穴太 鉱山跡
以前に遊色する水晶を拾ったが、時間切れになった穴太を再探索
穴太集落で聞き込みを再度行うと
「あー、子供の頃水晶拾いに山入ったな。 どの辺りやったかな~ 40年ほど前の話やな・・・」
とか
「戦時中 物資が不足しとった頃、タングステンやら掘ってたらしいなー」
とか
「知らんなぁ。」
とか
「銭なるんか???」
とか。
知ってる方が指差す方角もマチマチ。
大体の見当を付けてトラクターで耕してる水田横の駐車スペースに、
「かくかくしかじかで入山するから停めさせてくれ」と断りを入れる。
気の良い大将でトラクターから、
「今なら問題ないぞー! もうチョイしたらタケノコ泥棒と間違われるから注意せえよー。
穴には危ないから入るなよー」
と快諾してくれた。 礼を言い山に入る。
竹藪を突っ切り 尾根まで上がる。
上がったはいいが、さて北東か南西か。
前回に水晶を拾った方向は南西やけど、ズリではなく転石っぽかったし今回は北東方面へ。
これまた獣道。尾根筋にも道無かった。
怪しそうな谷を見つけちゃ降り、登り、戻り、悪態をつく。
数度 尾根から左右に「降り・登り・戻り」を繰り返し バテて座り込み補水していると、
視界の隅に猪。
結構デカいのが俺を凝視してる。 距離20m、体長1.5m程か。
山を歩いていると猪などを捕る檻を多々見かける。
以前に猪名川辻ケ瀬鉱山へ行った時 坑口下に着き、車を降りると
「ピギャーーーー」と悲鳴が聞こえた。
「??? イノシシ?」と悲鳴の元へ上がっていくと、
小さなオジサンが手製の槍を檻に向かって構え、突き刺していた。
檻の中には、頭部から血や眼球や体液やを流しながら 小ぶりな猪がのた打ち回っていた。
「ピギャーーーーー!」 断末魔の叫びと様相と血と、オジサンの形相と。
例えは悪いが小鬼に見えた。
互いに生活を、生存を賭けての1シーンなんやろうけど 辻ケ瀬は早々と立ち去った。
その夜は多目に飲んでも、猪の叫びが耳からなかなか離れなかった。
綺麗事ではなく「肉を食う」という事を改めて考えた。
その断末魔を思い出しながらも、視線の先の猪は当然知る由も無く、ゆるぎなく俺を見つめていた。
万が一に備えて ナイフをシースから静かに抜き、息を詰める。
互いに距離を詰めようと動かない事を悟ったのか、猪は何事もなかったように視線を外し、谷へ悠然と降りて行った。
最近は熊鈴も付けずに歩いていた事を反省し、リュックからポケットラジオを出しフルボリュームでAMを流す。
タバコを一服つけて、10分程してから再び北東へ進む。
しばらく尾根の左右をチェックしながら進むと やっと坑口を発見。
尾根より東側に口を開けていた。
犬飼川の河原近くまで斜面沿いに4~5箇所程の坑口、石英の露頭が有ったがズリは少量やった。
ちょい水晶混じりををキープする。
先の猪の目を、辻ケ瀬の捕われた猪を、もののけ姫のおっことぬしを思い出しながら山を降りた。