
我慢にがまんを重ねていた空が、遂に泣き出した。と、思っていたら青空が見えてきた。おかしな空模様だ。それほど悪天にはならないだろうとは予想して、上がってきた。電牧の冬対策を終えて、とにかくも牧場のことは一段落したかった。
牛がいた時にはそれほどでもなかった第1牧区には、驚くほどの鹿の落とし物が目に付いた。8千ボルト前後の高圧電流を流していてもあの有様では、鹿に対する怒りとともに徒労感も湧く。管理する者にしたら、電牧の立ち上げや冬支度はそれほどの負担ではないが、保守には手がかかる。電牧下の草刈り、通電状態の点検、倒木の処理等々だが、その中でも草刈りは特に悩ましい。テイ沢と同じように、闘う主たる相手はクマササで、ここでも植生を変えようと奮闘してきたつもりだが、道遠しの感は続く。
ところで、電牧の効果が全くないとは思わない。鹿も、藪やクマササの中に自分たちが作った歩きやすい獣道を利用するが、歩きやすさからすれば、きれいに草刈りされている電牧の周囲が一番だろう。しかし、そこには足跡も落とし物もない。牧場に侵入する全ての鹿が8千ボルトの高電圧に感電してるとも思わないが、電牧の恐ろしさは(方法は分からないが)、充分に伝わっているように思える。それでも空腹を前にしては、背に腹は代えられないということか。

電牧の近くで古い石票が目に留まった。「御料林」と呼ばれ、現在は国有林になっているが、かつては皇室の所有地であることを示すために設置された石の標識である。この石票を目にして、御料林の歴史に詳しいO里氏のことを思い出した。氏は実地調査のため、戸台からここまで20キロ以上を徒歩でやってきた。研究熱心な一念の人。
S藤さん、通信拝読。冬のここも気に入っていただき喜んでいます。また是非お出かけください。K山さん、越年の予約しかと受けました。もっと日が迫ってきた段階で、こちらからも連絡します。
そういうわけで「冬の営業案内」をご覧ください(下線部を左クリックしてください)。予約は早めに頂ければさいわいです。