川に架かる鉄の橋で対岸へ渡ります。



一帯は旭岳温泉の源泉地帯となっており、橋を渡ってすぐのところには配湯槽らしきタンクが設置されていました。先ほどの黒い配管は温泉街の施設へお湯を送る配湯管なんでしょう。この辺りはいろんなところから水や温泉が湧いてジメジメしているため足元がグチャグチャになっており、慎重に歩かないとズブっと足首まで泥に潜ってしまいそうな状態でした。また藪が茂ってすっかり踏み跡が消えており、面倒くさい藪漕ぎを強いられました。ネット上の訪問記を拝見していると、残雪期に訪れている方が多いようでして、どうしてわざわざ雪が積もっているコンディションを選んでいるのか不可解だったのですが、このひどい藪、そして泥濘と化した足元を目にしてよくわかりました。なるほど、積雪があったほうが歩きやすいかもしれません。



こんな感じで斜面のあちこちから温泉が沁み出ているので、どうしても足元が悪くなるんですね。



おお!この光景はネットでも見たことがあるぞ。大量のお湯が流れるこの坂を登るんだな。繰り返しますが足元はグッチャグチャ、しかも坂道ですから非常に滑りやすいのです。幸いにして坂にはロープがありますから、これに掴まって慎重に登りました。なお私は防水のトレッキングシューズを履いていたのですが、ちょっと奮発して高い靴を買った甲斐があったのか、坂を流れる温泉水に足首まですっかり浸かってしまったにもかかわらず、靴の中はかろうじて濡れずに済みました。長靴があれば楽チンだったでしょうね。



登りきったところで振り返ってみると、空の上を渡るロープウェイが姿見へ向かって登ってゆくところでした。車内から私を見つけたお客さんは、なぜあんな山の中に人がいるんだろうと不思議に思ったかもしれません。
実は当初、ここの場所の特定にあまり自信が無かったのですが、早朝登山のためにロープウェイに乗っていたら、ゴンドラの右手で勢いよく白い湯気が上がっている箇所を発見したので、ここで間違いないと確信したのです。


 
坂を上りきった箇所の崖では大量のお湯があちこちから湧出して坂へ向かって流れ出ていました。画面ではわかりにくいのですが、そうした崖の一部には集湯のための配管が設置されているのですが、配管に集めきれなかったお湯が溢れ出ており、温度を測ってみると38.0℃でした。


 
そのお隣の湧出箇所からあふれ出るこちらのお湯は44.4℃。ぞろ目ですね。入浴するにもちょうど良い温度ですが、残念ながら湯溜まりらしきものは無かったので入浴は断念。



さらに藪を掻き分けてゆくと…


 
川に接したところに今回の目的地である野湯のひとつ「岩の湯」が現れました。


 
人工的に造られたと思しき「岩の湯」は上方から滝のように落ちてくる温泉によって湯船のお湯が張られており、温度計を突っ込んでみたら33.1℃という数値がはじき出されました。一旦入ると出られなくなりそうな、かなりぬるめの湯加減ですが…



足元の泥濘と温泉、そして背の高い藪に苦戦しながらも難所を突破し、ようやく目的地へたどり着けた達成感、そして渓流沿いというすばらしいロケーションについつい興奮してしまい、気づけば全裸になって入浴していました。入る前のお湯は無色透明で清らかに澄み切っていましたが、底には泥や苔・藻がたくさん沈殿しており、一歩足を踏み入れただけで忽ちそれらが舞い上がって何だか汚らしいお湯へと変貌しちゃったため、悲しい哉それらにまみれながらの湯浴みとなってしまいましたが、でも湯の花と違って泥も苔や藻も重い物質ですから、しばらくじっとしていれば徐々に再沈殿してゆき、数分で元通りの澄んだお湯が復活しました。


  
岩の湯へお湯をもたらしているミニ滝の上方には、もうひとつの目的地である「ピラの湯」がありました。両者の間は10メートルもありません。苔に覆われた崖全体からお湯が湧出しており、温泉の雫を滴らせる苔がとても美しい光景を作り出しています。


  
「ピラの湯」は主に2箇所から湧出しており、その量は結構豊富です。湯溜まりの温度は33.5℃と「岩の湯」とほぼ変わらない湯加減でした。「岩の湯」に入っておきながらこちらに入らない理由はありません。



というわけで、こちらでも入浴し自画撮りしてしまいました。やはりこちらも足を入れると同時に汚らしい沈殿がブワっと舞い上がり、さっきまで綺麗に澄んでいたお湯が俄然ドブのような淀んだ濁りを呈しはじめましたが、可能な限りそれらを除去した上で再沈殿するのを待っていたら、数分後、期待通りに元通りの清らかな状態へと戻ってくれました。
さてお湯の知覚に関することですが、見た目は既に述べているように無色澄明、匂いは特に感じられず、味覚面に関しては衛生面にビビったため確認しませんでした(さすがにお湯を口にする勇気はありませんでした)。でも旭岳温泉の源泉であるということは、おそらく含食塩土類正苦味(or石膏)泉かそれに近い泉質なんでしょう。



ちなみにこのときの現地の気温は19.3℃。いくらなんでも9月末の旭岳山麓の気温とは思えない暖かさでしたが、それでも33℃のお湯はぬるく感じられ、あまり温まった気分になれませんでした。スタート地点から僅か15分しか歩かないのに、かなり面倒な道のりを経なければならず、たどり着くまでの距離の割りには苦労が多い野湯ですが、それゆえの達成感はひとしおですし、周囲の環境も開放感も抜群です。そして、至る所から温泉が湧き出る崖や、「ピラの湯」の苔の美しさは、一見の価値がありました。ぬるいので夏向きなのかと思いますが、夏になれば虫の猛襲が待っているでしょうから、やっぱり虫の季節は外したほうがいいんでしょうね。今回はアブが1匹ウロウロしていただけでしたので虫の被害には遭わず、心置きなく全裸になることができました。ただ、靴は泥だらけになりましたが…。


野湯につき温泉分析表なし

北海道上川郡東川町勇駒別

いつでも入浴可能
無料
野湯につき備品類なし
クマや虫には注意
長靴で行くとかなり楽。

私の好み:★★

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中岳温泉

2012年10月03日 | 北海道
前回記事「旭岳の紅葉と中岳温泉を巡る登山 その2・草紅葉と温泉を楽しむ (2012年9月末)」の、中岳分岐から先をここでおさらいしながら、登山道の途中に湧く野湯「中岳温泉」について述べてみます。


 
山裾に広がる裾合平の頂点部には峻刻な谷が刻まれており、中岳分岐からハイマツ林を抜けた登山道はZ字を描きながらその谷底へ向かって下ってゆきます。


 
登山道が谷底へ下りきったところには細い沢が流れを作っており、あたりは植物が生えていない岩や石だらけの荒々しい風景が広がっていますが、登山道が沢を跨ぐ辺りをよく見ると、白濁した池のようなものが確認できます。



その場所こそ、登山者にとっては有名な野湯「中岳温泉」でありました。


 
道の脇に源泉が自噴する湧出孔があり、お湯は周囲に硫化水素臭を漂わせており、湧出孔まわりも黄色や白い硫黄で覆われています。温度計を突っ込んでみると54.6℃という数値が計測されました。フツフツと音を立てながら湧いているのでてっきり熱湯かと思いきや、意外にもそんなに熱くないんですね。道理で湯気が薄いはずだ。実際に手で触れることもできました。


 
湧出箇所の下流にはいくつかの湯溜まりがあり、少々の沢の水を引いてブレンドさせることにより、一番大きな湯溜まりでは42.8℃と絶妙な塩梅になっていました。この他にも足湯向きのぬるくて小さなものや、小さいけれど良い湯加減で尻湯ができそうなものなど、いくかの湯溜まりがあるので、用途に合わせてチョイスできるのがうれしいところです。

一番大きな湯溜まりは、私が到着したときには砂が堆積して浅くなっており、仰向けに寝そべってもお腹が出てしまう状態でしたが、傍の岩にはスコップが3つほどロープに結わかれた上で用意されているので、これを手にして「父ちゃんのためならエンヤコラ、母ちゃんのためならエンヤコラ」と「ヨイトマケの唄」を口ずさみながら浚渫したら、全身浴が可能なほどの深さとなりました。よし、準備は整ったぞ。そう呟いて、ようやくここで服を脱ぎ・・・



ふぅ・・・。ひゃ~、極楽極楽。誰が持ってきたのか、湯溜まりを跨ぐように角材が置かれており、これを枕にして仰向けになって入浴すると、絶景を眺めながらうまい具合に全身浴ができました。
お湯は無色透明ですが、湯溜まりには灰色の泥が沈殿しており、湯溜まり内に触れた掌や足の裏は硫化鉄によって黒く染まってしまいました。口に含むと非常に苦くて渋くえぐみがあり、弱い塩味も帯びているようですが、とにかく渋みが強烈で、唇や口腔が痺れるような感覚を覚えました。硫黄含有量は相当多いかと思われますが、酸味は殆ど感じられず、pH値は不明ですが蓋し弱酸性程度かと推測されます。

さてこの中岳温泉は旭岳界隈を歩く登山者にとって人気のポイントゆえ、早朝以外は大抵誰かしらがここで休憩をしているそうです。特にシーズン中の週末は混雑すら発生するそうです。今回も常時私以外の一人以上はここで足湯を楽しんだりお弁当を広げたりしていました。従いましていくら野湯とはいえ全裸で入浴することは、あくまで個人的見解ですが、異性の登山客に対してデリカシーに欠ける行為と言えるかもしれません。いや、日本は古来から男女を問わず裸で入浴する文化があったんだ、と開き直って堂々と全裸入浴するのも一つの方法ですが、私にはそんなことを断言する勇気も羞恥心を取っ払う気力もありませんので、あらかじめ水着と着替えポンチョを用意し、水着に着替えた上で入浴しました。おかげで途中からやってきた山ガールたちから白眼視されることなく、心置きなく長湯を楽しみ、気づけば2時間も入り続けていました。何事も事前の調査と準備が大切ですね。


野湯につき温泉分析表なし

入浴時間限定なし
無料
野湯につき備品類なし
登山者が集まるポイントなので、全身浴したければ水着や着替えポンチョを持参したほうが吉。

私の好み:★★★
コメント (4)
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旭岳の紅葉と中岳温泉を巡る登山 その2・草紅葉と温泉を楽しむ (2012年9月末)

2012年10月02日 | 北海道
その1の続きです。

 
旭岳から東へ向かう下りは非常に滑りやすい砂礫の斜面で、全行程の中でここが最も面倒だった。転倒しないよう慎重に下ってゆく。途中からえぐれている箇所があったので、そこに入り込んだら体がとても安定した。このえぐれている箇所に内部に登山道の目印があったので、この道を通って間違いないはず。



砂礫の斜面を下りきると裏旭キャンプ指定地。といってもテントを張っている人は一人もいない。荒野の中に一本の道筋がのびているだけで、それ以外の人工物が一切目に入ってこない雄大な風景。そんな中を一人で歩いていると孤高な人間になったような気になる。


 
 
裏旭キャンプ指定地から間宮岳にかけての一帯は高山植物の宝庫。ここでもチングルマが目立つ。


 
【9:40 間宮岳分岐】
ここで北海岳方面と中岳方面が岐かれており、私は中岳方面へ進む。道は直線状。北海道は自動車の道も真っ直ぐならば、登山道まで真っ直ぐなのか。


 
右手を見下ろすと名前のとおりに鉢のようなカルデラ「御鉢平」が広がっており、その一番底には有毒温泉の白いお湯が流れを形成していた。硫化水素中毒となる危険性が高いために立ち入り禁止であるが、ガスマスクを装着してでもいいから、一度は入ってみたいなぁ…。でも命は惜しいし…。



【9:50 間宮岳 2185m】
テーブル状の真っ平らな場所に突如として現れる「間宮岳」の標。本当にここがピークなのだろうか。



中岳方向へ伸びる道を下る。コースがはっきりしていて歩き易い。


 
【10:03 中岳分岐】
まっすぐ進むと中岳への登りとなるが、私は中岳温泉に入りたいので、ここを左折して裾合平方面へ。


 
中岳分岐からのパノラマは素晴らしく、しばし足を止めて景色を眺める。


 
ハイマツ林を抜けるとやがて左手に切り立った岩の断崖が見えてくる。登山道はその谷へ向かってZ字の坂を下りてゆく。谷底には沢が流れているが、登山道が谷底へ下りきって沢を跨ぐあたりに白いお湯を湛えた湯溜まりがある。



