必殺仕置人(1973)より。
左から中村主水(藤田まこと)、中村りつ(白木真理)、中村せん(菅井きん)
「ムコ殿!」という声が聴こえてきそうです。
昭和元年(1926)生まれということですから、この必殺仕置人に初登場した時点ではまだ47歳だった!もっと齢がいっているイメージがあったのですが、意外とお若かった。若い頃から老け役を演じることも多く、実年齢よりも老けて見られることは多かったようです。
それがあってこその、この姑役だったのでしょう。
この『必殺仕置人』の頃は中村主水が主役ではなかったということもあり、「せん」と「りつ」(戦慄)のコンビは登場が少なかった。
それに、後の必殺シリーズでみられるようなコミカルな要素は一切なく、せんは本当に意地悪な、怖い怖い姑として描かれていました。
これがコミカルかつホームドラマ的要素をもったキャラクターとして毎回登場するようになるのは、シリーズ第6弾『必殺仕置屋稼業』(1975)からのこと。以来、中村主水とともに必殺シリーズ不動のレギュラーとして、お茶の間の人気を博していくことになるのです。
大変な人気を誇った役であり、菅井さんの役者としての地位やイメージを確立させた役柄といってよいのですが、あまりにこの「怖い姑」というイメージがつきすぎたため、娘さんの縁談に支障をきたすのではないかという危惧が生じ、菅井さんは役の降板を申し出ます。
制作サイドとしてはシリーズの継続を望んでおり、それには菅井さんの存在は不可欠でした。そこで一定の譲歩を示します。
その時丁度放送されていた『必殺からくり人』(中村主水が登場しない「非・主水シリーズ」)の放送を急遽延長することを決定、『必殺からくり人血風編』という「繋ぎ」の作品を制作し、その間に菅井さんの娘さんの縁談は目出度く決定。こうして菅井さんは、りつ役を降板することなく、必殺シリーズ第10弾『新・必殺仕置人』(1977)に出演。シリーズはさらに続くことになるのです。
それほどに、菅井さん演じるせんというキャラクターは、シリーズの命運を決するほどの重要なキャラでした。
必殺シリーズというのは、金ずくで人を殺す「殺し屋」の物語ですから、そのままでは結構暗いドラマになりがちです。そんな中で、明るくほっと出来る要素が、中村家の「ホームドラマ」的要素でした。プロデューサーの山内久司氏は、シリーズを支えているのは中村家の「ホームドラマ」にあり、これを失くしてはシリーズは続かないという信念に近いものをもっていたようです。
実際、それは当たっていた。
闇を走る殺し屋たちのドラマを支えていたのは、「せん・りつ」コンビによるコミカルなホームドラマだった!このコンビを演じた菅井きん、白木真理の両女優がいなければ、必殺シリーズは続いていなかったわけですね。
これぞまさに、名バイプレーヤー。
心よりの称賛と哀悼と感謝を送りたい。
菅井きんさん、長い間本当に、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。
どうかごゆっくり、お休みください。
稀代の名女優、名バイプレーヤーに、
合掌。
うちの祖父と同じ年なので、色々思いました。
ドリフとかでも普通にコントしてて、良い時代でしたよね。
安達祐実主演の『家なき子』にも怖い役で出てましたね。ああいう怖いイメージが強かった。でも本当は娘さんのために役の降板を申し出るような、優しい方でした。
でもなぜか温かいイメージの菅井さんでしたね。
これからの菅井きんの名演技は拝見することは叶わなくなりましたが、在りし日の菅井さんを私たち視聴者は忘れないでしょう。
菅井きんさんありがとうございました。 合掌
忘れずにいましょうね。