’20年「冬」（4８）

　明けましておめでとうございます。小雪の舞う入笠牧場から新年のご挨拶です。時折、大型のダンプカーが通過するような風の咆哮を耳にしますが、それ以外は概して静かで、時には晴れ間も見えたりして新年を寿ぐにはまずまず相応しい天気、環境だと思っています。現在正午の気温は零下5度、取水場の水は濡れた手がそのまま凍って固まってしまいそうなほどの冷たさです。　2021年元旦



　朝から雪が舞っている。この程度ならそれほど積雪を心配することはない。そう思ったら、もう一晩をここで過ごす気になった。持ち上げた食料や、食べきれずにそのままにしてある料理などを無駄にはしたくないし、昨夜遅くに帰っていった山奥氏からの頂き物、海の幸も放っとけない。それに、こうして新しい年の最初の一日を意識しながら過ごすには、里にいるよりかここの方が良さそうだという理由も大きい。
　今はこうして途切れとぎれの独り言を続けているだけで、他に何かをしようとする気はないが、ここではそれで済んでいる。テレビはあるが、笑ってさえいれば時が過ぎていくような番組を見るなら、目の前を舞い落ちていく雪を眺めつとりとめのない思い、記憶を相手にしている方が気が落ち着く。

　それからしばらくして、ふと山スキーのことを思い出した。物置の中に長いこと置きっ放しにしておいたのを、今回「大雪」のことを考え念のため持って来ていた。それを履いて、運動がてら少し歩いてみたくなったのだ。ただ、今の山スキーは登山靴では履けない。一昔前にあった移動を主にしたスキーならそれが可能だったのに、いつの間にか姿を消してしまったのが惜しまれる。
　散々に苦労をして、限りなくスキー靴に近い専用の靴にようやく足を入れることができた。本当は考えていた場所もあったが、その森に入っていって無暗にスキーの跡を残したら、招かざる客を招く恐れがあった。結局、積雪は充分ではないのを我慢して、元旦の入笠山の登山状況を知ろうと、林道を登山口まで行ってみることにした。
　小屋にいては分からなかったが結構風が強く、天気が良ければ見ることのできる北アや中アの山々は荒れ模様の雲の中で、道路は風に吹き飛ばされ氷結しているところが幾箇所もあった。登山口には一組の男女を見掛けただけで正月の入笠山には珍しく、荒れた天気のせいというよりか、ここにもcovid-19の影響の方が大きかったのかも知れない。
　混雑していたら遠慮するつもりだったマナスル山荘の本館に立ち寄り、ビールを飲んで少し話して帰ってきた。2021年の第1日目、静かな夕暮れと、快い疲労を、今年の年玉としたい。

　赤羽さん、toirinjunさん、年末の通信有難く、嬉しく拝読しました。今年もよろしくお願い致します。良いことがたくさんあるようにと念じてます。