入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

Ume氏の入笠 「冬」 番外編(17)

2014年12月29日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 (昨日からつづく)
 ゴンドラの山頂駅から管理棟へ行く間、最近見知ったばかりの「歩く中毒」のF氏と一言二言言葉を交わす。彼はスノーシュー(ズ)の講習中だった。屈託のない笑い声が快晴の、今やゲレンデと化した入笠湿原に響いていた。
 まだ先があるからといつもよりペースを落として歩き、1時間で管理棟に着いた。わずかな期待はあえなく外れて、管理棟にキクの姿はなかった。10分ほど周囲の様子を見たりしてから出発した。
 たったの三日が過ぎただけだというのに、白蛇弁天から先は踏み後が判然としなかったり、潜ったりと厄介な雪道をもくもくと歩く。北門を抜けると八っ株沢、座頭沢の上部を横切る林道が始まり、山腹を巻く幾つものカーブはゆるやかに下る。キクの名を連呼すると同時に、雪の上に残された動物の足跡にもそれなりの注意を払い、あまり日の射さない山道を下っていった。
 キクがもしこの林道にまだいたとしたら、こちらからの呼び声、もしくは笛の音はほぼ確実に届いていたはずだ。しかし、何の反応もない。その一方、雪面に残る動物の足跡には、キクのものではないかと思える足跡が随所に認められた。しかも足跡はまだ新しく、爪先が着地した後なのかその前なのか、スーッとすじ状に残っている雪面を幾度となく目撃した。まるでつい少し前、キクがこの辺りを通過したかのように思え、呼び声は自然と大きくなり、歩行の速度も速まった。
 そうやって2時間後、焼き合わせを通過、さらに1時間と少々で芝平峠に到着した。そのまま休まず山室川の谷を40分ばかり下り、新しい砂防ダムの現場が見える、車ではこれ以上上流には進めない地点で、折よく迎えに来てくれた「奥山いつもいる」のジムニーに拾われた。
 
 足跡から判断すれば、キクは鹿の死骸があった地点を中心にしてかなりの距離、5,6キロを行ったり来たりしたように見える。しかし、こちらの呼びかけには応答しなかった。姿を見せることがなかったということは、足跡はキクのものではなかった可能性も残る。ただしこれについては、24日に一緒に下りたHALの足跡を参考にしてキクの足跡だろうと推定したわけだが。
 キクはすでにどこか山深くへ、空腹と寒さの中を移動してしまったのだろうか。(つづく)

 Chiyさん、そんなわけでブログの閲覧をしばしご無礼していた間に、すごいことをやりましたね。おめでとうございました。顔をはっきりと見せてもよかったんじゃないですか、二人とも若作りなんだし、はい。
 
 山小屋「農協ハウス」の冬季営業に関しましては11月17日のブログをご覧ください。現在の積雪は例年に比べ、一月(ひとつき)は早いです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする