渡瀬さんに常に付いて回っていた、「芸能界最強伝説」の噂。
安岡力也を駐車場で叩きのめした。
松田優作を秒殺ノックアウトした。
岩城滉一をボコボコにし、舘ひろしを川に投げ込んだ等々。多少の尾ひれはついているでしょうが、そんな言われ方をされる程に強かったのでしょう。
普段はとても優しい方なのですが、いざという時の度胸の座り方が半端ではないのでしょう。知り合いの学生が暴力団事務所に連れ込まれたのを知るや、単身その事務所に乗り込み、無事に学生を救出した事もあったそうです。
ある映画の打ち上げの席で、某俳優と監督が口論をはじめ、今にも殴り合いの喧嘩が始まりそうになった時、止めに入った渡瀬さんが俳優の胸倉を掴んで強引に席に座らせた。
言葉を発する必要すら無く、それでその場を収めてしまった。誰にも有無を言わせぬ、恐ろしい程の「気」を発していたのでしょうね。
昭和の役者さんには、その心に激しい「修羅」のごとき熱情を抱えている人が多かったように思います。その修羅を演技の方向に向けることで、なんとか日常性を保っていた、そんな方たちが。
芸事とは神に捧げるものであり、それは非日常のもの。だから芸能者はかつて、非日常の存在だった。だから彼ら芸能者は恐れられ忌避された。
そしてなにより、修羅もまた神の一側面。だから芸能者は修羅を表現するため、修羅を己の中に積極的に取り込んだ。
最近、薬師丸ひろ子さんが主演した映画『セーラー服と機関銃』を久々に観たのですが、薬師丸さん演じる星泉が機関銃をぶっ放したあと放心状態になる。その薬師丸さんの肩を、いたわるように優しく抱きながら、周囲の敵ヤクザたちに獣のような鋭い視線を向ける迫真の演技!!
そこには「修羅」がいました。
もっともこの「修羅」に関しては、平成以降随分変わってきたような気がします。今の若い役者で、渡瀬さんほどの修羅を抱えている方がいるでしょうか?
それが良いか悪いかではなく、時代は変わったのだなと思う、今日この頃。
晩年の作品では、ドラマ『警視庁捜査一課9係』が好きでした。
個性的なレギュラー・メンバーがアドリブを飛ばしまくる現場を、緩やかな統一感で見事にまとめ上げている渡瀬さんがそこにいて、とても楽し気な現場の雰囲気が伝わってくるドラマでした。
あの楽しさは、渡瀬さんが現場を緩やかに、でも的確にまとめ上げていたからこそのものでしたでしょう。何と言いますか、修羅を抱えて歩み続けた俳優道の行き着いた先が、あの撮影現場のごとき「境地」であったとするなら、
修羅も無駄ではなかったのだろう。
渡瀬恒彦、享年72歳。その抱えた修羅で、我々をドキドキワクワクさせてくれた名優に、感謝と哀悼の意を込めて
合掌。
やたらに渡瀬恒彦さんのドラマが多かったんです。
『タクシードライバーの推理日誌』が多かったですね。
『警視庁捜査一課9係』も大好きで、どちらもバツがついてて、娘がいる。
弱さを見せるけどカッコいい、憎めないお父さん。
訃報を聞いた時、想像以上にショックを受けている自分がいて、そのことに驚きました。
父親と言っては若すぎて申し訳ないけど、私にとってあこがれの父親だったことに今気付きました。
・・・合掌。
もしもこの世に、有り得ないんだけどもしもこの世に中村吉右衛門さんがいなかったら、鬼平を演じていたのは渡瀬さんだったかもしれない、なんてことを思ったことがあります。素敵な役者さんでした。
アレが一番印象が強い。
ある意味「悪役」イメージですが、ただの悪役ではなく複雑なキャラというか…。
当時中学生だった私には掴みどころのなさが印象的だった。
単純バカな悪とか、悪だけど根は優しいとか、悪が改心して正義に、とか、スッパリ割り切れない感が漂う役でした。
お話自体も結局は戦車が戦国時代の(ゲリラ的な)武力に敗北する話でしたし、エンタメ映画としては大衆の求めるタイプのものとはビミョーにズレてて…。
でも大ズレではないところがまたビミョーで。笑
観衆は掴みどころのないもの、尻の座りの悪いものが苦手なので、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった角川映画中でもビミョー判定を受けていた気がします。
薬師丸ひろ子の特別出演が売り、になっちゃったりもして。
吉右衛門さんの鬼平は、「若い頃のヤンチャ」設定に本物の修羅の陰惨さがなかったからこそ、お茶の間テレビドラマとして成功したような気がします。
ジェレミーのホームズものでも、ホームズのドラッグ中毒問題をリアルに描かなかなったように…。
そういう意味で、オリジナルビデオとかで渡瀬版の修羅の強い「鬼平」を同時期にやれていたら面白かったかも。
でもやっぱり、どうせやるなら「影狩り」の方がいいかなー。いやそれだとまた妥当になってしまうか。笑
なぁんてことを色々思いますね。
『戦国自衛隊』、色々な要素を詰め込み過ぎて今一つまとまらなかった印象がありますね。渡瀬さんは野武士化していった自衛隊員のリーダーでしたね。対する千葉真一は武将として戦国時代でのし上がっていく道を選ぶ。どちらも力でのし上がる戦国の世の魔力に魅入られてしまったわけで、この両者のキャラを突き詰めて描いていけば、それはそれで一つのドラマ足り得たと思います。結局中途半端だったんですよね。アクションに徹したいのか、ドラマを充実させたいのかハッキリしなかった。
そういえば渡瀬さん一派の自衛隊員の中に、若き日の角野卓造さんがいるんです。痩せていて髪の毛フサフサで(笑)よく見ないとわからないかも。人に歴史ありです。
この目は狛犬さんですもん。
って、ことは、兄さんがいらっしゃるってことだろうけど、兄さんってダレ?ってググったら、渡哲也さんがヒットしました。
御兄弟だったのですかぁぁぁぁぁ?!
って、何も知らなかったたま♪なのでしたー☆
面白いですねえ。