【10:30/12:30 中岳温泉】
もちろんその湯溜まりこそ、今回の登山の第一目的である「中岳温泉」だ。登山道脇の岩の下から、辺りに硫化水素臭を漂わせながら約55℃のお湯が自噴しており、そこからいくつかの湯溜まりへと流れてゆくのであるが、お湯と沢の水少々がブレンドされて湯溜まりへ導かれることによって絶妙な湯加減となっていた。また当初は一番大きな湯溜まりでも砂がたまって浅くなっていたが、近くに常備されているスコップで掘ることによって、湯船としての深さもちょう良くなった。
あまりに気持ちよいので、弁当を食ったりお湯にのんびり浸かっていたら、なんと2時間も居続けてしまった。
※中岳温泉については次回記事で詳しく記述します。


 
 
湯上りはそのまま登山道を下って裾合平を歩く。まだこの日は冷え込みが足らずに紅葉の色づきが弱かったが、それでも大自然の雄大な景色に包まれて、非常に爽快な山歩きが楽しめた。お湯を楽しめ、景色も佳く、天候にも恵まれ、小太りのな私の足取りはとても軽やか。


 
途中何ヶ所か沢を渡る。橋は無いが、誰でも軽々と越せる程度。


 
爽快な木道を歩く。周囲はチングルマの大群生が広がる。


 
紅色に染まったチングルマの大群生。券雲が流れる天高い秋の青空、山の緑、そしてチングルマの紅というトリコロール。爽快この上ない。


 
【13:00 裾合平 1690m】
あまりに清々しい景色と陽気に恵まれ、まるで背中に羽根が生えたかのように軽やかに歩いていたら、いつのまにやら裾合平まで来てしまった。ここからは山裾のアップダウンの少ない道を進んで姿見へ戻るだけ。
長袖でもやや暑くなってきたので、ここからはTシャツ一枚になる。秋の北海道の高地でTシャツ一枚になっているバカは私一人ぐらいだろう。例年なら初雪が降っているはずの大雪山だが、今年はまだ初雪を観測していないどころか、気温がかなり高いまま9月末まで来てしまったようだ。


 
チングルマだけが高山植物ではないのだといわんばかりに、道端ではシラタマノキが可愛らしい果実を実らせていた。



陽光を煌めかせる池の向こうに姿見駅が見えてきたぞ。



【14:15 姿見駅】
途中、中岳温泉で2時間も休んだものの、7時間半で姿見駅へ戻ってきてしまった。ちょっと歩くペースが早すぎたかな。今回動物に全く出会えなかったのは、早歩きのために見逃しちゃった可能性が高いかも。
スタート時には人影がほとんど見られなかった姿見周辺だが、さすがにこの時間帯になると団体を中心にして多くの観光客でにぎわっていた。

私が訪れた日はまだ色づきが薄くて紅葉を楽しむには少々早かったようですが、おそらく今週は最高の色づきとなっているかと思われます。雄大な景色とさわやかな秋の陽気、そしてすばらしい温泉が楽しめたお気軽な山行でした。

コメント (2)
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旭岳の紅葉と中岳温泉を巡る登山 その1・旭岳登山編 (2012年9月末)

2012年10月02日 | 北海道
台風17号が日本列島に接近していた今月末、日本一早い紅葉として有名な北海道大雪山系の旭岳に登って草紅葉と大パノラマを楽しみ、その道中に湧く野湯「中岳温泉」もじっくりと堪能してきました。画像が多いために2部構成とさせていただきます。前半であるその1は旭岳登山編です。

・日付および天気:2012年9月下旬某日 くもりのち晴れ
・日程:日帰り
・ルート:山麓駅(旭岳ロープウェイ)姿見駅→姿見の池→旭岳頂上→間宮岳→中岳分岐→中岳温泉→裾合平→姿見駅(旭岳ロープウェイ)山麓駅
・単独行
・服装および装備:トレッキングシューズ、Tシャツの上に長袖、防寒具としてフリース、レインウェア上下(上は防寒具を兼ねる)、熊除け鈴、水500ml、弁当&非常食、非常用ツェルト&ブラケット、地図など。

 ・ルートの地図や勾配断面については、ルートラボをご覧ください。

 
【6:30 旭岳ロープウェイ・山麓駅 1100m】
朝6時半出発のロープウェイに乗る。客は登山客数名のみ。


 
【6:45 旭岳ロープウェイ・姿見駅 1600m】
姿見駅到着。日中ならロープウェイの下車客に対して係員が説明ボードの前に立って3分間レクチャーを行うが、さすがに早朝だからか駅構内は閑散としており、レクチャーも行われていなかった。入山届に名前・住所・入山時刻を記入。



さて歩き始めるとするか。まずは目の前に聳える旭岳を登らねば。しばらくは登山道ではなく、観光客でも気軽に歩ける散策路を進む。


 
今年は紅葉が1週間~10日以上遅れているとのことだが、それでもロープウェイ駅から姿見の池の間の散策路周辺ではちらほら秋の装いをした植物たちが見られた。白い羽根と紅色の葉のチングルマが綺麗だ。


 
【7:02 姿見の池・大雪山愛の鐘】
散策路きっての絶景ポイントであり日中は観光客で賑わう姿見の池、そしてその畔に立つ鐘。


 
ここまでは散策路ゆえに登山準備無しでも来られるが、ここから先は登山道。


 
早くも森林限界を抜け、火山灰や礫ばかりが広がる単調な山道がひたすら続く。部分的にロープが張られている箇所もあるが、岩にペイントされている目印が少なく、しかもあまり目立っていないので、ガスったら迷いそうだ。


 
【7:23 6合目 1800m】
朽ちた墓標かと思いきや、そこは6合目であった。墓を連想したくなるほど荒涼とした景色。左側の地獄谷では噴気帯から白い噴気が上がっている。


 
【7:40 7合目 1930m】
この辺りに来ると非常に強い東風が吹きつけた。遮るものが一切無いので、風は私を直撃する。とても冷たく、そして進行方向に対してアゲンストなので、余計な体力を費やさねばならない。鬱陶しい。


 
【7:58 8合目 2060m】
強風の直撃に心が折れそうになる。重心を低くしないと立っていられない。下山後に調べたら、風速13m/sだったらしい。登りで既に汗をかきはじめているが、吹き付ける風はかなり冷たい。服装の調整に迷ったが、汗で湿った服を着たままにして体が冷えたら厄介なので、ここでフリースを脱ぎ、上半身はTシャツと長袖の2枚だけにした。ちょっと寒いがこれで正解。順調に登り続けられた。


 
風も視界も遮るものが無いため景色はすばらしく、上画像ではトムラウシ・十勝岳方面を望んでいるが、遠方の稜線はもちろんのこと、眼下に裾を広げる山麓に刻まれたいくつもの谷が造り出す自然美には心を奪われた。


 
【8:15 9合目 2100m】
8合目あたりまでは尾根上をなぞって歩いてきたが、この付近からは岩場が続く斜面となり、傾斜も急になる。地獄谷の噴気も下方に見下ろすほどの高さまで登ってきた。


 
どうやら頂上までもうすぐのようだ。



いつの間にやら頂上の目印となる金庫岩を通過してしまった。上の方からカメラをズームにして金庫岩を撮影。


 
【8:30/55 旭岳頂上 2291m】
1時間45分で北海道最高峰の頂上へ到達。今回もペースは早め(標準は2~2.5時間)。標高差700m弱なのでそれほどキツい登りではなかったが、とにかく風が辛かった。しかし頂上へ達する頃になると風も穏やかになり、寒さを気にせず360度の大パノラマを楽しむことができた。まずは三脚で自分を撮影するとともに、一等三角点「瓊多窟(ぬたっく)」もきちんとカメラにおさめる。
なお私のスマホ(au)では3G回線をバッチリ拾えたので、調子に乗って知人に写メを送ったら「いい歳こいて、朝早くから元気だね」と呆れた反応が返ってきた…。



いま自分が登ってきた方角を見下ろす。地獄谷の白い噴気ははるか下で小さくたなびき、ロープウェイ駅も芥子粒にしか見えない。その延長線上に旭岳温泉の建物、そして忠別湖が見える。



若干見切れているが、こちらは北鎮岳・比布岳方向。今回の登山の本当の目的である中岳温泉もこの画像の下方に写っているはず。山の緑の中でモザイク状に点在する黄色や橙色の紅葉がとても美しい。



間宮岳・中岳・黒岳方面は荒涼とした色調が勝っている。これから進むのはこの方向だ。
山頂では15分休憩。旭岳を下って間宮岳へ向かう。

その2へ続く。


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